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創作(短編・中編)
その後 1
 あれから十数年経ちました。
 父は先日他界し、今日はお通夜でした。
 その日初めて私は母が死んだ後の父の書斎へ入りました。もともと小綺麗な性格だった父は暇さえあれば掃除をしていたので、畳のこの部屋は、埃臭さもなく、本棚の古い本独特の匂いと机代わりの卓袱台だけがありました。卓袱台の上には古びた小さなランプと母の昔の写真がありました。
 昔は母と一緒のこの部屋で3人で川の字になって寝ていたものでしたが、今はそんな数の布団はここにはありません。
 母のタンスと一緒に父が数年前に捨てたのです。

 私はその書斎をぐるりと見渡すと、今度は本棚の本をじっくりと眺めていました。そこに一つ赤い見覚えのある背表紙の本を見つけました。
 中身は母の日記帳でした。

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あきゅろす。
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