小説 ちょっと馬鹿の子の方が可愛いってアレ。 「オイ、サドお前私を抱くヨロシ」 「ブフォ!」 いきなり桃色頭が自室にやってきてのこの台詞にお茶を噴きそうになるのを堪えて激しくむせた。 え、俺たちってそんな関係だっけ? と思うのは当たり前だ。 日頃顔を合わせれば挨拶より先に口喧嘩、そして周りを破壊しての激しい喧嘩を繰り広げてきた2人が告白もせず、デートの一回もしてないのにそんなオトナな関係になるわけない。 「うわ、お茶こぼすなよ、汚いアルな」 「いやこれでも我慢したほう…ってそんなことはどうでもいいんでィ!オメェ、頭沸いてんのか!」 あ、前から馬鹿ではあったよなァといえば馬鹿にスンナ!と神楽にギロリと睨まれる。 「これはれっきとした仕事ネ!銀ちゃんに言われたアル!」 「………旦那になに言われたんでィ?回答によっちゃあ、御用だぜ」 いくら万年金欠だからって、 未成年に買春強要だなんて重罪だ。 しかもこんな凹凸もないような色気より食い気の少女に。 どこに需要があるんだ、 あ、俺か。 てか俺以外にも斡旋してやがったらいくら旦那だからって容赦しねぇ…。 「抱かれたい男ナンバーワンを探すアル」 「は?」 下手したら万事屋に斬り込み隊長が乗り込む 事になりかねない問題発言を問えば予想外の答え。 「なんでェ、そりゃ」 「今朝、なんとかって雑誌作ってる女の人がきて、特集するからってアンケート取ってくれって依頼あったアル。それは人気スイーツだったから銀ちゃんと眼鏡が街の人に聞きに言った後にもういっかいその人がきて…」 *** 二人が街に行ったから反対方向に行こうか、ついでに散歩も、と神楽が定春と一緒に出ようとしたら「さっき言い忘れたんだけど…」と彼女が戻ってきて もう一個アンケートがあったと言う。 貴女だけなら丁度いいわね、と笑う彼女に神楽が不思議がっていると少女よりは二十代以上の大人の女性をターゲットにした女性誌なのでもう一個のアンケートは抱かれたい男ナンバーワンだという。 男性が女性に聞くのはちょっとアレだから…と苦笑する彼女にわかったアル!と答えたら言いにくそうに 「貴女…真選組の人と喋る機会ある?」 と聞かれるので素直にYESと答えれば、 彼等に好きな物を聞いてくれと言う。?マークを浮かべれば 「真選組って近寄りがたいけど実は人気があるの!きっとランクインするだろうから雑誌に載せる時に◯◯さんははあぁみえてじつは◯◯が好き!とか書きたいの!」 そしたら売上がきっと伸びるわ!と興奮する彼女の勢いに押されて承諾すれば、喜んで去っていった。 残された神楽はとりあえず屯所に向かうことにした。 ひとつ疑問に思いながら。 「あ、チャイナさん」 「ジミー!」 屯所の入り口であんぱんを持っていままさに入ろうとする山崎に話しかけて。 「ジミー、ちょっと私を抱っこするヨロシ」 「え?」 なんで大人の女性なのに抱っこされたい男の人をナンバーワンを決める必要があるのかと。 *** 「…で?」 「いや、だって不思議アル。なんで抱っこされたいアルか?そんなんされたいのわざわざ聞く必要なんてなくないカ?」 だって皆もう子供じゃないアルよ?? 心底不思議がっている神楽に 自分が思っているような犯罪や爛れた事情がなかったことに安堵半分呆れ半分で神楽を見る。 「いや、1番ガキはテメーだろィ…。」 普段あんだけ昼ドラとピン子見ていて口開けば毒吐く癖に何でそんなに思考がお子様なんだ?あのドラマの内容わかってんのか、コイツ。 勝手に机に置いてある紙にジミーはあんぱん、ゴリは姐御、マヨラーは…と何やら書き始めた神楽に言えば 「ガキじゃないアル!その証拠に街の皆の意見を聞く前に実際に試してるアル!!」 と、何故かドヤ顔で言ってきやがった。 その台詞に聞き捨てならぬ単語があったのを気付いた瞬間部屋の室温が下がった。 無論沖田の周りだけ。 「……チャイナ、オメェ俺以外の何人にその奇っ怪な台詞ぶつけて来たんでィ?」 「んー、入り口にいたジミーに、ゴリ、あと…マヨラーには言ったアル!」 沖田の絶対零度のオーラにも気づかない神楽は素直に名前を挙げる。 それと同時に沖田の脳内の抹殺ノートに名前が不気味な血文字フォントで刻印されていく。(近藤は除く) とりあえず山崎あとでしばく。 土方このヤローは抹殺ノートに既に殿堂入りしているが一万と二千回目の刻印だ。 「ジミーはあわあわしてて、抱っこされたかどうかわかんなかったしゴリは高い高いまでしくれて楽しかったけど、子供扱いされてムカつくアル。マヨラーは煙草臭いし凄い勢いで嫌がられたアル。