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宝物(小説)
太陽




本編「想いは遥かなる茶都へ」で変態瞑祥と出会った後の設定です
※ちょびっと性描写あります(R-12くらい?)










夜具の上でくたりとする静蘭を見下ろして燕青は深くため息をついた。
安らかな眠りには程遠い、どちらかというと意識を飛ばしたに近い状態。
ぐったりという言葉がふさわしい静蘭の様子に、燕青はもう一度深く息を吐いた。
これまでに激しく交わったことがないわけではない。
むしろ、夏に奇跡のような再会を果たした後は互いに何度も、求めあった。




「あれとこれは…違うよなあ…」




言い訳をするなら、燕青も感情の昂りは確かにあった。
あの男の登場に、そして潰したはずのあの組織の名前に、もしかしたら静蘭以上に反応していたかもしれない。
それでも冷静でいられたのは恐らく隣に静蘭がいたからだろう。自分ひとりならあの瞬間にあの男を切り捨てていたかもしれない。
かもしれない、を言いだすときりがなかったがそれでも燕青は思わずにはいられなかった。




「どこかで止めるべき、だったんだろうな…」




いつもの凛として涼やかな瞳は瞼で覆われ、頬には涙のあとのようなものもある。
もちろん何度も吐きだした欲望や、汗もべっとりと静蘭の全身を覆っている。
せめて静蘭の体くらいは清めてやろうと、燕青は重たい体を持ち上げた。








太陽








あの男―瞑祥に出会った後の静蘭は町にいる間は一見いつもと変わりなく過ごしていたが、どことなく違うところを見ているようでもあった。
そして宿に帰った瞬間なにかに縋るように燕青の唇を奪ってそのまま寝台へなだれこんだ。
完全に目の焦点がっていないとか、そんな状態なら燕青は間違いなく殴ってでも目を覚まさせただろう。
混乱した感情を性交で紛らわすなど、いくらか歳を重ねればよくすることだが瞑祥の件に関してはそれをしてはいけなかった。
だから上に乗る静蘭を、燕青はそっと引きはがそうとした。
優しく肩にふれると、燕青は頬に冷たいものを感じてはっと静蘭を見上げる。




「…せい、らん…?」




拒絶しないでくれと静蘭の瞳が揺れる。
静蘭の涙など、見たのはいつぶりだろうか。
静蘭自身は自分が泣いていることにも気付いていないようで、うつろな瞳はどこか遠くを見ているようだった。




「燕せ、い………お前、だけなんだ…」

「せいらん…」

「私は、お前にしか触れられたくない、抱かれたく、ない…」




ずっと昔からの、心の叫びだったのだろうか。
燕青は瞑祥を殺しておかなかったことを深く後悔した。
静蘭ほどの矜持の高い者が、力づくで体を開かされたなど、深い、深い心の傷になっても仕様のない大事だ。
しかしその精神的外傷をも出せないほどに静蘭は誇りも矜持も強かった。
そんな静蘭の本音を聞いた今。

引きはがすなんて、もう出来るわけがなかった。




「う、んっ…」




過去―瞑祥の影をちらつかせながらも、きっぱりと燕青がいいという静蘭に愛しさと、嬉しさと、ほんの少し痛ましさとを感じる。
決して乱暴にしないように落とした口づけは思ったよりも甘く、ほっとしたような静蘭の喘ぎにドクリと心臓が脈打った。




「いいのか?」




互いにもう止められないことは分かっていたが、まるで何かの儀式のように了承を取った。
こくりと頷く静蘭の首筋に顔をうずめて首筋にかみつくようにして鬱血の跡を残す。
いつもなら抵抗する静蘭も、このふたり旅がしばらく続くことが分かっているのか、何も考える余裕がないのか甘い声を上げるだけだ。
さらりと滑らかな肌を味わうように撫で上げる。
すでに乱れた服をはぎ取ると白く引き締まった体が現れる、決して女性的とはいえない、だがそれがまた逆に淫蕩に映る。



「んぅ…」




平たい胸に小さく主張する粒に触れると、噛みしめた口から甘い声が漏れる。
声が聞きたくて己の唇で開口させる。



「は、…あ」

「もう、濡れてる」



下肢に伸ばした手がくちゅっと軽い水音を立てる。
性器への直接の愛撫に静蘭の腰がびくりと跳ね、すがるように燕青の服を掴む。




「静蘭、ちゃんと俺が誰で、お前が何者か分かってるな?」




濡れそぼる下肢に口づけそう問いかける燕青。
静蘭は快感に染まった瞳で燕青を見詰めた。




「俺が誰で、お前が何者か言えたら続きしてやるよ」

「っ…んっ。お前は……」

「言えよ」




ぐちゅっといやらしい音を立てて、唾液と先走りで濡れた指を後孔に差し入れた。




「あ、ぅあ…っン」




一本といえど元々受け入れるための器官でないそこはぎゅうっと燕青の指を締め付けた。
それがまた快感に繋がったのか静蘭はただ、喘ぐ。
燕青は内心で舌打ちしたい気分だった。
”今”と”あの時”が微かに混合している静蘭。
恐らく相手が燕青なのも、自分が静蘭であることも分かっているはずなのに、声にならないのだろう。




「くそっ、あのおっさん絶対消してやる…!」

「…アっ…奥…に…っ」

「ゆっくり理解させてやるよ。だから、ただ感じてろ…静蘭」




目元に残る涙を舌ですくいながら、燕青は二本目の指を奥へつきいれた。










>>>続く

次は静蘭視点になります。

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あきゅろす。
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