小説
仔狐育成日記18
扇風機の風を受けながら課題に取り組む。
これでも学生。しっかり勉強にも励まなければならないのだ。
じとっとした空気に汗が出てくるが、地球のためエコのためそして節約のためクーラーは我慢。
風に資料が飛ばないよう気をつけながらパソコンとにらめっこを続ける。



ひと段落ついたところで身体を伸ばしそのまま後ろに倒れこむ。
そういえば今日は仔狐が静かだな、と寝転んだまま頭を左右に振って黄色い尻尾を探す。
くてりとフローリングに敷物のように寝そべっている姿が目に入った。

「……元就?」

もそりと起き上がって覗き込む。が、うつ伏せになっているため表情がわからない。
つんつん、と突いてみる。ぴくりとわずかに動いたが、返事もなく寝そべったまま。

「おーい、元就?」

今度は揺さぶってみる。
するとうつ伏せていた頭がのろのろとこちらを向いた。

ひどく虚ろな眼差しがこちらを見つめた。



「元就!?」

びっくりして抱き上げると、虚ろだった元就の目に光が宿り、同時にばたばたと暴れだした。

「お、おい暴れるな!」
「熱い! 近寄るでない!」

元就の悲鳴に合点がいった。ようするに熱くてばてていたのか。
こうして体温が触れるだけで熱くてたまらないのか、必死に逃げようと動いている。そうすることで余計熱くなっているとは気づかないのだろうか。

「熱いなら言えよ」
「何度も言ったぞ!」
「え?」
「なのにそなたときたら! さっぱり我の声を聞こうとせぬ! もとちかの痴れ者が!」

ああ…課題に集中していたため元就の訴えに気づけなかったのか。
冷や汗が流れた。
ただでさえ熱くて苛々しているところへ無視されて、きっと元就の機嫌は下がっている。



この後、地球の環境もエコも節約も忘れてクーラーを付け、元就にアイスをご馳走したことは言うまでもない…よな。



(H21.7.16〜10.4)


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あきゅろす。
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