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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第10話 『とある魔導師の休日 最終日 後編』




・・・ありえへん。



スバルとアルフさんを言葉巧みにおいだし・・・げほごほ。

もとい、買い物組への援軍に送りだしたあと、うちとリンディさんとティアとリインはこの家のガサ入れとしゃれ込んだんや。そこまではよかった。



でも・・・この家はありえへん。とてもやないけど18際の男の子が一人暮らししている部屋とは思えへん。

ん? なんでそう思うかやて? そんなん決まっとるっ!





そう、無いんやっ! あれがっ!!




















「・・・ないわねぇ〜」

「だから言ったですよ・・・」

「いや、一応あったじゃないですか。それも堂々と」

「あんなん『あった』なんて言わへんっ! どこの世界に一人暮らしの部屋に『R18コーナー』なんて作っとるバカがおるんやっ!!」










そう、うちらが捜しとったのは、恭文が色々とお世話になっているであろうエッチな本やディスクの数々。





で、一応その手の本はあった。確かにあったんやけど・・・。あんなん認められへんって。

うちらがそれを見つけたのは、恭文が一部屋丸々使っている、漫画やらゲームやらアニメor特撮物のDVDやらの保管庫。

そして、そこにアレはあった。でも・・・ちょっちおかしかったんや。





まぁ、なんつうかアレや。よくビデオ屋さんとかで、『18歳未満お断り』みたいな垂れ幕下がっとる一角があるやろ? まさにアレや。

漫画やらを置いてある棚の、ほんまにちっちゃい一角に、あの垂れ幕がかかっとった。





で、うちらがあいつの神経を疑いながらその中を見たら、ちょっとエロかったりちょっとエグかったりブラックな漫画やゲームやアニメDVDが色々。

ふたりエ○チやDM○や○ミキスやらがあったなぁ。ただ、その中にホンマにアダルトな本やゲームや映像ディスクの類はあらへんかった。





・・・なんやねんアイツ、うちらの期待を裏切りおってっ!

ガサ入れするうちらにこれをみて「見つけたどー!」と喜べと? そんなんやれるかっちゅうねんっ!!

くぅーーー! 知っとったけど、あいかわらず性格悪いで恭文っ!!





ちなみに垂れ幕には『フェイトはR28になります』という注意書きまであった。

・・・まぁ、これはフェイトちゃんには見せられへんなぁ。フェイトちゃんの性格を考えると刺激強すぎるもん。

特にふたりエッ○とDM○。D○Cは、呼んだらフェイトちゃん発狂するんやなかろうか?





で、それに呆れつつ、まぁまぁその手の物を隠すのにお決まりなコースを捜したんや。

あの性悪剣士のことやから、あの垂れ幕にあるので全部とか思わせといて、本命はもっと別のところに・・・というのを考えたんやけど・・・。





色々捜したんやで? 本棚の裏とかキッチンの奥とか、パソコンの方に接続しとらんドライブでもあるかと思ったんやけどそれも無し。

それでここならと思って、パソコンにその手のサイトにアクセスした履歴が残っとるんやないかと思って見てみたんやけど、履歴が全部消されとる。

アルトアイゼンの仕業やなこれ。いくらなんでも綺麗過ぎるわ。





それにそれに、うちが以前、事ある事に恭文を動かすために譲渡した、フェイトちゃんのドキドキスクリーンショットもあらへん・・・。

アイツ、さては携帯端末、もしくは見た瞬間に消去して脳内に保存しとるな? なんちゅう用心深いやつや。

そんなわけで今回のガサ入れは収穫はなしというわけに。・・・むかつくーーーーー!!










「恭文さん、前にはやてちゃんが遊びに来た時にそういうの見つけられて、大騒ぎになったの大分気にしてましたから。というか、かなり恨んでましたから・・・」

「それで、二アそれっぽいのはコーナー作って、あえて分かりやすいようにしておいて、ストライクなのは完全排除ってわけですか。
・・・確かに、リイン曹長も泊まりに来るから、そういうのは置けないって言ってましたけど、だからと言って普通ここまでやります?」





ティアはそないなこと言うてたるけど、うちは確信している。アイツはやる。

人が中途半端なモヤモヤ抱いてイラついてるのを想像して楽しんでたんや。自分の愉しみより、そういうのを遠慮なく取るタイプや。

まぁ、それだけやないけどな。ティアナの言う通り、リインが遊び来た時に備えてのことやろ。アイツ、リインのこと妹みたいに可愛がっとるし。



・・・いや、それでもやで。アイツの年齢考えたら、これは無いと思うんよ。さすがにもうちょっとなんとかしてほしいなと。





「・・・はやてさん、あなた一体何をしたんですか?」

「いや、なんにもしてませんって。
ただ、なのはちゃんやフェイトちゃんや家の子達に教えて、ちょーーっと緊急サミットが開かれたくらいで・・・ははははは」





あぁ、みんなの視線が痛い。みんな、なんでそないな諦めるような瞳でうちを見るん?うち、特に何もしてないで。





「鉄拳制裁はともかく。あの子、フェイトの事好きだもの。そのフェイトにそんな部分を見られたんだから、こうなるのは仕方ないと思うけど?」



リンディさんが、呆れ気味な顔でそう口にする。あぁ・・・確かになぁ。そう考えるとちょっと悪い事したかもしれへんなぁ。あははははは。



「・・・アイツ、やっぱりフェイトさ・・・フェイト執務官のこと好きなんですね」

「フェイトさんでいいわよティアナさん。今は私もあなたも仕事ではないんですから」

「あ、はいっ! 失礼しました」

「そうやなぁ。あいつ、アレな性格に似合わず、思い込んだら一途やし」

「出会ったときはちょこっとだけやりあったんですけど、でも、すぐに仲良くなったですそれで・・・」

「今までずっと・・・ですか?」





ティアの言葉に、リインが頷く。そう、アイツは8年間ずっと片思いや。そして、凄く頑張っとった。

とは言え・・・アレは見込みないからなぁ。フェイトちゃんはあくまでも弟としてしか見てへんし。

正直、恭文がそれを突きつけられてヘコんどるのは見ててきついんよ。あいつ、平気な顔する分押さえ込むほうやから・・・。

・・・どっかから『自分の事はどうなった?』なんていう電波が届いたけど・・・無視や!!





「それじゃあ、今はあくまでも姉弟みたいな感じってことですか? ・・・少なくともフェイトさんは」

「そうなるわね。私としてはフェイトと恭文君がそうなっても構わないと思ってたんだけどね。そのために養子縁組も諦めたのに・・・。はぁ〜」





あぁ、そうでしたね。

あいつは家族って呼べる存在がハラオウン家しかおらへんから、そういう話も出てたのに・・・アレやしなぁ。リンディさん、心中お察しします。





「一時期、思いつめて、あっちこっちの世界の呪術や黒魔術の資料を買い漁るくらいに頑張ってたのに、それでダメってどういうことかしら」

「それは頑張る方向性が間違ってませんかっ!? つか、そんなに追い詰められてたんですね・・・」

「そうやなぁ、追い詰められてたで。でも、うちら全員で、泣いて止めたけどな。惚れ薬の材料探しのために旅に出る準備までしてたし。
といいますか、もうこのさいフェイトちゃんは忘れて、スバル辺りとくっついてもええかなぁっと」

「って、なんでそこでスバルの名前が出てくるですっ!?」



うちの言葉にリインもティアも、リンディさんまで驚いとる。あれ? うち、そんなおかしいこと言うたかな?



