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夢幻の唄
お互いの逆鱗−其の二
「だー!れー!かー!たー!すー!けー!てー!!」
 先に動いたのはその子だった。
 力いっぱい叫ぶその子の姿を見てあたしは我に返った。

「ぼ、僕、あたしは怪しい人じゃないんだよ。僕とちょっと話しをしたかっただけなんだよ」

 どもりながらしゃべるあたしを見てその子は一瞬、泣くのを止めた。

「…ほんと?おばさん?」

 ………!夢幻の唄のためだ。おばさんの単語に反応しそうになったあたしは自分にそう言い聞かせる。
 苛立ちを押さえながらその子の泣きやむのを待った。
 そもそも泣いてしまったのは私の怪しさが大きな原因ではなく、恐ろしい表情がいけなかったんだ。
 今の所はいい感じではあるんだ。表情だけは注意しよう。
 そんな事を考えている内にその子は泣きやんでいた。

「僕はなんて名前なのかな?」

「レヴィン・エスペラーだよ。おばさんは?」

 …このガキ、あたしを試しているのか?いや、表情は注意しよう。

「お姉ちゃんはねリリー・ペディグリーっていうんだよ。そういえば、レヴィン君の隣りにいる青いうさぎみたいなの珍しいね。どこで見つけたの?」

 そう一番聞きたかった事をあたしは聞いた。
 夢幻の唄自体が夢幻獣に似た存在なのではないかと、あたしは推測していた。
 あたしの推測が正しければ、夢幻獣を見つけた場所に似た所に夢幻の唄があるかもしれない。
 探す場所もかなり狭まる。
 あたしは気持ちを高ぶらせながらその答えを待った。が、レヴィン君は何故か口を閉ざしてしまった。

「どこで見つけたか教えてくれる?」

 あたしはもう一度聞いてみた。そして、レヴィン君はそれまでのあどけない態度を一転させた。

「…お前もこのうさぎを狙いにきたのか!」



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