ご指名は?1.5 39
「えええっ!?」
し、しまった。
口を隠してももう遅い。皆さんこっちを振り向いている...!
「ごめんね、いきなりのことで...」
と、申し訳なさそうに華夜さんは近づいてきた。イ
イにお...じゃなくて!
「いっ、いや違うんですごめんなさい!ちょちょっとビックリしちゃって..っ!」
はぁ同じ女の人なのにキンチョーする..っ!
ーーードス
「ぅええっ!?」
と、葉太郎くんとハモッた。それは、背後から聞こえた、鈍くて超やば〜い音..。隼人さんは目を見開いている。
な..な..!??
ゆっくり後ろを振り向くと、お腹を押さえてハァハァ興奮するくくさんがいた。だけど、口からよだれとか何か、液体が出てい..て、苦しそうでもある。
「女の子に抱きつこうとするなんて、言ってるそばからダメじゃない?」
私は呆然としてしまった。視界の端には、華夜さんのすらりとした長い足。
大丈夫?と菜太郎がくくさんの口元をティッシュで拭う。
葉太郎くんは、ちょっとつっかかりながら、ティッシュの箱を震えているくくさんの横に置く。
「華夜さん...」
隼人さんが、そう口からもらした。
ひと蹴りしただけで..、こんな..。
背筋がひんやりした。
「これは驚いた...これでくくは鈴ちゃんに手出しできなくなるねっ!」
と、隼人さんは爽やかに笑う。その後、ふふ...、と華夜さんがブラックホール並みに何もかもを吸い込みそうな微笑みを見せた。
ええええええええええ!?
「ちょッッ...、ちょっとやり過ぎじゃ...!?」
と、葉太郎くんは結構、いやかなり青ざめて華夜さんの方を向いたりくくさんの方を向いたりする。
「んー..、かなり遠慮したんだけどなー」
華夜さんは、長くて、やっぱり美しい指を頬にさした。
えええ遠慮してコレ!?くくさんもう震えることしか出来なくなってるけど..!?そして何より隼人さんが喜んでるのがコワイ..。
「でしたら、もっと遠慮して頂けませんか?」
遠慮したんですかッッ!?と言いたげな葉太郎くんを遮り、菜太郎は華夜さんの瞳をじっと見つめる。
「まぁ...どうして?」
華夜さんはひどく驚いたよう。口に手を当てた。なんか、映画を観ているみたい..。
「殴る、蹴るなどはして頂いて構いませんが、...友達が動かなくなってしまうのはちょっと...」
と、菜太郎はまた天使の顔でしょぼんとしてみせた。
「...分かった。怖がらせてごめんなさい」
と、華夜さんは私の頭をポンポンと撫でた。..!!
なっ、..なんだろう..?
この手に触れられている間、とても守られているみたいに感じる..。綺麗な女の人なのに、女の人..じゃないみたい。
美しさの中に優しさがある華夜さんの表情に、ーーこの人は、女の人なのに..、ドキッとしてしまった。
「い、いや大丈夫です..!」
ままままマズイ!!ーーいや、美し過ぎると、同じ性別でもドキドキしちゃうんだな..。
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