「確かに、恭文さんとスバルはすっごく仲が良いみたいですけど。まぁ、さっきはちょっとケンカしてましたけど・・・」






あー、リインがちょっとへこんどる。あー、リインはやっぱり元ヒロインとして色々考えるんやろうなぁ。

あと・・・スバルもへコんでたなぁ。そんな状態やったから、話す機会が出来ればと思ってスバルも買い物班に送ったんやけど、恭文怒らすと怖いからなぁ。



どれくらい怖いかというと、一回クロノ君と仕事絡みで口喧嘩した時の話を例にあげようか。

・・・一時間後にクロノ君が『生まれてきてごめんなさい』と鬱な表情で連呼しているくらいかなぁ。つまり、容赦を全くしなくなる。



いつぞやは、仕事で同席してた執務官が怪我させられたのにキレて、犯人グループを潰したこともあったな。

奥の手やら切り札やら切りまくってフルパフォーマンスで大暴れしたもんやから、現場が凄い事に・・・。



うちはその現場写真しか見てないんやけど、アイツの保有火力の高さに恐怖したで。ある意味なのはちゃん2号やもん。

とは言っても、フェイトちゃんもおるし、ヴィヴィオの前でもあるわけやし、そないにあやつもメッタ叩きにはせぇへんやろ。





「って、へコんでないですっ! というか、元ヒロインってなんですか元ってっ!? リインは今でも充分ヒロインですっ!!
それにそれにっ! 恭文さんとスバルがそうなる要因がわかりませんっ!!」



あぁ、そんな怒らんといて? 可愛い顔が台無しや。 それはそれとして・・・うーん、そうなる要因かぁ。あるやん、色々と。



「例えば、初日で模擬戦やらかして、お互いに普通に話するよりも理解深まっとるやろ。
うちの目から見てもホンマに仲のえぇ友だち同士に見えるし、そこから発展していくのは想像に硬くないやろ?」





恭文は、基本的に人付き合い下手やし、積極的な方やない。つか、慣れてない人間に対して、あれこれ手札晒すことを嫌う。



にも関わらず、会ってまだ一ヶ月も経ってへんスバルに対して、あそこまで仲よう出来る言うことは、結構心許してると思うんよ。



ほんまにこういうんは珍しいんよな。無神経そうに見えて、意外と人との距離を測るタイプやから。

あ、一つ訂正。『女の子に対して』やな。まぁ、フェイトちゃんが居るから仕方ないんやけど。フェイトちゃん、遠慮なく誤解するしな。





「そうね。それにスバルさんもいい子みたいだし、私としては歓迎だわ。あの子の手綱をしっかり握ってくれそうだもの」

「いきなり結婚みたいな話に飛んでるです・・・」

「あの・・・」




うちらが好き勝手な事をいっていると、ティアが遠慮しがちに話し掛けてきた。なんやなんや? なんかうちらの知らない秘密情報でもあるんか?




「実は、スバルとアイツって、メールでも連絡しあってるみたいなんですよ。頻度はわからないんですけど」

「そうなの?」



リンディさんの言葉に頷くティア。・・・そこまで行っとるんか。

というか、あの恭文がこの短期間の間にアドレス教えたんか? あやつ、さっきも言うたけど、そんな積極的に踏み出すタイプやないのに。



「スバルが聞きだしたとは言ってました。それで、スバルもプライベート用の連絡アドレスをアイツに教えたそうです」

「マジかっ!?」



なんやなんや、そんなとこまでかい。というか、スバルの方が積極的に・・ちゅうことか?

ふふふふっ、やっぱ恭文呼んで正解やったわ。こんな面白い事になってくるんやからなっ!!



「リイン、ティア、二人とも協力しい。恭文とスバルくっつけるでっ!! あと、リンディさんもよろしくお願いします」

「「「いや、なんでそうなりますっ!?」」」



全く、三人ともわかってへんなぁ。ええか?



「スバルは、アクティブでどんどん外に出て行くタイプや。しかも、うちらが来る前の話を聞く限り、あの引きこもりにしっかりと喝を入れられるときとる。
その上、可愛いしスタイルもえぇし性格も○。セクハラしても怒らへんし、お胸も最近ぐんぐん成長しとるし触りごこちも抜群やっ!
恭文にはこれ以上ない逸材やでっ!!」



つーか、うちがどうにかしたいくらいや。恭文にはもったいなさ過ぎるで。

それに、そうはならなくてもあやつがフェイトちゃん症候群から抜け出すキッカケになれば御の字や。一途過ぎて完全に引きずっとるしなぁ。



「いや、八神部隊長。それ半分以上は部隊長の要望ですよね?」

「なんか言うたかティア?」

「いえ、なんでもありませんっ!!」

「なるほど・・・、そういう事なら協力しましょう」

「「いや、なんでそうなりますっ!?」」



いやぁ、リンディさんは話が早くて助かるわぁ〜。



「だって、楽しいじゃないこういうの。あ〜、クロノとエイミィ以来だからちょっと緊張しちゃうわー!」



ティア、リイン、そんな呆れたような顔したらあかんで? 基本的にこの方はこれが地や。リインは知っとるやろ?



「それは・・・知ってるんですけど・・・」

「そういうわけで、がんばりましょうはやてさん!!」

「はい、リンディさん!!」

「「おーーー!!」」

「・・・もう止められないんですね」

「はいです。あと、私もティアも巻き込まれてるです・・・」

「「はぁ〜」」





二人とも、ため息吐かんといてくれるかな? なんかうちらが悪いみたいやんか。それはそうと、早速作戦会議や!!

とりあえず・・・・役に立ちそうなもんが近くにあるからそれみて考えてみよっか。




















魔法少女リリカルなのはStrikerS  外伝


とある魔導師と機動六課の日常


第10話 『とある魔導師の休日 最終日 後編』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



うー、重いよー。きついよー! 恭文少し持ってー!






「ダメ、見てわかるでしょ? 僕だって手一杯なんだよ」

「だって、恭文は男の子でしょ? 女の子が困ってたら助けなきゃだめだよ」

「いやだなぁスバル。僕が困ってた時に助けてくれた? 例えばさっきとか。つまり・・・そういうことだよ」

「・・・ゴメン」

「いいよ、謝らなくても。つか、いまさら謝っても遅い。とりあえず、重いのはどうにもならないから我慢して」





さっきからずっとこの調子。いつもより言葉に棘がある。いつもは・・・意地悪されてもそんなの全く感じないのに・・・今はすっごく感じる。

実弾で撃たれてるみたいな、心に突き刺さる痛みが私を支配する。恭文、怒るとこうなるんだ。私、なにやってるんだろ。





私は恭文たちに追いついたあと、近くのスーパーに行ってお昼用の食材の買い物をしてきた。





途中、恭文が試食コーナーでウィンナーをヴィヴィオと一緒に美味しく食べてたのをなのはさんが引っ張ったり。

恭文が籠に入れたトマトをさりげなくもとの棚に戻そうとしたのをフェイトさんに見つかって怒られたり。

恭文がアルフさんとドッグフードの美味しさについて語っていたのを見て軽く引いたり。





そんな事もありつつ買い物を終えて家に戻るところなんだけど・・・・重いよーーー!!





「人数分だとそうなるさ。だから、トマトを置いておこうって言ったんだよ。そうしたら軽くなるのに」

「ダメだよ、ヤスフミ」

「そうだよ、好き嫌いするから身長伸びないんだよ? ね〜、ヴィヴィオ」

「うん、好き嫌いはダメだよ恭文!」

「・・・・はい」



なのはさん、フェイトさん、ヴィヴィオに怒られてしょんぼりになる恭文。・・・なんというか、弱いなぁ。



「まぁ、トマトは、恭文が食べやすいようになにかしら手を加えて出すから」

「ほんとにっ!? ありがとうアルフさんー!!」

「ただし、残さずちゃんと食べろよ?」

「分かっていますって、生のがダメなだけで、そうじゃなければOKですから」



そう言うと急にニコニコしだして鼻歌なんて歌いだした。



「っと、そうだ。スバル、荷物一旦下ろして」

「へ?」

「いいから早く」





恭文に促されて、私は持っていた買い物袋を慎重に、ゆっくりと地面に下ろす。

そうすると、恭文も同じように下ろして、私がさっきまで持っていた方の袋を持って・・・・。





「・・・うん。スバル、こっちは僕が持つから、スバルは僕が持ってたやつ持って」

「え?」

「いいから。・・・重いのキツイんでしょ?」





そこまで言うと、プイっと先を歩いていたなのはさん達の方へ小走りで駆けて行く。

よいしょっと。あ、少しだけ・・・本当に少しだけなんだけど、こっちの方が軽い。・・・恭文。

私も、さっきまで恭文が持っていた買い物袋を持って、なのはさんたちの方へ駆け出した。そうして追いつくと、恭文の隣りに行って、また一緒に歩き出した。





「恭文」

「ん、なに?」

「ごめん」

「あやまっても遅い」

「・・・ごめん」

「なんでそんなに何度も謝るの? 僕のこと嫌いなんだから、そんな必要ないでしょ」



・・・嫌いじゃ・・・ないよ。さっきは物の弾みで・・・。

ううん、そんなのきっと恭文には関係ない。悪いのは私なんだから、ちゃんと言わなくちゃ。



「だって、恭文、自分のことだけじゃなくて、私とティアの事も心配して、どうしようって考えてくれてたのに。
フェイトさんに誤解とかされるのも、本当に嫌で、私、何にもしてなくて・・・。でも、そんなの無視で責めたりしたし。私、謝ることしか出来ないから」

