四月馬鹿小説 熱帯夜 ※現パロ ガイが貧乏大学生一人暮らし設定 うだるような熱帯夜だろうが、構う事無くルークはガイに抱きついてくる。 そのくせ「あちぃ。ガイ、クーラー」と文句を言ってくる。 「俺んちには扇風機しかないの知ってるだろ」 生ぬるい風を送る扇風機は、昭和のテレビドラマでみた青い羽のちいさなもので、横にしか首を振らない。 「うー、仕方ねえな」と口を尖らせながらも、抱きついてくることはやめない。 ルークがあっさり引き下がったのも、バイド代はたいてベッドをシングルからセミダブルに買い換えたせいで、エアコンを買うお金がないのを知っているからだ。 ほんの一時間前まで深く激しく抱き合い…………まあ、その色々とやったせいで汗をき、そのまま狭い風呂場に直行して汗など諸々の体液を流した。 少しぬるめのシャワーのおかげで、風呂場から出た時は爽快だった。 閉めっぱなしだった窓もあけたので、微弱な風が部屋を通り抜けて心地よかった。 倦怠感もあり俺はベッドに早々にあがる。 ルークは扇風機の前に鎮座していた。 暑がりのルーク。 上半身は裸のままで扇風機の風を独り占めしている。 しょうがない奴だなあ、と思いながらも、顔は正直なようでつい口元が綻んでしまう。 身体の倦怠感に引きずられるようにまぶたが重くなっていく。 半ば眠りに落ちようとする俺の耳に、ぎしりと大きくベッドの軋む音が届く。 「この部屋、あちー」 そう言いながらルークの腕が俺の身体に回され、背にぴたりと張り付かれる。 「しょうがないだろ。夏は暑いんだ」 背の温かさで眠気はひとまず収まった。 「んな言葉聞きたかねえよ」 「やっぱりベッドじゃなくてエアコン買うべきだったな」 「…………ガイの寝相が悪いから、ベッドで正解だったって」 「俺のせいかよ」 「お前のせい」 そう言うと回された腕がぎゅっと力を込めてきて、ますます密着する。 暑い暑い、を繰り返しながらも、ぴたりと身体ははりついたままだ。 ルークは家に戻れば、大きな屋敷のなかで快適な温度で、熱帯夜に悩まされることもなく眠りにつけるだろう。 でも戻ってほしくない。 暑くてたまらないが、それでも身体を密着させて、ルークの吐息を背で受けると、ほっと安堵する。 時計の針が丑三つ時を示す頃には、窓からの風が冷涼なものになっていく。 快適さを感じるよりも、上半身が裸のままのおこちゃまの身体の心配が先に立つ。 腕から逃れてベッドから下りると、まずタオルを濡らして絞る。べたりと俺にはりついていた前面の汗を拭ってやる。 それから背中に幾筋も流れる汗を拭い去ると、タオルケットを肩までかけてやる。 すうすうと幸せそうに眠るその顔を眺めていると、じんわりと幸せが心に広がっていく。 汗ではりついた髪をはらってやる。 するとルークは小さく身じろぐ。 「……ん?」と、目は瞑ったまま、眉を寄せている。 腕が何かをさがすようにシーツを動きまわる。 「んー?んー?が、いー?」 寝惚けてるのか、それとも自惚れていいのかわからないが、どうやらルークの腕は俺をさがしているようだ 刺激しないようにゆっくりと寝台に身体を滑り込ませると、彷徨っていた腕ががっしりと俺の身体にまわされる。 本当に寝ているのかと疑いたくなるような、その力の強さに首を捻って背後をみると、また無邪気にすうすうと眠るルークの顔がある。 ルークの体温と、そしてそれ以上に熱い愛に包まれて、ガイは再び眠りにつく。 終 これもナナさんに個人的に押し付けた話です 書いたの春なのになぜ熱帯夜の話にしたのかも謎ですが 寒くても暑くてもベタベタくっついてそうだなってのがルクガイのイメージです 小話3TOPに戻る TOPに戻る |