小説
昼の戦い
「Ha! 幸村は俺とlunchを食べるんだよ。オカンは引っ込んでな!」
「あんたみたいな不良にうちの娘を預けられるはずないだろ。いい加減しつこいんだよ!」
「さ、さすけ…政宗殿…」

いつもと同じ光景。幸村を囲む幸村にfall in love した政宗とその魔の手から大事に育ててきた娘を守ろうと必死な佐助。そしてそれを遠巻きに眺める自分…。
「飽きねぇのかね、こいつら」
だいたい佐助にはかすがという想い人がいるんだ。いい加減 政宗と幸村のことを認めてやっても良いんじゃないか、と何度か言ってみたがあんな奴にやれるか!と息巻いていた。ようするに娘をとられたくない父親…いやあいつの場合母親か?
「ちか、何をしておる」
考え込んでいるうちに元就が側にやってきていた。元就のクラスは4限が体育だったために今日はちょっと来るのが遅かった。
「お疲れさん。あいつら見てただけだ」
先ほどから進展していない光景を指差すと、元就は呆れたように息を吐いた。
「またか」
「もう恒例だよな」
「あやつらのことは良いから昼餉としよう」
「そうだな」
重箱を持って元就を促し、教室を出る。向かう先は屋上。



朝から張り切って作った重箱の中身を披露する。
元就の表情は傍目には変わらないが、ほんのり嬉しそうに笑っているのが俺にはわかる。
元就は割と食べることが好きだ。量は少ないがいろんな物をちょっとづつ味わって食べたがる。だからいつもたくさんの種類のおかずを詰めてくる。量は俺が食べるから問題ない。
「食おうぜ」
「うむ」
いただきます、と綺麗に手を合わせてから箸を伸ばす。最初はお気に入りの甘い玉子焼き。一切れ食べたら次のおかず。
小さく口を動かして食べてる元就は本当に可愛い。自分が作ったものを美味しそうに食べてくれるところもすごく嬉しい。この時間は本当に至福だ、と思った矢先。


「ちかちゃんたちまた先に食べちゃってる」
いつの間にか佐助が背後にいた。こいつは本当に気配を感じさせない、と内心びびりながら振り向く。政宗と幸村の姿も見えた。
結局今日も決着は付かず、お腹を空かせた幸村が限界を訴えたのだろう。そして佐助の妥協案、第三者を含めた昼食に落ち着くのだ。そこで選ばれる第三者は何故か俺と元就。今日も2人きりの食事は適わなかった。
「ほら旦那、お昼ごはんだよ」
「幸村!俺の作ったlunch のほうが美味いぜ!」
ここでも2人の争いが始まる。だが幸村には2人の間に散る火花など見えるはずもなく。今日もゴージャスな昼食に悦び勇んで箸を伸ばしていた。
「毎回 食事が遅れる幸村が哀れなのか、どちらも美味しいと他意もなく笑って言われる2人が哀れなのか。わからぬな」
3人の様子を見て元就がぽつりと呟いた。
いや、俺は毎日2人きりの昼食を邪魔される俺が一番哀れだと思う。



END



幸村も女体です。伊達真、佐かす推奨。
元親は昼食の場所を変えたりと抵抗するんですが何故か毎回 佐助に見つかって結局5人で食事、になります。


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