空白と空虚 12
佐助と出会ったこの街は所々懐かしい箇所を覗かせているが、
政宗が暮らしていたあの頃とは変わってしまっている。
(そりゃ、15年も経ちゃ変わるよな………街並みも……人も………)
政宗は歩きながら左眼だけを動かして様子を伺っていた。
怖いものなど何もなく、肩で風を切って進んでいたあの頃………
直感だけで突っ走り、暴走が過ぎるようなら引き止めてくれた力強い手。
周囲の風当たりの強さも和らげてくれた頼もしい背中。
常に目を掛けてくれ、こちらに向けた穏やかな微笑み。
何より、安らぎと居場所と快感を与えてくれた腕の中………
(今は何がある………?)
街に吹く夜風が思いの外冷たく、
今ここにいない人を想い、心淋しくなっている政宗を余計に刺激した。
欲することは我儘であり、贅沢なのだろう。
頭の片隅では分かっていても感情は抑えられない。
自分を憶えていて、迎えに来てくれただけでも満足するべきか。
しかし、こんな想いをするくらいなら、過去の思い出のままであった方がマシだったのかもしれない。
15年という空白を埋めるように、
人目をはばからないくらいに求めたい。
そして、求めて欲しい………
けれどあの頃よりも臆病で、保守的になっている。
互いに歳を取ってしまったのだ………
意味がないと分かっていても、離れていた長い歳月を政宗は後悔した。
「このまま1人でいたら、気が変になる………ッ」
今にも泣き出してしまいそうな衝動を抑え、
目的の場所に目当ての人物がいるという保証はないのに
自然と歩く速度が上がっていた。
「─────ぁ…………」
政宗の視界に入ったのは、見覚えのある灯りだった。
会えるかもしれない
そんな期待が膨らみ、政宗は足早にその建物に近寄った。
「────………え?………もしかして、政宗様ッ!?」
長い年月経っても変わらない顔が政宗に気付き、声を荒げた─────
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