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宝物(小説)
1
「一体お前は何がしたいんだ?」
懐きに懐かれて、静蘭は深く溜め息を吐いた。
大きな身体をして、まるで犬の仔のように摺り寄って来る熊男……燕青は静蘭の傍から離れようとせず、隙さえあれば静蘭に触れている。
「あーやっぱいいなぁーって」
何度目になるか判らない……髪に指を差し込まれ、ぐりぐりと掻き交ぜられた静蘭は眉を寄せた。
「──そう何度も確かめなくとも、消えたりしない」
呆れて呟いても、燕青の手が止まる事はない。
「──おいっ!」
終いには引き寄せられ、その胸の中に収められる。
「お前、なんも匂いしないのな」
「はっ?」
確かに務めがら常に身は清潔を保ち、香を焚きしめたりする事はない。
だがそれが、何だと言う?
「触ってるだけじゃまだなんか、物足りないっつーか……」
髪に顔を埋めた燕青は、次いで鼻先を静蘭の首筋に埋めた。
「なっ‥」
擽ったさに驚いて身を引くより早く、燕青の口唇が音を立てて首筋を吸う。
「やっ‥めろっ」
「やだ」
子どもが駄々をこねるが如く呟きながら燕青の口唇がゆっくり肌をなぞる。
燕青の腕に絡め取られたまま、長椅子の上に倒れ込む。いつの間にか片手は衣をたくし上げ、片手は腰に回されていた。
露になった胸元に口唇が寄せられ、熱い舌が触れると声にならない声を上げ、静蘭が身を捩る。
「あ、ここ気持ちいい?」
静蘭の鋭敏な反応に燕青が笑う。その間も手は胸元をまさぐりながらその小さな尖りを抓み上げ、腰を撫で上げ、静蘭が少しづつ息を乱し始めるのを愉しげに覗き込む。
だが潜り込んだ手が濡れた音を立てる頃には燕青自身も息を乱し始めていた。
「……やぁらしい匂いがする」
「馬鹿め……」
静蘭は小さく呟き、躊躇う事なく己のものに顔を埋めた燕青の髪に指を絡ませる。
ぴちゃり…と響く、低くぬめった音が耳を犯す。淫らに絡められ、舐め上げられる度に息を荒げた。
「っ! はっぁっ‥!」
小さな呟きと共に静蘭が身を震わせ、身体ごと腰を跳ねさせた。
「……無理。俺もう我慢出来ねー。なぁ、いい?」
顔を上げた燕青は熱を帯びた瞳を静蘭に向け、せっぱ詰まった声で訴える。
「……我慢しろと言ったらする気はあるのか?」
「ん〜? ない」
その即答に、静蘭は苦虫を噛み潰したかのような表情を浮かべた。
「‥なら聞くなっ」
静蘭がそう怒鳴り付けたのを合図に、燕青がその足を掴み広げさせ、その奥を露にする。
再びぬめった音が響き、時折荒く息を乱す静蘭の、小さな喘ぎが混じる。
潤びらかす舌先に、指先が加わる。ゆっくりと進められる指先に、静蘭はその身を何度もくねらせた。
「んっ‥えんせ‥っ」
限界を訴えるように名を呼ばれ、燕青は更に静蘭の足を引き上げた。
大きく開かれた両足の間に燕青が自分の身体を割り込ませる。
「ちょこっと、ごめんな」
十分に慣らされた箇所でも負担は掛かる。受け入れる辛さに眉根を強く寄せた静蘭を宥めるように、燕青は額に頬に何度もくちづけを落とす。
「くっ‥」
「もうちょい…」
ぐっと身体を押し進めた燕青が静蘭を強く抱き締めた。
「セイ…」
確かめるようにその手が静蘭の髪に、頬に、身体に触れる。
「……消えたりしないと、言っただろう」
その仕草に静蘭が呆れたように呟く。
「だってあれから何年も経ってんのに変わらず綺麗で、匂いもしなくて……人形みてーなんだもん」
でも…と燕青が笑う。
「いるな、お前……ちゃんと此処に」
呟きと共に燕青はゆっくりと律動を始める。
「ちゃんと触れて、ちゃんと匂いもする」
腰が揺らされる度息を詰める静蘭を、燕青が覗き込む。
「ちゃんと感じて、ちゃんと感じる──」
「んっ‥ん──っ!」
突然激しく打ち揺すられ、思わず伸ばした手は燕青の肩にすがりつく。
肌が隙間なく合わされば互いの高ぶる熱を感じ合う──二人は固く抱き合ったまま、何度となくその熱を貪りあった。






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あきゅろす。
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