「・・・そうだねぇ。ま、僕はなのはみたいにまっすぐでもないし、スバルから見ればダメダメで嫌われて当然なのかもしれないけど」



・・・そんな・・・ことないから。私・・・ごめん。



「・・・ごめん、ちょっと意地悪しすぎた。もう僕は気にしないから」

「ホントに?」

「うん、ホントに」





恭文は、私をじっと見てくれてる。いつもの、素直じゃないけど何処か優しさを感じる瞳。

さっきまでの、イライラや棘は・・・そこには感じなかった。ありがとうね、恭文。





「まぁアレだよ、今度こんな事があったら、僕の話も少しは聞いてほしいかな。・・・何回も言ったけど、結局僕一人で事情説明して、スバルは立場気にして発言しないし」



うん、しなかった。恭文一人に全部押し付けてたよ。



「それなのに偉そうなこと言われたら、そりゃあムカツクさ。何様かと思うさ。フェイトやみんなの誤解を解くのがどれだけ大変だと思ってるの?
いつもあんな感じなんだから、手間はかけさせないで欲しいよ」

「はい、反省してます・・・」

「ちゃんと解ってる?」

「解ってます・・・」

「うん、ならよろしい。・・・スバル、ゴメン」

「え?」



恭文が、私の方を真剣に見ながら、そう言ってきた。それだけ言うと、プイっと前を向いた。だけど・・・言葉は続いた。

誰でもない。私に対してだけの言葉が。




「まぁ、僕もスバルに対して、ちょっとだけ嫌なこと言ったしね。いちおう謝っとく。
・・・ゴメン、スバル」

「あ、ううん。大丈夫だから。あの、その・・・うん、大丈夫だよ」

「なら、よかった。
あー、スバル。ご飯美味しいの作るから、いっぱい食べていいよ。で、僕もいっぱい食べる。それで・・・仲直りかな?」

「うんっ!」





そんな事を話している間に、家に到着した。・・・もうすぐだね。なんか、ちょっとケンカしちゃったから・・・おなかペコペコだよー!





「あ、それと」

「なに?」

「・・・スバルだって、フェイトに負けないくらい魅力あるよ? 方向性が違うってだけの話で、僕は可愛いと思うし」

「えっ!?」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



”・・・ねぇ、フェイトちゃん”



スバル達には気づかれないように、念話で会話する。



”うん、なにかな?”

”スバルと恭文君、隊舎に居る時から思ってたんだけど、すごく仲良いよね”

”そうだね。やっぱり戦ってみて、色々と理解が深まったのが大きかったんじゃないかな? ほら、前衛系はそういうところあるし”

”そうかもしれないね。でも・・・”





恭文君とスバルの仲がいいのは、すっごくいいことだと思う。

そういう関係に発展するかは別として、恭文君は少し引っ込み思案なところがあるし、そんなあの子の交友関係が広がるのは友だちとして嬉しい。



私達は大丈夫なんだけど、慣れていない人に対してはちょっとだけ距離を置くところがあるからなぁ。・・・昔のことや、フェイトちゃんのことがあるから。

というか、フェイトちゃん全然気付かないんだもん。私だって、気付いたというのに。





でも私は、それでも少しだけ気にしていることがある。それは・・・。





”スバルのことだよね”

”うん・・・・”



私やフェイトちゃんにはやてちゃん。あとフォワードのみんなは、スバルの身体のことは勿論知っている。

でも、恭文君は・・・多分知らない。大丈夫だとは思うんだけど、やっぱりどうなるのかが心配だったりする。



”なのは、ヤスフミは、多分そういうことは気にしないと思う”

”うん、絶対にそうだと思う。だとしたら、気にするのはスバルの方かな?”

”だと思うよ。・・・どっちにしても、ヤスフミともスバルとも、一度ちゃんと話す必要があるよね”

”うん”



フェイトちゃんと念話しながらも、私たちはエレベーターに乗って、部屋のある6階に到着した。

そうしてドアを開けると・・・え?



なんか、すっごーーーーーーーく甘ったるい空気が漂ってきてる。・・・・なにこれっ!?




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



あー、やっと帰って来た。ちかれたー。さて、お昼だーーー!!

などとスバルとヴィヴィオと一緒にウキウキしていたら、部屋の中がなんとも言えない空気で満たされている。なんですかこれ?



・・・まさかっ!!



僕は、荷物を持ったまま、リビングへと駆け出した!

そうして見た光景は、想像を絶するものだった。





≪マスター、これはまさか・・・?≫





アルトの言葉に僕は頷く。ティアナが、リインが・・・悶絶している。





「あ、アイツ・・・。こんな漫画、持ってるんじゃないわよ・・・」

「恥ずかしいです恥ずかしいです恥ずかしいです恥ずかしいです・・・」



・・・なにやってるのあなた方。



≪なにをどうしたらこうなるのですかマスター?≫

「僕が聞きたいよ」





そう思いながら僕は食材の入った買い物袋をキッチンに下ろす。

それからまたリビングへと戻り、もう一度リビングの床に突っ伏して悶絶している二人の周囲を見る。



そうすると、単行本サイズの本が何冊か落ちていた。保管庫の漫画持ち出して読んでたのか。しかし、なに読んでたんだ?

・・・・あぁ、納得。これ読んでたのか。





そして、二人が読んでいたであろう本を手に取る。そう・・・○ミキスのコミックを。





これ、ほんとに甘ったるいもん。アレだよ、ボーイ○ビーとかと同じ甘さだよ。

妄想全開なノリだったりするんだけど、こういうことあったらいいなぁとか思ってしまったりするところが恐ろしい作品なのだ。



普通、こういうのは『こんなのあるわけねーよ!』とか言いながら読むものだったりするのに・・・真芯にきちゃいましたか。

というか、キミたちこういうのに耐性なかったのね。特に、リインはまだまだお子ちゃまだしなぁ。



あと・・・うわ、To LOVE○にいち○100%に初恋○定に・・・涼○も読んだのか。面白いけど、これらも破壊力大きいからなぁ。・・・相乗効果って怖いよ。





「てか・・・そんなことしなくちゃだめなの・・・」

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい・・・」

≪マスター、この方々はどうしましょうか?≫





・・・とりあえず、この方々をどうにかするのはなのは達に任せて、本を片付けるか。

これらをヴィヴィオに見られでもしたら、なのはとフェイトが鬼になる。というか、フェイトが執務官モード発動しそうだし。



そうこうしていると、なのは達もリビングにかけこんできた。もちろん、買い物した荷物はしっかりと持ったまま。





「・・・リインにティアも、どうしたのっ!?」

「あぁ、ティア〜。しっかりしてー!」

「と、とりあえず、右斜め45度で叩けば治るかもっ! えいっ、えいっ!!」



ゲシッ! ゲシッ!



「・・・フェイト、それは色々と間違っていると思うよ?」

≪同意見ですアルフさん≫



まぁ、とりあえずフェイト、あんま殴らないようにね? やりすぎるとそれがとどめになるし。



「恭文、ご本片付けるの? ヴィヴィオも手伝ったほうがいい?」





ヴィヴィオが僕の服をくいくいとひっぱってそう聞いてくる。うむぅ、目ざとい子だなぁ。

ヴィヴィオの申し出はありがたいのだが、もちろん、断るしかない。こんなもんを見せた日には、さっきも言ったけど、二人の鬼を生み出すこととなる。

いや、ひょっとしたら修羅かもしんない。そんなのはいやだもん。





「あー、本は僕だけで片付けられるから、ヴィヴィオはあそこで伸びてるお姉ちゃんたちを、ママと一緒に起こしてくれるかな?
起こさないとご飯食べられないし」

「うん、わかったー」





テクテクと歩きだしたヴィヴィオは、フェイトに習って右斜め45度でリインの頭を・・・あ、なのはが止めた。

まぁ、こっちは放っておいても大丈夫でしょ。さ、お片づけお方づけ〜♪



そう思って、僕は本を全部抱えて、保管庫に入ると・・・やっぱりここに居たか。





リンディさんとはやてが保管庫を漁っていた。





「リンディさん、はやても、なにしてるんですか?」

「あ、恭文君おかえり。いえね、なにか面白い本でもないかと思って。・・・なにか借りていってもいいかしら?」

「構いませんよ。ただ、人からの預かり物もありますから、扱いさえ気をつけてくれれば」





僕の家の保管庫で眠っている漫画やDVDやゲームの類は、全部僕のものというわけではない。

同じような趣味の友だちが『部屋に置き場がない』という理由で、ここに持ち寄ってきてるのだ。



一応、その友だち達には、『扱いさえ気をつけてくれれば、又貸しになってもかまわないから』という風に言われているので、貸しても問題はない。

というか、ダメにしたら弁償してくれればいいからと言われている・・・なんなんですかあの方達は?





