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ユキダルマ
おひさまに会えたらさようなら。


胴体と頭

寸胴なからだ

泥だらけで真っ黒で

頼りない枝の手と、

足なんか無いから

ずっとここから動けない。


凍えてるのは

この天気のせいばかりじゃないんだ

きっと、ボクは

この芯まで凍えて

それで形を保ってる。

小さな手を凍えさせて

ボクは生まれる

ごめんね?寒かったろう?

そんなに赤くなって、痛いだろう?

早くおうちの中であったまりなよ

ボクはここで

灰色の空をずっと見上げてるから。


冷たい二つの球体

不ぞろいの、不恰好なボク

動けないんだ

ここから。一歩だって。

氷点下のここでしか

ボクは保っていられない

ほら、だんだん

崩れているでしょう?


良かったね。

春が来るよ。

きみは嬉しそうだよ。

もう手を凍えさせることも無いよ。


おひさまが出たよ。

ボクはここに居られないんだよ。

動くことも出来ないから

だから。


泥だらけの醜い塊

そんな痕跡すら溶かしていって

ああ、春だね。


さようなら、ボクは

ここに居たことも忘れられる存在。



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あきゅろす。
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