ご指名は?1.5 22
「ボクのキュートボォオイッッッ!!!」
くくさんがボサボサだけどさらさらしている髪をなびかせ、全力疾走した。もちろん菜太郎のところに。
葉太郎くんに、
「..あり....が....と.......う.....................」
と呟き、スウさんはお兄さんに近づく。
「春、そろそろ帰ってもいいんじゃない.....」
と、スウさんが無表情でお兄さんーー春さん?の背中を押す。
「わーひどいよお弟ー」
と、春さんは棒読み。
へえ、スウさんなんか、いや、スウさんも人間だけど、お兄さんを前にすると表情が少しだけど柔らかくなって、なんか、兄弟みたい。いや、兄弟なんだけど!
「なーなー、仮にも久々に会った兄なんだからよー、遊ばね?」
と、春さんはごく普通のようにスウさんにグイグイくっつく。
スウさん、雰囲気で嫌そうな感じする..。
「春......久々ってこの前もちょっと会ったし、....」
と、スウさんの言葉をあーあー!と遮って春さんは皆さんの方を向く。
「というかあのバーさんに言われたんだ、しんこーとやらを深めろって」
と、春さんはだるそうに自分の耳をいじる。
「えッッ、そうなんですか!?」
葉太郎くんが食い入るように大きな声をあげた。ガタンッと椅子が倒れる。
春さんがぱっと耳から手を離した。
「ビックリしたあー。なんだこのちっこいのは」
と、春さんはアクビをした。
「ちょっと....ここ春の家じゃない................」
「なんだちっこいって!...あ、すみません」
と、葉太郎くんは椅子を起こし、また座る。ん...?と怪訝そうなカオをしていた。
「あ、あのぅ、バーさんって、もしかして、うちのおばあちゃんの事..ですか?」
と、手を上げて私は発言した。
「あっ、違ったらごめんなさ」
「そうだよ、あんたのおばあさん。」
春さんはニコッとした。
「あっ、そうなんですね!」
隼人さんもニコッと嬉しそうに笑う。
親好って、そりゃ私には得しかないけど、ーーいや、おばあちゃんグッジョブ!
と、心の中でガッツポーズをしたら、
「というわけでみんなで駅とか行くうー?」
春さんは気だるげに女子高生みたいなノリ。その両腕には葉太郎くんと隼人さんがしっかりつかまられていた。
「うわッッ!!」
葉太郎くんがもがくけど全然離そうとしてくれないのを間近で見て、隼人さんは笑って諦めたようだ。
「ボクチンも行くぅーーーッッッ!!!」
と、くくさんは自分を私のリュックサックだと思っているのか、私を羽交い締めにし、足でお腹あたりを締め付ける。
「あででででででででででででででででで!」
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