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小説
うそしかつけないくすり。

ぽかぽかと春めいて一番暖かい午後三時。

絶好の昼寝日和だ、と沖田はズボンのポケットにてをいれてだらだらと歩いていた。

(ここからだと、公園よりあそこの方が近いな…)

いつもの公園は今いる場所より少し遠いしチャイナがいるかもしれない。
喧嘩も良いが今日はだるいのでパス、と決めて川沿いを歩いているとお目当ての橋が見えてくる。

そんなに大きくない橋だが
下がずっと続く遊歩道になっていて、
しかし桜並木など人を魅了するものがないので人通りは少ない。
それでも散歩する人の為にベンチが置いてあるので昼寝の絶好のポイントでしかも土方の野郎に見つかりにくい。
春眠暁を覚えず(いまは昼だが)って事だ。と自分なりに解釈して、土手を降りていくと

「ん?」

会わないようにと公園に行かなかったのに何故かピンク頭が川辺で川を見つめてぼんやりしている。

無視してもいいが膝を抱えて座っているその場所こそ沖田が昼寝しようとしていたベンチだった。

「おい、邪魔だクソチャイナ」

不眠症気味である自分が珍しく眠いのだ。
さっさとどけといつも通り声をかけると、

「会いたかったアル」

こちらを見つけるや否や最も会いたくないといった表情で言った台詞の後で神楽がはっと口を抑えたのに
さっきまでの眠気が吹き飛んだ。
ついでに逃げ出そうとするチャイナを流れるような動きで捕獲した。



***


え、なんなの。デレ期か?デレ期なのか?
その割に顔は嫌そうだしなんなの?
顔がツンで言葉がデレとか新しいツンデレの境地?いやそれ斬新すぎるだろ。

と一瞬で思考が駆け巡ったが口に出たのは

「お前なんなの?」

の一言しか出せず、
じたばたともがく桃色頭を「離して下さい総悟サマって言ったら離してやるよ」といえばぴたりと止まる。

明らかにおかしい。
そんな事を言えば死ねだの私に近づくなとか罵詈雑言が飛んでくるのに。

「どうしたんでィ、お前」

もう一度問えば逃げ出すことは諦めたのかその辺に落ちてた枝でベンチの下の遊歩道のタイルが割れて砂地が見えている場所に

『うそしかいえないくすり』

と拙い文字で書いたのに、飲んだのか?と問えば頷く。

「拾い食いしてんじゃねぇよ、バーカ」

そう言えばキッと睨みつけてくるが
何を言うか自分でも分からないため口答えはしてこないのが面白い。

(非常にサド心に火がつきまさァ)

「チャイナ」

呼べばびくりと小さな体が、揺れて俺から距離を置こうとする。

気づいたなコイツ。
今きっと凄いイイ顔してるだろう俺に。

「なぁ、チャイナさんよ」

距離を置いたとはいえ狭いベンチに逃げ場はなくさっき捕まえたままの手を引き寄せれば転がり込んでくる体と今にも冷や汗かきそうな表情の蒼い目がこちらを睨む。

「俺のこと、好き?」
「大好きアル…ッ!!」

口走った言葉にみるみる朱に染まる頬と何を言わせるんだと見開いた瞳にニヤニヤとしている俺が映る。完全にドSの顔だ。

「酢昆布と同じ位?」
「酢昆布より好きアル。比べ物にならないネ」
「へぇ、それはそれは」

羞恥と屈辱の為か顔を朱に染めたまま恐らく一生聞くことのないであろうチャイナの愛の言葉。
言葉とは裏腹にぐいぐいと捕まれたままの腕で距離を置こうとするのを押さえつけて。

「ん、むぅ…ッ」

堪らず口付けた。
舌に広がる甘ったるい味と匂いは噂の薬の名残だろう、
たとえ嘘だっとしても惚れた相手からの愛の言葉ってのはいいもんだな、と冷静に思うのは脳みその隅っこの方だけで初めて触れた柔らかな唇に情けない事に夢中になってしまってチャイナの表情をみるのも忘れてた。

きっと嫌悪で歪めているのだろうからあえて見なかったのかもしれないが。


「ぷ、はぁ」
「息とめんてんなよ」
「こ、ろす気カ…!」

殺すつもりはないと思っているのか真っ赤になった表情と違和感ない感想に。

「俺の事が好きかィ?チャイナ」
「だ、大好きアル」

ギロリと潤んだ目で睨んでも逆効果だぜ、お嬢さん。

「俺は嫌い」

口から出た言葉は嘘か真か。






























***

嘘だって言ってるのに強引に唇奪う
さいていな隊長の話。


2015.3.20


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あきゅろす。
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