真選組はレディーに対する教育がなってないアルな。どいつもこいつも」 教育がなってないアル!と怒り心頭の神楽は 山の神海の神も真っ青になる程、今いる部屋の主がいつもの無表情の下で静かに怒り狂っているのに気づいていない。 「まぁ良いネ、絶対に聞いてきてくれって言われてるのはオマエが最後アル。早く抱っこするヨロシ。そのあとに街のオネーサン達にアンケートするアル。」 街の女性にいかにオマエ等がダメダメかしっかり伝えるネ、だから早くしろ、と強請る神楽に眩暈までしそうになる。 世間の認識と目の前の少女との認識が違いすぎだろ、地球の父親なにやってんだ。 このままアンケートさせた挙句に ドヤ顔で『私皆に抱かれたけどアイツ等ダメダメアル』なんて言われた日にはあっという間にあらぬ誤解からの噂が広がり明日は集団ロリコンのレッテルを貼られてしまう。 あとコイツこの年にしてとんだ阿婆擦れになるし。 いや、俺はロリコンにならねェけどな。 「早く抱っこしろ、サド。」 この台詞が瞳をうるうるさせつつ頬を染めながらだったらどんなに良いか。 そんな事された日には昇天しそう… いやするのはコイツだけど、俺は天国に連れてく方…いや一緒にイクけど。 そのまま一生抱きしめても良いなぁ。 その前に土方殺すケド。 「サド!」 そのまま婚礼衣装をどうするかまで考えているとおいてきぼりにされていた神楽が声を荒げる。 「早くしろヨ、こちとら時間がねーんダヨ」 「協力してもらう立場でそんな偉そうなんていい度胸だなァ」 「ハ?」 「抱っこして欲しかったら可愛くお願いしてみなせェ」 ニヤリと笑って言えば神楽の頬にさっと赤みが指す。そりゃ屈辱的だろう天敵に媚を売るような行為をするのは。 勿論そんなお願いなんてなくても寧ろウェルカム、この腕に飛び込んでこい!と言いたい所だが他の男と同列なのが気にくわない。 完全に黙ってしまった神楽がぷるぷると屈辱に震えるのを見れただけでもまぁ良しとするか、一応非常に気にくわないが (特に土方このヤローの後と言うのが) 同列とはいえ愛しい神楽を抱っこできるのだし。 もうすぐ夕暮れ時だし神楽が言うようにアンケートをとるならさっさと帰してしまわねばならない。と思い軽く抱っこでもしてやるか、と腕を動かそうとすれば 「…、っ」 「なんでェ」 がしりと腕を細い手が握る。 「……ッ、…だっこして?…そ、そーご」 さっき自分で妄想してた理想の (屈辱と羞恥の所為で)瞳を潤ませ、顔を真っ赤にした神楽の消え入りそうな声。 こうかはばつぐんだ。 「早くしろア、え?」 「勘弁してくれ」 ぎゅうと抱きしめて神楽の肩に頭を乗せる。 妄想はやっぱり人工的なもんなんだな、天然には敵わない。 神楽の言う抱っこは親が子供を慈しんで抱き上げる行為だとは分かってるが、 それをしてしまうと正面から向き合うことになるので今のこの表情を見られたくない。 絶対情けない顔をしてる、俺。 「オマエこれ抱っこって言わないアル。持ち上げるヨロシ」 「あー、今度オトナの抱く教えてやるからもうちっとこのままにさせろィ」 「?抱っこに子供と大人の方法もあるのカ?」 「情があってやる行為には変わりねぇけどなァ」 愛情なのか欲情なのかどちらにせよ感情のない相手にそんなにすることではない。 「お前の評価が地獄まで落ちたくなかったら絶対皆に抱かれたって言うなよ。あと俺で最後にしろ、他の奴には絶対に言うな」 「はァ?じゃあ確認した意味ないアル」 「いいから止めろ。凄い勢いで旦那が泣くぞ」 「…銀ちゃんが泣くなら言わないアル」 神楽に言う事を聞かす一番成功率のたかい名前をだせば、これまたこうかはばつぐんだ。 個人的には複雑だが、形振り構っていられる状況ではないのでしかたない。 「あとオマエに好きなもの聞けって言われてるから答えろヨ」 「……いまそれ聞くかテメェ」 こちとら柄にもなく緊張…してねぇな。 めっちゃ柔らかいなコイツ。細ェし、あの大量の食い物どこに消えてんだ? あー、ムラムラしそうだ耐えろ俺。 「いまじゃなきゃいつ聞くネ」 「サドは打たれ弱いから準備が必要なんだよ」 「意味わかんないアル」 ぽつんと呟いた神楽を抱きしめたまま 離れがたい感触にいつ離そうか迷うのだった。 「オマエに抱かれると居心地わるい、 オマエ抱っこへたアルな」 「その台詞マジで止めて傷つく」 毒舌娘の居心地の悪さの意味を両者とも 気づかないまま。 *** 危ない初作品から裏にいくとこだった。 耳年増だけど意味わかってない神楽ちゃんが最高に可愛いと思うんだ… 2015.03.07 [次へ#] |