「なぁ、それやったらうちもなんか借りてってもえぇかな? 意外と移動中が暇な時多いんよ」

「それだったら、ライトノベルとかがあるからそれ持ってっていいよ。小説だったら時間潰せるでしょ。
あとは携帯ゲームとか。本体は貸せないけど、ソフトだったらOK」

「なるほど、そやったらええのあったら借りとくな」

「私もあとで何冊か借りてくわね。そういえば、フェイト達も帰ってきてるの?」

「えぇ、・・・リンディさんは平気だったんですか?」

「なにが?」

「これですよこれ。相当破壊力強いはずなのに」



持ってきた本を指差しながら聞いてみる。・・・まぁ、答えは予想できるけどね。



「あら、それくらいは普通でしょ? 私、これでも子持ちでおばあちゃんなのよ?」



そこまで言うと、リンディさんは軽くウィンクしてくる。・・・やっぱりですか。いやまぁ、予想はしてたけどね。さすがに大人は強いよ。



「ただ、キミキ○はリアルな感じはしなかったかしら。こういう恋愛がしたいの?」

「いや、僕はもっと普通がいいです。さすがにこれは・・・・ねぇ」



うん、普通でいいです。もうちょいスローな感じじゃないとついていけない。例えば今日の現状とかさ。

というか、リンディさん、To LO○Eるは普通に入るんですね? いや、管理局のテクノロジーとか考えると分からなくはないですけど。



「・・・なぁ、うちには聞かへんの?」

「なにを?」

「いや、『大丈夫かー?』とか」

「必要ないでしょ。あなた僕と同類なんだしさ」



つか、この保管庫の1割くらいはあーたとヴィータ師匠の物なんですけど、まさか忘れてないよね?

ちなみに、はやては少女漫画やボーイズラブ系、師匠はゲームやアニメDVDの類とジャンルは分かれていたりする。



「・・・せやったな」





などと言う会話をしているうちに、僕は本を全てR18コーナーへと全て戻し、リンディさんとはやても借りる物を決めたようなので、リビングに戻ると・・・。





「無理、絶対無理あんなの・・・」

「甘いです甘いです甘いです甘いです・・・」



なのは達が、甘さ全開症候群にやられた二人の処置に追われていた。・・・うん、決めた。



「ご飯作りましょうか」

「そうね、二人もこっちの世界へ戻ってきた頃にはお腹すかせてるでしょうしね」

「まぁあれや、こうやってゴタゴタした分、腕によりかけて作るから、期待しといてかまわへんで」





そうして、この部屋に充満した甘ったるい空気を、窓を開けて換気しつつ、お昼の用意をることとなった。



ちなみに、二人が復活したのは、作り始めた直後だったのを断っておく。

意外と復活が早かったね。しっかし、なぜにアレらを読み始めたんだろ?




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



うーん、難しい・・・。


ジャガイモ剥くのって、こんなに難しいの? 恭文は、スルスル剥けてるのに・・・。



「当たり前だよ。僕はリンディさんやエイミィさんに散々仕込まれたんだから」

「あら、仕込んだなんて人聞きが悪いわね。うちに料理上手な息子がもう一人出来たらいいなぁ〜という希望をもって、教えたのに」

「リンディさん、それを仕込むって言うんですよ?」



なんて言いながらも、恭文は自分の分のジャガイモを全部剥き終わって、リンディさんは小麦粉から作る本格的なカレーペーストの仕込を続けている。



「恭文君、野菜全部剥き終ったら、全部切って、炒めといてくれるかしら? あとは肉の下ごしらえもお願いね」

「了解っすー。スバル、焦らなくていいから怪我しないようにゆっくりね? 僕は他の野菜下ごしらえしとくから」





うーん、なんか逆な気がする・・・。



普通、女の子が料理上手で、男の子が苦労しているのを『仕方ないなぁ』とか言いながら楽しく料理するのが図式だと思うのに。

全く逆ってどういうことなんだろう?





「・・・いや、まずスバルの料理スキルが0だってのが、どういうことって話になるから」

「ごもっともです・・・」



だって、料理なんてする機会なかったんだもん。ずっと寮暮らしだし・・・。



「リンディさん、ご飯炊けました」

「ありがとうティアナさん、それじゃあそれをお櫃に入れておいて、またご飯を研いで炊いてもらえるかしら?」

「了解です」





今、恭文の家のキッチンは戦場と貸している。お昼は、ヴィヴィオの要望でカレーライスになったところまではよかったけど、この人数。そして私はよく食べる。

なので、大量のカレーとライスを仕込むのに四苦八苦している。



リンディさんが陣頭指揮をとって、恭文は副隊長みたいな感じ、私は恭文の下について野菜の下ごしらえ。

ティアは、一人暮らし用の最大五合まで炊ける炊飯器をフル活用して、ご飯を大量に仕込んでいる。



ちなみに、アルフさんとなのはさんとフェイトさんに八神部隊長とリイン曹長とヴィヴィオは、恭文秘蔵の映像ディスクを先立って見ている。



料理を手伝うといってくれたのだけれど、私とティアが手伝うからと言って、ゆっくりしてもらってるのだ。ほら、一応私達部下だし。



リビングを見ると、なんかみんな楽しそうだけど、面白いのかな? うる○いし○くちゃんって。





「面白いことは面白いけど、ヴィヴィオにあのノリは早い気がする・・・。
そういや、ティアナがご飯の研ぎ方知ってるなんてビックリしたよ。料理得意なの?」

「別に得意なわけじゃないわよ。
・・・訓練校のサバイバル訓練でちょっとやったことがあるくらいよ。どういうわけか、お米を研ぐことしかやらせてもらえなかったけどね」





それは、野菜を切るときに力を入れすぎてまな板まで切ったり、危なっかしい姿勢でフライパン握ったりしていたからだと思う。





「ティアナまでそれなんだ。つか、よくそれでなのは達に下がっててとか言えたね・・・」

「そんな呆れ顔しないでよ。だって、私達はほら、部下なわけだし、ちゃんとしたいなって思って」

「いや、料理がちゃんと出来なきゃ意味無いでしょうが」



恭文の言うことは多分正論。だけど、それでも譲れない一線というのがある。局員は、大変なんだ。



「それに、私は大丈夫だよ? ギン姉がやってるの見てたしっ!」

「ねぇスバル。シューティングアーツは見てるだけで上手くなった? それと同じことだよ」

≪さすがマスター。ツッコミが素晴らしいです≫



恭文の言葉が突き刺さる。でも、今こうしてやってるから、大丈夫だと、信じる。そう、自分を信じることが、未来を切り開くから。



「いや、それは関係なくない? つか、アンタだって、包丁触らせてもらうことすらさせてもらえなかったじゃない」

「あー、ひょっとして『調理中に敵襲がくるかもしれないから、周りを巡回してくれ』とか言われたの?
って、まさかそんなわけないか。あははははは」










「・・・そうだけどなにか?」










「・・・・・あー、ごめんスバル。うん、僕が悪かったと思う」

「別にいいけどさ。ほとんど料理とかしたことないし」

「ギンガさんとはしてなかったの?」

「うん、ギン姉が一人でアレコレ出来ちゃってたから」



なんていいながら、やっとジャガイモを剥き終わる。・・・長かったよ〜。



「あー、安堵してるとこ悪いけどこれよろしく。剥き方はさっき見せた感じでお願い。
剥いてくれたら、あとは僕がさっとみじん切りにするから」



そう言って、恭文が私の前にドンっと出してきたのは、タマネギが・・・・15個? え、ちょっとまって。



「これ、私が全部やるの?」

「大丈夫、僕もにんじん終わりしだい手伝うから。出来るとこまででいいよ」





そう言って、優しくニッコリと恭文は微笑む。・・・さっきのフォローのつもりなのかな。それで誤魔化されるほど、女の子は単純じゃないよ?

でも・・・許してあげる。さっきは私が嫌なこと言っちゃったしね。あ、これでおあいこだからね?



