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四月馬鹿小説
ガイが女になりました
「おっそーい」
食堂のテーブルをトントンと不機嫌そうに指で叩きながら、アニスは頬をふくらませている。
「またルークが寝坊でもしているのでしょうか」
「でもそれなら大佐は構わずに先に降りてくるはずだわ」
「何かあったのでしょうか」
イオンは心配そうに視線を二階へと向ける。
数日滞在している宿の部屋割りは、いつものようにイオンとアニス。ナタリアとティアでそれぞれ相部屋。そして男性陣で一部屋という形をとっている。
普段であるならば、この食堂にはジェイドが真っ先に来て、優雅に朝の紅茶を口に運んでいるはずだ。
それから次々に女性陣がテーブルに座り、一番遅く姿を現すのは二人。髪の一部がまだ乱れたままのルークと、苦笑いしながら遅くなったことを詫びるガイ。
それがいつもの朝の風景。
だが今日は、前夜どれほど遅くなろうとも、決められた朝の時間を忠実に守るジェイドがいまだに姿をみせない。
空腹で不機嫌になっていたアニスの顔にも、不安の影が差し始める。
「様子を見に行きましょうか」
イオンの言葉に、女性陣は皆頷くと、弾かれたように席をたった。


二階の角部屋の扉をティアが叩く。
「大佐」
「鍵は開いてますよ。どうぞ」
部屋の中から聞こえた言葉に、皆が顔を見合わせる。
何か起こった事は間違いないが、ジェイドの声音はどこか面白がっているようなものだった。
またルークが何か…とティアはふうっとため息を吐きながら、ノブを回す。
と、同時に
「うわあああ、やっぱ、無理!!無理だ、これ、だって、うわああああ」
聞き覚えのない女性の叫びが、どうやら浴室の方から聞こえてくる。
その前で「な、なにが、無理なんだよ。頑張れよ」とルークがそわそわと落ち着かない様子で扉の先の人物に叱咤激励を送っている。
その場を少し離れたジェイドが腕を組んで、愉しげにその様子を眺めている。
事情がつかめずにティアたちはポカンと佇む。
「え、誰?」
第三者の声にアニスが訝しげに眉を寄せる。
「ルーク、だ、だって、下むいたら、お、お、おっぱいがあるんだぞ!!」
「それ、すっげえ羨ましいんけど」
「アホか!こっちはシャツのボタンすら、とめられ…うわあああ!!!ふ、ふ、ふ、ふれた、おっぱ、いにふれた」
「くっそー、なんだよ、それ。おっぱい触り放題じゃねえかよ」
浴室の扉越しに交わされる、ルークと、もう一人の女性とのやりとりに、ティア達は?マークが飛び交っている。


やれやれと肩をすくめて「男性でも女性でも俯向けば自分の胸部を目にするのは当然のことでしょう。それくらいで大騒ぎしない」と場の空気をそっちのけで言い放つジェイドにルークが
「胸とおっぱいは違うんだよ!!」と振り返って青少年らしく反論する。
その時、ルークの視界にティア達の姿を目に入る。
「丁度よかった。お前ら、ガイの着替え手伝ってやってくれよ」
ルークの言葉にティアとナタリアは目を瞬かせ、アニスが「はあ?」と素っ頓狂な声をあげる。
「あいつ、朝起きたら女になったみたいでさ。トイレ行くのも大騒ぎ、着替えも、ほら、見ての通りシャツのボタンひとつ留めるのにも大変でさあ」
「……………ええええええっ!!!」
一呼吸おいたあと、女性陣の絶叫が轟いた。



*********

「あー、もう朝かあ」
あれ、とまず本人が違和感を覚えた。
寝起きの声が妙に甲高い。まるで、女性のような。
ガイは、ばっと勢いよく上半身を起こし、周囲を慌てて見渡す。だがそこには女性の姿はない。
安堵のため息をついて、苦笑いを浮かべながら後頭部をがりがりと掻く。
その時、支度を既に整えていたジェイドから声が掛かる。
「おはようございます、ガイ。ところでその胸はどうしました」
「は?胸って、胸はむ…………え、あ、あれ。……う、うわああああああ!!おっぱいがある!!」
「え、おっぱい?おっぱいがどこに?」
おっぱいの単語に反応し、いつもはギリギリまで眠るルークが飛び起きた。
「ほら、あなたのベッドの隣に」
「え。…………ガイ!!ガイにおっぱいが!!おっぱいが!!」
「下むいたらおっぱいが!!!」
慌てるガイとルークに、やれやれと呆れのため息をつきながら、ジェイドはつかつかとガイのベッドに近寄ると無言で手を延ばす。

