小説
仔狐育成日記1
仔狐を拾いました。


「ほーら元就、ご飯だぞ」
「我はそのようなもの食べぬぞ」
ぷいっとそっぽを向く10歳くらいのお子様。普通と違うのは狐の耳と尻尾がついていること。
何でも安芸の由緒正しい妖狐の血筋らしいが、見た感じそんな大それたものには見えない。何しろ迷子になって泣きべそかいてたのが最初の出会いだからな。
助けてやったら恩を返さねばならんとか何とか言ってうちに住み着いた。
恩を返すどころかこっちが世話を焼いてやってるんだが。

「わがまま言ってないで食えって。腹減ってるだろ」
「嫌だ!」
せっかく作ってやったご飯(ちなみにカレー)を食べようとしない理由は簡単。こいつの嫌いなにんじんが入ってるから。
「このようなものを入れるなど、愚劣な」
「好き嫌いすんなって」
逃げようとする仔狐を抱きかかえて膝の上に座らせる。スプーンでカレーを掬い上げ(しっかりにんじんも入れて)口の前に持っていく。
嫌々と顔を横に振って抵抗するが辛抱強く待ってやるとしぶしぶながらもちゃんと口に入れる。
「どうだ、美味いか」
「…もとちかの阿呆」
にんじんが嫌だったのか減らず口を叩くが、耳が尻尾が振られているところからすると悪くはなかったらしい。



長曾我部元親、ただいま仔狐育成中。


(H19.11.7〜12.15)

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あきゅろす。
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