私がそんなことを思っている間にも、恭文は包丁で人参の皮を器用に剥いて、みじん切りにしていく。うーん、やっぱり逆だよー。





≪スバルさん、料理スキルを蓄えてから言ってください。というより、マスターと比べるほうが間違ってます。
愛のために努力したおかげで、無駄にスキル高いんですから。翠屋で鍛えられたのは伊達ではありません≫

「愛のためって、アンタ・・・」

「うー、それはそうだけど・・・。やっぱり悔しいー!」

「なら、スバルさんもティアナさんも、これから料理を始めればいいのよ。きっと必要よ?
いずれは恋人や、旦那様を持つかもしれないんですから」

「へっ、こ、恋人・・・旦那様っ!?」





カレーペーストを、額に汗を浮かべながら仕込み続けるリンディさんが、素敵な笑顔と共に私達にそう言ってきた。



で、でもっ! 恋人とかってそんな簡単には・・・ねぇ? ティアは綺麗だけど、私はどうかわからないし。

そりゃあ母さんに、『いつか母さんみたいに両手でリボルバーナックルの重さをしっかり背負えるようになる』って言ったけど、でも・・・早いような。





「あー、スバル。そんな顔真っ赤にしなくていいから。
リンディさんが言ってるのは、そういう特別な人が、自分の手料理を食べて『美味しい』と言っているのを想像しながら作ると、腕が上がるって意味。
僕も前におんなじこと言われたのよ。で、実際にその通りだった」

「な、なるほど・・・。勉強になりますっ!」





あぁ、ビックリしちゃったよ。いきなり恋人とかそういう話になるんだもの。でも・・・そういう相手に食べてもらうところを想像するか。

うん、上達しそうな感じがするっ! だって・・・。





「スバル、納得したからって、僕をガン見するな。・・・まぁ、事実かな。フェイトが美味しいって言ってくれるの、嬉しかったし」

「そっか。うん、そうだよね。なんか解るよ」

「アンタ、意外と一途なのよね。ちょこっと話聞いたけど、ビックリしたわよ」

「よし、リンディさん。なに話したんですか? つか、あの漫画読んでたのはそれが原因かっ!」

「・・・てへ♪」

≪リンディさん、舌を出してそんなこと言うのはやめてください。それは、自分がロクでもない人間だと言ってるのと同じですよ?≫



アルトアイゼン、その発言もどうなのっ!?

私達のそんな意見はおいておいて、リンディさんは何処吹く風で、カレーペーストを仕込み続けている。・・・さすが恭文の保護責任者。すごく強い。



「・・・まぁ、それは置いといてだよ。
確かにスバルやティアナみたいに、隊舎に居たらなかなか作るタイミングないよね。調理実習とかないかぎりはさ」

「確かにね。・・・てーか、それはどんな学校よ? 前線メンバーの訓練に調理実習って」



ティアがご飯の仕込を終えて、タマネギを一緒に剥くために包丁を持って来てくれた。・・・うふふ、私の方がまだ上手だ。



「なんか言ったバカスバル?」

「ううん、でも楽しそうだよ? みんなでアレコレいいながら作るのって。というか、今だって楽しいしさ、今度やってみようか?」

「別にいいけど・・・・どこですんのよ?」



え? もちろんここで。



「まてまてっ! なんでここっ!? 普通に隊舎の食堂の調理場使わせてもらえばいいじゃないのさ」

「そーよ、大体アンタやエリオは無茶苦茶食べるんだし、とてもじゃないけどここの設備じゃ足りないわよっ!」



うー、二人してそんなに言わなくたっていいじゃん。いいアイディアだと思ったんだけどなぁ・・・・。



「いや、どこが?」

「とりあえず、ここで作るなら、量が必要じゃなくて、人に知られたくないものとかにしてよ。今だって四苦八苦してるのにこれ以上は無理だって」

「あ、じゃあ設備をここに持ち込んで・・・」



あれ? 恭文とティアがため息を吐いて私から目をそらした。え、なんでどうして?



「・・・なんというか大変だね」

「まぁね、アンタも気をつけたほうがいいわよ? 下手すると、模擬戦の二の舞だからさ」

「うん、そのつもり。・・・さて、人参終わったからタマネギ手伝うよ。剥いたやつどんどん持ってきて」



なんか、二人とも酷いよ。なんか・・・涙出てくるしさ。うん、きっとひどい・・・。



「バカ、それは私たちのせいじゃなくて・・・タマネギのせいよっ!」

「あー、やっぱこれなれないわ。涙が出てくる出てくる。悲しくも嬉しくもないのに流れる涙。これいかにってか?」





恭文、それよくわかんない・・・。


























◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



スバルが言っていたけど、みんなでご飯をワイワイ言いながら作るのは確かに楽しい。

でも、スバルはそういう空気がにじみ出てたけど、まさかティアナまで料理苦手だとは。



でもさ、真面目な話するとあれだよ。



男って単純だからさ、美味しい料理なりお菓子なり作って食べさせてくれる女の子にはコロリといっちゃうから、料理出来たほうがいいと思うよ?

・・・・男は料理出来てもそんな簡単にはいかないのに、なんか人生の不公平を感じてしまうのは僕だけだろうか?










「アンタだけよ、そんなこと考えるのは」

「・・・きついなぁ」

「ね、恭文は、料理出来る女の子が好きなの?」

「うーん、僕は食べさせる方が好きだからそういうわけじゃないけどね。
でも、相手が料理が出来たら、例えば一緒に暮らした時に家事とかが楽になりそうだなとは思うかな」

「なるほど・・・」

「でもでも、リインは知ってますけど、恭文さんは意外と尽くすタイプなんですよ?
きっとそういう彼女が出来ても、ついつい甘やかして家事とか自分で全部やってしまうです♪」

「「ほうほう・・・」」



いや、なんでそんなニヤニヤした表情で僕を見るの? 僕はあれですよ、尻にしいて亭主関白なタイプですから、お願いだからそんな目で見るな。



「・・・まぁ、そういう事にしときましょうか。ね、スバル」

「そうだねぇ。大丈夫だよ恭文。私達は、ちゃぁぁぁんと解ってるから♪」










あー、なんだろう。今のこの二人はすっごいムカツク。バイクに跨ってなかったら蹴り飛ばしたいくらいだ。



それはさておき、僕達がどこに居るかと言うと、マンションの公共ガレージの真ん前。



あの後、皆で頑張って作り上げたカレーを全員で食べたのだけど、その美味しさもあって、瞬く間に品切れとなった。

そうやって食事を済ませてみると、時刻はなんだかんだでもうすぐ4時。二人はこのまま隊舎の方へ帰るというので、僕とリインはお見送りに来たのだ。

あと、高町親子とリンディさんにアルフさん、はやてとフェイトも出る準備が出来次第、下りてくる。





なお、リインは今日はここにお泊り。明日僕と一緒に出勤すれば問題ないそうなので、久々に友情を確かめ合おうという話になった。





でも、カレーほんとに美味しく出来たな。ヴィヴィオもすっごく美味しそうに食べてくれたし、スバルもいつに増しておかわり連発だったし・・・。

うん、業務用炊飯器の購入考えようかな? またみんなでこういう機会があるとも限らないし。










「そうして買った途端に、だーれも来なくなるってパターンは考えといた方がいいわよ?」



バイクに跨りながらそう口にしたのは皆さんご存知の素直じゃないティアナさん。

・・・あぁ、分かってるよ。分かってるからそれにかんしては口に出さないでほしい。



「あ、それなら今度は来るのを待つんじゃなくて、誰か呼んでみなよ。そしたら、業務用炊飯器買っても無駄にならないでしょ?」

「いや、誰を呼べと?」





人を家に呼ぶのは勇気がいるのだよ。断られたら拭い去れない傷になりそう。

そう考えると・・・・エリオやキャロあたりか? この辺りなら年上の威厳を悪用してなんとか・・・。





「アンタ、どんだけ引きこもり思考なのよ・・・」

「そうだよ。別に新しい人ってこだわらなくても、私たち呼んでくれても構わないんだよ?」

「へ・・・?」



スバルとティアナを? また来てもいいってこと? 僕は今日、二人のことを何一つもてなしてないですけど?

スバルにいたってはケンカしたし。



「別にそんなの関係ないよ。すっごく楽しかったし。それに・・・友達だもん。ケンカくらいするよ」

「まぁ、私もスバルと同じかな? 部屋を見る限り、いかがわしい感じも無かったしね。アルトアイゼンも居るんだし、問題ないわよ」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。



「どうしたですか恭文さん?」

「・・・いや、なんかこう・・・恥ずかしい」



うん、恥ずかしいってのとはちょっとちがうけど、こうこそばいくてムズムズして居心地の悪い感じがする・・・。なんだろ、これ?



