版権(小説) 頑張れ、佐之助くん! 俺は男、相楽佐之助。 今じゃあ長屋住まいの博打好き野郎だが、前はちったぁ知られた喧嘩屋だったんだぜ。 そんな俺が人生最大のピンチを迎えた。 それは突然来た。寝てる最中に耳に水を入れられたんだよ。 これを寝耳に水って言うんだな。 「な、なにすんでい!」 俺の耳に水を入れたやつ、それは 「あんた、いつになったら家賃払ってくれるんだい!」 大家のじじいだった。 「済まねぇ、今度賭場でドカンと当てるからそれまで待っちゃあくれねえか?」 「いっつもそれじゃないかい?いい加減聞き飽きたよ!今週中に払えなきゃ出てってもらうからな」 そういって出ていった。…ってのんきにやってる場合じゃねぇ! ここ以外に住む場所なんかないぜ! いや、ひとつあるけどよう行きたくはないぜ… 毎日あんなご飯食うんじゃあ野宿のがまだましだ… こうなったらあいつに知恵を借りるか。 本当は高く付きそうで借りたくねぇが。 「ってなわけでなんか知恵貸してくれ」 「だからってなんで私のところなの?」 「ほら困ったときの稲荷さん頼みだ!」 「何が稲荷さん…?」 こいつの名前は恵。怒るとめちゃくちゃ怖いが、頭だけは医者なだけに良い。だからこういうときにはめちゃくちゃ役に立ってくれるはずだ。 「な、頼む!」 「人のことを狐呼ばわりするやつなんかにくれてやる義理があるわけないでしょ。さあ、帰ってちょうだい」 「そこをどうにか!」「まぁ、あてながないって言うわけでもないわよ」 「ほ、本当か!」 恵曰く、関東に幻の金山ってものが存在するらしい。徳川時代そこを掘ろうとしたら、土砂崩れが起きて全員が下敷きになって死んだそうだ。 しっかしその場所が分からなきゃ埒があかねぇなぁ。 「と言うわけなんだ、克。お前なんか知らねぇか?」 「知らないでもないが…なぁ」 「本当か」 「でもあそこじゃあなぁ…」 「そんなもったいぶってねぇで教えろって」 「まぁ慌てるなって。ここに地図書いてやるから。もっとも、その謝礼はちゃんともらうがな」 地図を手に俺は走り出した。だいたい関東だったら俺の足ですぐだしな。 「ってなんだこりゃ!」 ついてみりゃあそこは断崖絶壁!この先進むには俺の足の横幅にも満たない幅の足場しかないのかよ! そんなの聞いてねぇ! でもとにかく今は先に行かなきゃならねぇ。例えそこがどんなに危険なところだとしてもだ。 と意気込んで突入したのはいいが、正直こえぇよ、これは。たまたま俺が踏んだ石ころが下に落ちていったんだが、いつまでたっても地面に落ちた音がしねぇ…。 落ちたら即あの世行きだ…。 ってか俺何こんなに必死になってるんだ? あぶねぇとこに来て、こんな身の震える思いして。 例え長屋追い出されたって嬢ちゃん家居座りゃいいじゃねぇか。大体は剣心の料理が食えるし。 ちげぇな。そんなことじゃあ男が廃るからだ。 相楽佐之助の男としての信念のためだ! 「ってなわけだ。どうだ俺の武勇伝」 なんとか借金を返せた俺は次の日嬢ちゃんちに行って聞かせてやったってわけよ。 「あれ?確かあそこって近くに工場作ったからって道できたんじゃなかった?」 え?なんつった?今嬢ちゃんなんつった? 「そうだよ、この間俺でも話に聞いたぜ、なんとか製骨場?」 「製糸場のまちがいでござろう?何でも険しいところつづきだから道を整備したとか。だから観光客が来るようになったのでござるよ」 「そうなのか?!」 「ああ、確か財宝取り放題をやってる?」 なぁ、俺の苦労って、俺の苦労ってなんなんだよ! [戻る] |