小説
仔狐育成日記14
夜の街に光る色とりどりのイルミネーション。
単なる木に飾ったライトから、動物やお城などを模った圧倒的なものまで様々に飾られている。
そう、クリスマスなのだ。


家の中では仔狐がテレビに齧りついている。
映し出されるイルミネーションが珍しいらしい。ほうっとため息をついて見ている。
本物を見せてやりたいと思うが、夜の街に自分が幼い子供を連れて行く…というのを想像するだけで犯罪だと自分で思ってしまう。
それに寒がりの元就は、すぐに音を上げるだろう。
テレビの画面が変わり、今度はクリスマス限定スイーツの紹介を始めた。これは…まずい。
「もとちか」
こちらを見上げた元就の目がきらきらしている。
「我も食べたい!」
テレビを指差しおねだり開始。
画面にはサンタやトナカイ、もみの木などをモチーフとしたケーキなどが次々と紹介されていく。


いつもならここで頭を抱えるところだが、今回は余裕だ。なぜならすでにケーキを用意しているから。
お菓子の家を模ったケーキ。なかなかの値段だったが、これからのことを思えばそれも必要な資金として我慢できる。
「元就が頼みを聞いてくれるなら良いぜ」
「たのみ? 我にか? 言うてみよ」
頼みと聞いて偉そうにふんぞり返った。この仔狐、頼みごとをされるのが嬉しいらしい。聞いてくれるかどうかはそのときの内容次第なのだが…。
「これ着てくれるか?」
取り出したのは赤い服に帽子。この時期に大量に見るようになるあれだ。そう、サンタクロースの服。


元就は首を傾げつつ、ケーキに釣られて服を着替えてきた。
「これで良いのか?」
ずり下がってくる大きな帽子を上に持ち上げつつ、とてとてとやってくる。
可愛い。
「おう。で、そこに立っててくれ」
「うむ?」
ちょこんと立っている元就に携帯を向ける。カメラを起動して元就サンタを写真に収める。
どうもこの間ハロウィンで魔女の格好をさせたときから癖になってしまったようで、ことあるごとに元就を撮影するようになった。
今回も、子供用サンタ服を見つけた瞬間から着せて撮影したくてたまらなかったのだ。
パシャパシャと何枚も撮っていく。結局元就が疲れて嫌だと言い出すまで撮影を続けた。


撮影後に取り出したお菓子の家は、降下していた元就の機嫌を急上昇させた。
幸せそうに食べている元就に、高いお金を出した甲斐があったと満足した。



(H20.12.24〜H21.1.18)



[*前へ][次へ#]

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!