”恭文さん、こういう時は、素直に『ありがとう』って言えばいいんですよ? 恭文さんは、今嬉しいんですから”



突然届いたリインの念話でのアドバイスに従い・・・、ちとドキドキするけど、言ってみる。



「あの、スバル、ティアナも・・・ありがとう。そう言ってくれて、なんか・・・嬉しい」





僕がそう言うと、スバルとティアナがなんというか・・・。

なんだこれ、びっくりしたような拍子抜けしたような、よくわかんない表情になった。な、なにか変だったの今のっ!?





「いや、ごめん。なんかおどろいちゃって。いつものあんたじゃなかったし」



どういう意味だっ。あー、やっぱこの女ムカツクっ!



「まぁまぁ、別にお礼なんていいよ? また、美味しい物ご馳走してね。私も一緒に作るの手伝うから」





そうニッコリ顔でスバルが笑う。

・・・まぁ、スバルと一緒に作るの楽しかったし・・・またこういう事があってもいいかな?

あとは量だな。ここはなんとかクリアしないと。





「ごめん、おまたせー」

「おまたせー」

「いやぁ、すっかり長居しちゃったね〜」

「ほんとね、居心地良すぎて出る時に名残惜しかったわ。・・・いっそここで暮らしちゃいましょうか?」

「あ、そりゃいいね〜。ここならフェイトにも頻繁に会えるし」

「お母さん、アルフも、さすがにそれは・・・」

「あぁ、せっかくやしうちも暮らしたいなぁ。居心地はえぇし、本局行く時も楽やし」



まてぃ提督さんに使い魔に部隊長。あなた達なにをさりげなくとんでも発言してますか? この人達は本気でやりかねないし、ここは奥の手でいこう。



「アルト、クロノさんにシグナムさんに連絡を。引き取ってもらいに来て」

≪クロノさんは今は航海任務の真っ最中のはずですが。シグナムさんも仕事中のはずです≫



そんなの知るか。多少脅してもいいからすぐに来てもらって。僕の安全の方が大事でしょうが。



「いやだわ、冗談に決まってるじゃない。ね、二、三日なら泊まっていっても構わないかしら?」

「とっとと帰ってエイミィさんに僕が元気してたとか伝えてください」

≪容赦ありませんね≫

「あ、うちはえぇやろ?」

「彼氏の家に入り浸ってよチビタヌキ」





リンディさんやはやて相手に容赦なんてしようもんなら、ほんとにここをセカンドハウスにされる危険性が高い。



例え今、二人がが悲しそうに涙を拭うような表情を見せたとしても、気を抜いてはだめなのである。

さて、なのは達が降りてきたってことは、みんな帰る準備はオーケーってことだよね、忘れ物とかない?





「うん、大丈夫だよ。恭文君、今日はありがと。また明日ね」

「また明日ね恭文♪」

「私たちもそろそろ出るわね。それじゃあ、また隊舎で」

「あ、また明日ねっ!」

「そいじゃあお母さん、私たちもそろそろ・・・」

「そうね。恭文君、今度はあなたが家に帰って来てね。みんな待ってるから」

「それじゃあ・・・また明日ね、ヤスフミ」

「リインのこと、お願いな〜」

「うん、みんな今日はありがとうね。すっごく楽しかった。あのさ、また・・・いつでも来てくれていいから」

「「「「「「「「ほんとにっ!?」」」」」」」」




・・・あーいや、やっぱり事前連絡してもらえると助かるかな? 今度はちゃんともてなすから。

いやいや、そんな全員そろって残念そうな顔しないでっ!? てーか、あなたがたのノリ方ちょっと怖かったしっ!!





あ、でも・・・。





「フェイトは連絡なしでいいよ? むしろ、また来て欲しいな。今日はダメだったけど、アレコレ話したいし」

「うん、それじゃあまた来るね。あ、暇な時になっちゃうけど・・・」

「それでいいよ」





みんなが、なぜだか生暖かい目で僕を見るけど、気のせいだ。

それに、そんなことはどうでもいい。だって、フェイトと一緒の時間が作れるかも知れないんだから〜♪





「なぁ、それならうちかてえぇやろ?」

「そこのタヌキは予約センターから予約ね。ちなみに、一年先まで予約は満席だけど」

「なんでやねん自分っ! ちゅうかどこの人気ホテルやそれはっ!? あれかっ! そないにフェイトちゃんが大事かっ!!
そないにフェイトちゃんとラブラブしたいんかっ!!」

「はやて、ラブラブってそういうのじゃないよ。私と恭文は姉弟だから、お話くらいはするよ?」





・・・その後、僕はうずくまって泣きました。フェイトはポカーンとしながらも、みんなと一緒に帰りました。





そう、それぞれの居るべき場所に。

・・・てか、会おうと思わなくてもすぐ会えるけどね。なのはとヴィヴィオ、はやてにフェイト、それにスバルとティアナに至っては同じ部隊だし。





「・・・心が寒いから、早く入ろうかリイン」

≪マスター、そんなにヘコまないでくださいよ。いつものことじゃないですか≫

「そうですよ。いつものことじゃないですかっ! 何を今さら・・・」

「お前ら僕になんか恨みでもあるんかいっ!? 『いつものこと』って連呼するなぁぁぁぁぁっ!!」










なんて言いながらも、僕とアルトとリインは部屋に入る。そうして気付いた、先ほどまでとは変わってシンっとした部屋の様子に。





・・・よし、ホットミルクでも入れるか。





アルフさんは買い物で、空っぽだった僕の食料品まで買い足してくれた。

さすがに悪いと思って代金を払おうとしたのだが・・・・これくらいはやらせてほしいとウィンク付きで言われてしまい、素直に好意を受け入れた。



で、そんな差し入れの中に牛乳があったので、それで暖かいホットミルクを作る。

僕もリインも甘いのは好きだから、蜂蜜をたっぷりと居れてうんと甘めに作る。



それを僕はマグカップに、リインは・・・って、リイン?










「恭文さん、恭文さんの服借りても大丈夫ですか?」

「いや、それは構わないけど・・・あ、そっか」

「はいです。・・・・アウトフレーム、フルサイズっ!!」





僕の寝床である和室に飛んでいってからリインがそう叫ぶと、リビングとはドア無しで繋がっている和室から、光が漏れる。

それを見て、僕は自分が使っているのと同じサイズのカップを取り出す。ちなみに、可愛いウサギの絵のプリント付きである。



その二つのカップにホットミルクを注ぎ込んで、リビングのテーブルの上に運ぶ。



すると、ダボダボのパジャマを着た、外見年齢にすると10歳前後の一人の女の子が出てきた。・・・リインである。



リインは、いつもはあの妖精サイズの姿なのだけど、そのままでは不都合な場合というのも当然ある。

例えば、僕やなのは達の出身世界である地球には、リインサイズの人間もプカプカ浮いている輩も・・・・、うん、いないはずだ。

なんか海鳴に住んでるとその辺りに自信が無くなるけど・・・ないということにしておこう。



とにかく、そういう世界で魔法文明や次元世界との交流などが無い場合に備えて、リインには10歳前後の体格に変身できる能力があるのだ。

・・・・てーか、泊まる時って、なんでかそのサイズの事が多いよね? 久々だったんで忘れてたよ。





≪リインさん、気にしないでください。マスターは色々と鈍いんです≫

「知ってるから大丈夫ですよアルトアイゼン」



・・・いきなり失礼な事を言うなぁ。そういう子にはホットミルクはあげませんけど?



「うー、別に失礼じゃないですっ! ・・・ホットミルク下さいです」

「仕方ないなぁ。はい」





僕は、リインにホットミルクを差し出す。それをリインが慎重に受け取って、ゆっくりと飲み始める。・・・美味しい?





「はいです。あー、身体が暖まります〜」

「ホントだね、ミッドは気候が年中安定してるからあんま分からないけどさ。もう冬なんだもんね」

「そうですね、六課が始まってもう半年過ぎてしまいましたです。
・・・始まった時は、一年は長いなと思ってたんですけど、ほんとにあっという間にここまで来てしまいました」

「そっか・・・」





そう言いながら、二人して静かに、ゆっくりとホットミルクを飲む。目が合えば、お互いに優しく微笑む。



なんというか・・・リインとはいつもこんな感じだ。

二人っきりでゆったりするときは、言葉を交わしたりとかはしないで、ただ、無言でお互いに神経を緩めて一緒に居る。





・・・なんか、どっかの熟年夫婦みたい。





「なんというか、恭文さんと二人でゆっくりする時は、あまり話す必要が無い感じがするです。なにがしたいかとか、なんとなくわかりますし」

≪それは間違いなく熟年夫婦の思考です≫

「でも、それは付き合いが長いからだと思うですよ? 恭文さんと会って、もう7年とか8年近く経ちますし」



そっか・・・そんなに経つんだね。色々なことがあったなぁ。あの頃は、自分がまさか異世界に居て、のんきにホットミルク飲んでるとは思わなかったよ。

そんなことを思いながら、僕はホットミルクをまた一口飲む。・・・うん、蜂蜜の程よい甘味がなんとも言えず美味しい。



「恭文さん」

「・・・どうしたのリイン?」



リインが、真剣な顔で話し掛けてきた。・・・なんだろ?



