雲珠桜は夏に彩る
刺客は誰の背に
「もう、何であんなに怒るのかな」
「しかし十代目!あの男は一度貴方に手をかけて…………っ!」
「それも作戦のひとつだって言ってるじゃん。それに俺、死んでねえし」
「…………ねえ、山本。段々ツナの仮面剥が
れてきてない?」
「きてるのな」
あれから急いで正一君の家を離れてきた私達だったが獄寺はずっとあんな感じで納得いってないみたいだった。ずっとツナに対して意味のない抗議を続けている。
私はというと、獄寺に「お前に敬語を使われんのは気持ちわりぃ」とかなんとか言われちゃったので、普通にタメで隣の山本と楽しくお喋り。ランボは…………まだ少しぐずりながらもちゃんと泣き止んで私の隣をピッタリ歩いている。
なんと言うか…………やはりランボはこの年になっても母性本能を擽られるものがある。
それが吉と出てるか凶と出てるかは別としても。
「さ、着いたよ」
目の前にそびえ立つ豪宅に指を指す。雲雀宅だ。そして私の今の『家』。
ちょっと口角が上がってしまうのは…………重症だ。
「十年前でもやっぱり雲雀ん家はスゴいのな!中はどんなんだ?」
ほお…………と額に手を当てて驚く山本。
「あれ?もしかして入ったことない?」
「あのな…………普通誰も雲雀んちは入ったことねえだろ。あの雲雀だぞ?」
「まあ………言われてみれば」
「ま、一回忍び込んだことはあるけどな!」
「!?」
や…………山本。今なんと?
まさかの爆弾発言。
「んーとたしか…………中三だっけか?」
「ああ………あの命懸けの奴ね」
ツナが思い出したようで、ハァ…………とため息をつく。あまりいい思い出ではないようだ。
…………何となく想像はつくけれども。
「それでどうなったの?」
ドアノブに手をかける。外の風が冷たかったのでドアノブも冷えきっていた。
カチャ、と回すとドアはすんなり開く。
「確か………何とか忍び込んで、二階の窓から入ろうとしたんだよな。それでいざ、部屋を見たら…………」
「…………」
「「「「「…………」」」」」
バタンっ!
ドアは勢いよく閉められる。
「閉めちゃった」
「あん時も確か…………部屋に物凄く不機嫌な雲雀がいたのな…………」
「ぼ…………ボンゴレっ!お、鬼が!」
「………あれは鬼というより鬼神だと思う」
「十代目、そういう問題じゃないと思いますが…………」
「だって後ろになんか凄いオーラ見えたんだもん」
皆が皆、顔を見合わせる。
ドアの先には…………いや、みなまで言うのはよそう。
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