小説
仔狐育成日記11
かわいくない後輩の伊達から何かの話の流れでゲームソフトを借りた。
何の話だったかはもう覚えていない。が、せっかく借りたのだからやってみることにしよう。
最近ご無沙汰となっていたゲーム機を取り出し準備をした。



「もとちか、何をしているのだ?」
「戦国バサラ」
テレビとゲーム機と俺を不思議そうに見て尋ねてくる仔狐にソフトの名前を返すと、更にわからなくなったようだ。
そういえば元就が来てから一度もゲームをしていなかったなと思い出し、元就を膝の上に抱き上げる。
「この黒いのがゲーム機。これにソフトを入れてテレビに繋ぐと、こうやって操作して遊べるんだ」
コントローラーをちょいちょい動かしそれで画面が動くことを見せると、元就は興味が湧いたのかコントローラーに手を伸ばす。
「これでテレビを操っておるのか?」
「テレビじゃなくてゲームな」
「しかしこれはテレビであろう?」
「まあそうなんだが」
テレビとゲームの違いが今一分からないらしい。まあ、俺も上手く説明できないので、適当に誤魔化した。
「先ほど言っておった呪文はなんだ?」
「呪文?」
「せんごく…なんたらと」
「ああ、戦国バサラ。このゲームのタイトル」
「む……?」
よくわかってなさそうだが、かまわず操作を続けた。



とりあえずストーリーをやってみるかと操作し、とりあえず主人公をと赤い武将を選んでみた。
やたらと威勢の良いそのキャラを笑いながら動かしていると元就も興味深げに画面を見つめる。
「もとちかが操っているのか?」
「ああ。こいつで動かしてるんだ」
良くわからないなりに動く画面を見て楽しんでいるのか、いつの間にか元就の尻尾がふりふり揺れている。かわいい。
ストーリーモードなのでちゃんと話になっている。章の始めの語りを元就は熱心に聞いている。
「もとちか、はよう続きを見せぬか」
三章をクリアして少し休憩、と思ったら元就に急かされた。中途半端が嫌らしい。
「はいはい」



勢いで赤い武将のストーリーを終わらせたが、流石に疲れた。
元就はなにやら考え込んでいる。
「どうした?」
「…あやつらは、人間であろう?」
「まあ人間の設定だな」
「なのに何故あんなにも空高く飛んだり、槍に乗って飛んだり、空から降ってきたりするのだ? 人間にもそういうことができるのか?」
「…いや、これゲームだから」
本気にするなよ、遊びだからな、と画面をまじまじと見ている元就に言って聞かせる。
「あの赤いのと大きいのは主従の間柄であろう」
「甲斐の虎のことだよな。そうだけど」
「何故赤いのは主人を殴ることができるのだ。許されぬことであろう?」
「あー……普通はそうだろうな」
「解せぬ…」
考え込む元就に、作り話だから本気にするなと必死に訴えた。



その後、やってみたいという元就にやらせてみた。
選んだのは四国の武将。そして元就は壊滅的に下手だった。
敵にぼこぼこにやられるキャラを、騒ぐ元就の後ろから見ていて何故か涙が出そうになった。





(H20.9.30〜10.27)


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