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ホテルの事情
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「お父様、大丈夫ですよ。お父様が心配するようなことは、、」

「お願ぁい螺園ちゃあん一切無いって言ってちょうだい!」

くーっ、とハンカチを噛みしめているお父様を前にして、私はスッと目を閉じる。

「その通り、一切、ありません。」

そっ、そうよねぇぇえ!と歓喜の舞を披露するお父様。

「執事ちゃあん入ってこの子を部屋に連れ戻してちょ〜だいっ!」

私に抵抗する間もくれずに、執事はすぐに入ってきて私の体を丁寧に持ち上げ、お姫様抱っこをした。

「きゃっ..!っというか運ぶんだったら解毒剤早く渡しなさいよ!」

「お父様に命じられていないのでそれは出来ません。」

最初から決まっていたセリフみたいに、すらすらと執事は言った。

..執事もこんなんだし、どうしよう、、愛と連絡先交換もしてない。とりあえず冷静になって、彼女と接触する方法を考えなければ。

まだ、伝えてない、伝えられてない。その間に、彼女と一生会えなくなってしまうかもしれない。

ーーーそんなことは、絶対させないわ....!

執事はそんな私の顔を見る。いけない、昔から執事には何を考えているのか勘付かれてしまうから、普段通りに振る舞わないと。お父様から早く貰う為には、

嘘をつき続けなければ。

そんなことを思っている間に、あっという間に部屋についていた。



初めてお父様に嘘をついてしまったわ、、。

お気に入りの椅子の上で、頭を抱える。体重がかかっている肘は硬い机の上にある為、痛い。

こんなに落ち込むとは..

「はあ.....」

思ったより深いため息が出た。

「お嬢様、そんな姿勢ではいけません、肘を痛めますし内臓を圧迫します。髪が今日は格段と乱れておりますので、整えさせていただきます。」

「ああ..ありがとう...」

と、ハッとした。

「どうしてあなた私の部屋に居続けているの!?」

「お父様のご命令です。」

相変わらず悪い気さらさらないわね、、。

執事は、私の髪をクシでとかし、よく分からないけど、髪がサラサラになるような液体を丁寧に塗っていく。執事は続けた。

「今日、お嬢様の婚約者の方がお見えになるようです。」

「えっ!?」

私が執事の方を振り向こうとしたけれど、執事にお動きならずに。と頭を手で固定させられた。

「相手の方はお嬢様とのご結婚を本気で考えていらっしゃるようです。」

「そ、そうなのね。」

ズキンと胸が痛んだ。相手の方にも申し訳ない。そして私は縛られている、ということを実感してしまったのだ。


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