「・・・リイン、今日は恭文さんと一緒の、一緒のお布団で寝てもいいですか?」



へ? 別にいいけど。といいますか、あなたここに泊まりに来る時は基本的にそんな感じですよね?



「そ、それはそうですけど・・・」



・・・おっきくなったリインと一緒に寝たり、お風呂に入るのも泊まりにきた時の恒例みたいなものだし、リインがわざわざ聞く意味がよくわかんない。

といいますか、顔が真っ赤だけど大丈夫?



≪リインさん、本当にすみません。マスターはとことん鈍いので・・・≫

「・・・知ってますから大丈夫ですよ。アルトアイゼン」



・・・なんというか、失礼だな君達。さっきから鈍いとか鈍くないとか・・・なんなんですか本当に。

ちょっと膨れつつ、ホットミルクをもう一口飲む。・・・美味しい〜♪



「鈍いうえに単純なのです」

≪全くです≫




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



さて、今の時刻は午後10時になろうかという時間。ホットミルクを飲んだ後、リインとデリバリーのピザを食べつつ、アニメ鑑賞会をしていた。

とは言え、明日からまた仕事なので、そろそろ寝ることにした。プレイヤーからディスクを取り出し、ケースに直してっと・・・。

それを終えてから、リビングの明かりを最低限まで落として、アルトにお休みを言ってから、僕とリインは布団に入る。・・・もちろん一緒の布団に。

なんというか、最初の頃はどきどきしたけど、今はちょっとちがう。別に普通になったとかじゃなくて、安心感が強いのかもしれない。

リインも同じ・・・はずなんだけど、やっぱ顔が赤い。どうしたんだろ?





「・・・ちょっとだけ、ドキドキしてるです。久しぶりですし」

「そっか、しばらくお泊りできなかったしね」





僕が六課とは別行動だったこと。

そして、リイン自身も部隊長補佐というけっこう重要な役職に付いたことから、ここ半年はメールや通信による連絡がもっぱらだった。





「・・・恭文さんも最初から六課に来ればよかったですよ。そうすれば毎日会えたのに」

「うー、ごめん」





・・・実は、僕も六課に来ないかという話をはやて達から受けていた。けど、僕はそれを断った。


理由は簡単だ。一つの部隊で、一年間ずっと所属している。その響きに、どうしても辛いものを感じてしまったからだ。



と言ってもそれが全部じゃない。



その前にクロノさんから六課が関わることになるレリックとガジェットに関して事前に話は聞いていた。はやてが、それ対策で部隊を設立する動きがあることも。



それで、もし所属するのが辛いと感じるようなら、自分の下で集中して、レリックやガジェット関連の調査を手伝わないかと誘われたからだ。

そして僕は・・・、部隊の中に居るみんなの手が回らないことを出来ればいいと思って、クロノさんの誘いを受けて、今に至る。





「謝らなくてもいいですよ。恭文さんにだって、ちゃんと理由があったんですから。
でも、もし恭文さんが居たら、恭文さんだったらどう言うのかなって・・・考えることが沢山あったです」

「・・・そっか」



右手を出して、すぐ隣りに居るリインの頭を、そっと、優しく撫でる。手のひらから、柔らかい髪の感触が伝わってくる。

そうすると、リインの顔の赤みが更に深くなる。薄暗い部屋の中でも分かるほどに。



「・・・ほんとに、最初から六課に来ればよかったね。ここまで居心地のいい部隊とは思わなかったからさ。うん、それは失敗だったな」

「ホントです。そうすれば、リイン・・・」





そこまで言うと、リインがギュッと抱きついてきた。・・・リイン、どうしたの?





「・・・寂しくさせた罰です。今日は、こうしてるですよ」

「寂しかったの?」

「当たり前です。寂しかったに決まってるじゃないですか。それにすごく、不安だったです。
約束したのに、ちゃんと守れないくらいに離れちゃったんですから。恭文さんが危ない目に遭ってる時に、ちゃんと力になれなかったですから」

「そんなことないよ。それに、それを言ったら僕だって・・・」



リインが傷付いた時、そこに居られなかった。守る事が出来なかった。それを言うなら、僕だって同じだ。

覚悟はしてたけど、約束を守れなかった。守ると約束したのに、それを守れなかったんだから。



「そんなの、関係ないですよ。というか、リインがこうしたいんです。絶対、絶対に・・・離さないですよ」

「・・・わかった」





僕は、リインに腕を回して、ギュッと抱き締める。右の手のひらで、頭を優しく撫でるのも忘れない。

・・・リインは僕の胸に顔を埋めている状態で、顔色は分からないけど、きっと茹蛸みたいになってるんじゃないかな?





「なって・・・ないです」

「地の文につっこむのはやめて欲しいんだけど?」





そうして、リインを抱き締めながら頭を撫でているうちに、僕の意識はゆっくりと夢の中へと吸い込まれていった。





腕の中に、柔らかく心地よい温もりを確かに感じながら・・・。










こうして、僕の三日間の休みは幕を閉じた。





振り返れば全く休みになってないような気がしなくもないけど、まぁまぁ楽しかったのでよしとする。シャマルさんの反応が怖いけど・・・。





でも、まだまだこの物語は終わらない。休日が終わろうとも、僕と機動六課の日常はまだまだ続くのだから。





そして、翌日。スバル達フォワード陣にとって、そして僕にとって、一つの大きな意味を持つ出来事が起こることになるけど、それはまた別の話とする。




















(第11話へ続く)




















おまけ;リインの夢。



「・・・恭文さん」

「なに?」



リインを抱き締めながら、暗闇の中で言葉を交わす。なんか、不思議な感じだな。うん。



「リイン、夢を見たです」

「夢?」

「はいです。・・・先代のリインフォースの夢なんです」

「お姉さんの?」





リインには、自分と同じ名前のお姉さんが居た。その人も、リインと同じで、高度な人格を有するユニゾン可能なデバイスだったと。

亡くなった理由については、詳しくは聞いていない。はやて達が辛そうな顔、するしね。





「はいです。リインの中に、先代リインフォースが残してくれてたです」

「残してくれた?」

「はい。先代の思いを・・・私当てに」

「それが、リインが見た夢?」





僕がそう言うと、リインは頷く。

つまり・・・先代リインフォースは、自分が亡くなるときに残してたってことか。

生まれるかどうかもその時点では分からないはずの今のリイン当てに、メッセージを。



・・・ん? まてまて、一体どうやってっ!? だって、その時はリインは影も形もなかったはずだし。





「リインのリンカーコアは、はやてちゃんのリンカーコアのコピーして、そこから生まれましたから。
それで、先代の魔力とスキルは、そのはやてちゃんのコアの中に溶け込んでいます」

「・・・なるほど。リインにっていうよりは、はやてのコアに、その時残したわけか。新しい祝福の風が生まれた時、その子が見れるように」

「はいです」





そしてその夢・・・というより、先代の記憶映像は、リインが地上本部と六課襲撃事件の時に怪我をした時。その治療中に見たそうだ。

最初はぼんやりと、だけど・・・それは徐々に形になって、リインに語りかけた。





「それ、はやて達は知ってるの?」

「・・・知らないです。でも、言うつもりはないです」

「どうして?」

「大事なことは、胸に秘めて・・・力にするって、教わりましたから」

「・・・悪い子だね。家族に隠し事なんて」

「隠し事じゃないです。秘めているだけですよ」



まぁ、リインにとっては違うんだろう。でも・・・どんなメッセージだったんだろう。



「リインは・・・先代の名前を受け継いだけど、紛れもなくリインはリインだって、言ってくれました。それだけじゃなくて、沢山、沢山言葉をくれました」

「・・・そっか」



それだけ言うと、リインは僕を抱き締める腕に、更なる力を込める。強く、何かを求めるように。



「でも、それをどうして僕に話してくれたの?」



胸に秘めるなら、話すことはないと思うんだけど。



「いいんです。恭文さんは・・・特別ですから」





まぁ、確かに。僕とリインは色んな意味で繋がりが強い。





最初に出会った時、僕は友達って呼べる存在が居なかった。だけど・・・リインが友達になってくれた。まるで、当然のことのように・・・。



僕にとってリインは生まれて初めての友達で・・・始まりをくれた大事な存在。僕がここに居て、生きる意味をくれた。すごく、感謝している。





「それは、リインも同じです。恭文さんが居なかったら、リインはここには居なかったです。
恭文さんが、リインに今をくれたんですよ? だから、特別なんです」

「・・・そっか。リイン」

「はい」

「ありがと」

「・・・はいです」





僕も、リインを抱き締める腕に力を込める。・・・そうしたいから。ただ、それだけ。




















(本当に続く)




