むにっ

「ぎゃあああああ、ふれた、うわああああ」
ガイの絹を裂くよな絶叫と、ルークの詰る声が重なる。
「ジェイド!!なに羨ましい事やってんだよ!」
「いえ、詰め物か何かをして私を騙す作戦かと思いましたが、どうやら本物のようですね」
「だ、だ、だ、だからって、まず、触るか?この俺だって、まだ直視できないのに」
「なんで!ガイ、こんな機会でもないとおっぱいなんて拝めないぜ」
「下はどうです」
「……下って?」
こわごわとガイが尋ねると、ジェイドはにこりと笑い返す。
「言わせますか?なら私がまた触って確かめましょうか」
「い、い、いや、大丈夫。俺が自分で確かめる」
そう言ってがばっと布団を頭までひっかぶる。その塊がごそごそと動いた後、ピタリと動きが止まる。
それから再びごそごそとした後、顔だけ出したガイが「…ない」と顔を真っ青にして零す。
「……上はあって下がない。それって、え、ガイ、女になったのか!」
「らしい」
「幸いここはベルケンドですし、着替えを終わらせて検査に行きましょうか」
「検査……」
すごい勢いで頭を振るうガイに、ルークが「でも原因わかんねえと困るだろ」と諌める。
「だっておっぱいがあるんだぞ!!」
「そうか、やっぱり検査っていうと、おっぱいに聴診器とかあてられんのかなあ」
ルークの口調はガイへの心配よりも、医者への憧憬の色が強かった。
「……検査は音素変化ですからなにも聴診器をあてるような事はしませんよ。そして先ほどからの女性胸部の俗称連呼はあまり好ましくないとおもいますよ」
「だって、こう、いきなりおっぱいボイーンなんだぜ。ガイも俺も驚くだろ。びっくしりて言いたくなるのも仕方ないだろ」
顔を真赤にしながら自分の胸の前でなだらかな曲線をえがくような仕草をするルークと、こくこくこくとルークの言葉にただ頷くガイをみて
「これだから童貞は」と言いたげな憐憫の混じった視線をジェイドは向けた。
「まずは着替えていらっしゃい。さすがにここではルークの目の毒でしょうから、浴室でどうぞ」
「おっぱいは別に目の毒にならないぞ」
逆に保養じゃん、と言葉を重ねるルークにある意味憧憬の念を抱きながら、ガイは着替えを手にする。
その前に、と立ち寄ったトイレでも騒ぎに騒ぎ、浴室でパジャマを脱ぐだけでも大騒ぎ。
初めは事態を面白がっていたジェイドもさすがに辟易してきた頃、ティア達が扉を叩いたというわけだった。



************


「なんでこうなったのかわからないんだ」
椅子に項垂れて座るガイは、確かにガイなのだが、全体のフォルムが違う。
女性たちの手を借りるというルークの提案は、ガイの「それも無理!!」と泣き言をいったので、普段のシャツは早々に諦めルークの黒のインナーを借りる事にした。
それ以外はいつものガイの服装だが、気恥ずかしいらしくバスタオルを上半身に纏わせている。
「とりあえず検査に向かいましょう。さ、立って」
「バスタオルはとれよ。あ、砂漠越えで使った外套着ればいいじゃん。あれなら身体をすっぽり隠すし」
そういうとルークは荷物を漁り、目当てのものを取り出すとガイに差し出す。
「ほら」
じり
「……ほら」
じりじり
「おい、ガイ。ふざけんなよ」
「うわあああっ」
ルークが外套を渡そうとすると、椅子から一歩下がり。ルークが一歩踏み出せば二歩下がり。
しびれを切らしたルークがガイの腕をつかんで渡そうとすると、悲鳴をあげて近くにいたナタリアの背後に隠れる。しかもブルブル震えて。

