短編集
其の3
「私は、お前達の気持ちが理解できない。だが、理解しようと努力はする。本当のところ、私は……」
そこで、無理矢理言葉を止める。それ以上は、言ってはいけないと思ったからだ。リゼルは視線を逸らすとレスタに語りかけるように囁く。隠すことのない、本当の気持ちを――
「戻ろう。今は無性に、皆の顔を見たい」
「……御意」
一度、湖を振り返る。世界を壊そうとしている人間に、妙に興味をそそられる。それがどうしてなのかは、リゼルにはわかっていない。それを知るのは、もう少し先のこと。人間がリゼルの意思から反れた時期に。
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