あとがき



≪さて、恒例のあとがき。今回のDJは、私、古き鉄・アルトアイゼンと・・・≫

「機動六課部隊長。八神はやてでお送りします。・・・つか、自分。そのウサギ姿はやめんか?」

≪どうしてですか? こんなに愛らしいのに≫

「あほかっ! 邪悪さが染み出てるやないかっ!! なんで邪○とか三○目みたいなデザインにしとるんやっ!?」

≪簡単です。・・・なんやかんやは、なんやかんやだからですよっ!!≫

「意味分からんしっ! つか、33○探偵ネタはやめいっ!!
で、今回の話やけど・・・」

≪マスターとリインさんのピロートークですね≫

「うちの子はまだ子どもやっ! そないな表現はやめてっ!! まぁ、ある意味うちらよりも繋がり深いからなぁ。だからこその旧ヒロインやし」





(どこからか、『旧ヒロインって言うなですー!』という声が聞こえたけど、気にしないことにするウサギとタヌキ)





「誰がタヌキやっ!
まぁ、アレや。別にエロいことせぇへんのやったら問題ないしな」

≪いや、その発言もどうなのですか? あと、前回でもちょろっと話しましたが、あなた方、どんだけオフィスライクな付き合い方してるんですか?≫

「なんやいきなりっ!?」

≪あまりに、隊長陣のプライベートな部分を、スバルさん達が知らなすぎるのではないかと言いたいのです。
SS01然り。7,8、9話然り。ちゃんと、プライベートでのコミュニケーション取れてないじゃないですか。
仲間ではある。ただ・・・上官と部下という区切りで付き合いすぎるのではないかと思います≫

「いや・・・部隊って、そういうとこやん? キッチリせぇへんとあかんよ」

≪完全に身内・関係者繋がりな部隊編成のクセしてなに言ってるんですか。
隊長陣が全員身内って時点でキッチリしてないでしょ。能力的な要素がちゃんと満たされていると言っても、間違いなくおかしいですよ。
キャロさんもSS01で『部隊というより、家族みたい』って話してるのに、どうしてフォワード陣と隊長陣で温度差があるんですか。
ようするに、あなた方の今の付き合い方は浅すぎるんですよ≫

「う・・・」





(うめく、部隊長。その様子を見て青いウサギ、ため息を吐く。力無く、仕方ない何かを諦めるように)





≪まぁ、この辺りはどうしようもない部分も多いですけどね。アナタの言うとおり、キッチリしなきゃいけませんし。難しいのでしょう≫

「でも、解決・・・していかなあかんかな?」

≪必要ないですよ≫

「ホンマかっ!?」

≪えぇ≫





(青いウサギ、ニッコリと笑って・・・断言する)





≪アレですよ。卒業後に縁が切れる典型的な関係ですから。あ、隊長陣とフォワード陣って枠に別れた上でですね≫

「アホかぁぁぁぁぁぁっ! それあかんやんっ!! めっちゃあかんパターンやんかっ!?
そないなことしたくないわっ!!」

≪贅沢な人ですね・・・。じゃあどうしろって言うんですかっ!?≫

「逆ギレするなぁぁぁぁっ! むしろうちが聞きたいわっ!!」
≪ということで、今日はここまでっ! お相手は私古き鉄・アルトアイゼンとタヌキがお送りしました。なお、この後は拍手のお返事コーナーです。
それでは、またー!≫

「自分なに華麗に無視してくれてんのっ!? ・・・え、ホンマにこれで終わり?
なに勝手に終ってくれてるんやっ! うちはこれからどないすればいいんやっ!! なぁ、誰か教えてーなっ! なぁっ!!」










(慌てふためきながら、終了コールに抵抗し、答えを求める部隊長。しかし、それに答える声は無い。無情にも、番組は終る・・・。
本日のED:『さよなら』)




















≪ということで、拍手のお返事です。いや、本当にありがとうございます。作者ホクホク顔をしております≫










※コルタタさんへ
恭文・・・その通りだ!そうだよな!
男たるもの例えいくつになってもヒーローに憧れるよな!
仮面ライダーになりたいと思うよな!いやいや君とは一度ゆっくりと話したいよ。

by18歳、男より





古鉄≪まぁ、マスターの場合は病気ですけど≫

恭文「ほっとけっ! えっと、拍手、ありがとうございます。というか、同志が居るのは嬉しいですっ!!
そうですよね。誰だってヒーローに憧れますよね。仮面ライダーになりたいって思いますよねっ!! 僕も、是非話したいです。
ちなみに、年代的にリアルタイムでは昭和ライダーはブラックとRXしか見れてないんですけど、平成は全部チェックしています。好きなのは・・・電王、カブト、ファイズ、クウガですね」

古鉄≪今言ったのは好きな順ですね。特に電王はブッチギリです。DVDが全巻ありますから。・・・作者ですらアレとかコレとかで見てるというのに≫

恭文「まぁ、アレとかコレとかに関しては無しにしようさ。
でも、本当にありがとうございます。随所にそんなネタが含まれつつ話を進めると思いますので、期待しててくださいっ!!」










※とある魔導師と機動六課の日常の感想 
一気に読ませていただきました〜。面白いです。いいっすね、恭文。
こんな主人公大好きです。
なんだか、なのは→恭文→フェイトな感じのトライアングルがありそうなのは気 のせいですか?
オリ主でその展開は珍しいので間違ってなかったらもっと掘り下げて描写して欲しいな〜。いじめられるなのはカワユス。
天然フェイト激カワユス。次回は前後編という事で期待してます。頑張ってくだ さい。

あと、師匠にももうちょっとスポット当ててあげてー



古鉄≪いや、あんな無駄な会話の多い駄文を一気に・・・。
ありがとうございます。まぁ、前後編でしたが、基本アホな話になってしまったので、申し訳なかったり・・・
あと、マスターを誉めてくれるのは嬉しいのですが、あの人調子に乗りやすいので、あまりやらないであげてください。
・・・マ、マスターを誉めていいのは、私だけなんだからねっ!?≫

なのは「アルトアイゼン、キャラ崩壊してるよっ! というか、なんでツンデレっ!?
あの・・・可愛いって言ってくれるのはありがたいのですが、いじめられないとダメなんですかっ!?
私、恭文君にいじめられないと可愛くないんですかっ!!」

師匠「ダメなんじゃねぇか? あっちこっちで魔王とか悪魔とか言ってるしよ。・・・いや、悪魔はアタシだけど」

なのは「ヴィータちゃんひどいよー!」

師匠「あと、リインもそうだけどアタシの出番も少なすぎだろっ! アタシ、アイツの師匠だぞっ!?」

古鉄≪これにかんしては申し訳ないです。今まではどうしても、マスターと初対面の人に焦点を当ててましたから。
スバルさん然り、ティアナさんやエリオさん達然り・・・。ただ、今後は出番を増やしていきたいと思いますので。というか、増えてます≫

師匠「なら問題ねぇ。ま、話の都合ってのがあるからな。・・・で、トライアングルするのか? ハートしちゃうのかおい」(小声)

古鉄≪・・・まぁ、あれこれ思案中ですね。細かく言うとネタバレになりますが、結構考えてます。
ただ、恋愛経験0な作者ですから、あまり高度なことは期待できないかと。
三角関係って聞いて、昔の少女漫画を思いつくような脳みそですから≫(小声です)

師匠「仕方ねぇかそれは。・・・よし、トライアングルはいいから、まずあとがきに出せ。アタシの出番は、それでいいってことにしてやるからよ」(小声なんです)

古鉄≪了解しました。師匠≫(しつこいようですが、小声です)










古鉄≪以上で、今回の拍手のお返事は終了となります。いや、本当にありがとうございました。これからも、拍手はお待ちしておりますので。
あと、何故か長文になりやすいのは・・・きっとそういう人なんです≫














(おしまい)






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あきゅろす。
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