「まあ」
「あれえ」
「おやおや」

「ふふ、いつもと逆の光景ですね」
イオンが穏やかに微笑む。
その背後でアニスとジェイドがニヤニヤ笑い合う。
「あれぇ、大佐どういう事です?女になったら女性恐怖症なくなって男性恐怖症になったようですよ」
「先程ガイの胸に触れましたが、あの拒絶反応は恐怖症によるものだったのかもしれませんね」
「ちゅーか、それって、ガルディオス家断絶フラグじゃないですかあ」
「恐らくご先祖様が大切なお皿を割ったメイドを手打ちにして井戸に投げ捨てたんでしょう。その恨みが今ここに」
「幽霊の怨念こわーい☆」
「大佐、アニス!!滅多な事は言わないでください。だ、だ、第一ガイがかわいそうでしょう!」
幽霊話にいち早く拒絶を示すティアと、ナタリアの背後でガタガタ震えるガイが「好き勝手言いやがって。第一ホドに井戸はないからな!」と抗議の声をあげた。
「でも面白いですねえ。性別が転換すれば恐怖症対象の性別すら変換する。ふむ、興味深い。検査は私がやりましょうか」
「いやだ!!あんただけは絶対いやだ!」
「キャハ、大佐ふられちゃった」
「残念ですねえ」
と、ちっとも残念がってない様子のジェイドが肩をすくめる。


「でも、なんだかこそばゆいような感じですわ」
クスクスと嬉しそうに手を口元にあてながらナタリアは小さく笑う。
「ああ、そうだねえ。ナタリアはガイからずーっと逃げられてばっかだったのに、今は背にがっしりへばりつかれてるもんね。
ルークはどんなしんきょ……ちょ、ルーク、なんて顔してんの」
「え、あ」
アニスの声で、はっと我にかえったようで、手にしてた外套をアニスに渡す。
「ガイに渡してやってくれよ。俺じゃ、だめ、みたいだし」
しょぼんと肩を落とすルークに、アニスは気遣わしげに眉を顰める。
「ちょ、ルーク。これくらいで半泣きにならないでよ。これ、いっつもの光景じゃん、逆になっただけでさ」
「……う、うん。わかってんだ。わかってんだけど、さ。こうやって拒絶されると結構堪えるもんだなあって」
はあ、っと腰に手をあててアニスはため息をこぼす。
「ナタリアなんか10年以上あんな態度とられてもめげなかったんだよ。ルークも男ならしょんぼりしない。ほらっ」
ばしっと肩を叩かれ、ルークも俯きながら頷く。
その時、何かが近づいてくる気配に、ゆっくりと顔をあげる。
「だ、大丈夫だから、な」
こわごわど震える手が先ほどアニスから叩かれた肩に置かれる。
「が、ガイ…っ」
「ありがとうな、ルーク。いろいろ、気をつかってくれ―――――」
「ガイーッ」
感激したルークがガイの身体にぎゅうっと抱きつく。


近場にいたアニスが、あちゃあ、と声を漏らす。
少し離れた所でその様子をみていたイオンは隣にたつジェイドに微笑む。
「いつもの光景ですね」
「ええ、ガイは泡吹いて失神寸前ですし、ルークもさり気なさを装ってガイの胸に顔をうずめてますが。ある意味通常運転といえるでしょうね」
「ところでベルケンド研究所の医師はシュウをはじめとした男性しかいませんが、ガイは大丈夫でしょうか」
「………そういえばそうでしたねえ」
さすが幸運スキルの低い男、いや、今は女か。とジェイドは胸の中でひとりごちた。




夢オチにしようかと思いましたが、さすがにそれは…と思ってやめました。
おっぱいおっぱい煩いルークとガイですみません。
でもガイは誰の目もなかったらそっと自分の胸触りながら「ティア未満ナタリア以上かなあ」とどっか冷静に考えてそうだ
初めての女体化話でした(でも全然生かされてない


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