雲珠桜は夏に彩る 気まぐれ09 「それでさ…………」 「えっ、それ本当!?」 「マジマジ。その時スゴかったんだって」 他愛のない会話。私達はそれを喫茶店でしばらく楽しんでいた。些細な事から驚くべき事。何でもすぐ口に出していたから、お互い……と言うかツナは話が尽きず、ヴァリアー戦の裏話等を聞いていると、かなりヒートアップするものがあった。 「あはは!…………はー、結構話したね」 「うん。こんなに話すのなんて久しぶりだ」 「そうなの?あ、そう言えばさ」 「?」 はは、と笑いながらツナに訊ねる。 手元のケーキは既に空っぽで、紅茶の方も底が見え始めていた。 「獄寺……さん?達が来るのって、何時くらいなの?そろそろ夕方だけど…………」 ユカは腕時計の針を見ながら訊ねる。ツナは少し冷えてしまったコーヒーを啜りながら答えた。 「えっとね…………5時位かな?」 「ふーん、5時…………ん?」 ツナの言葉で体が硬直する。 それを見たツナは何事か、と自分の携帯を取り出して開いて………同じように固まった。 「ユカ…………」 「ツナ…………」 お互い顔を見合せる。 時計に表示された数字は、さっき示された時間より、十分ほど前だった。 二人は一気に血の気が頭から引いていく。 「い………急がないと!」 「あ、ああ!」 私は慌てて私の隣に置いておいたバックを掴む。慌てて立ったので、思わず足が縺れそうになった。 「あたっ!」 「ツナ、こんな時に転ばないでっ」 「ご、ごめん」 私達はテーブルに置いてある食器もろくに片付けもせず、急いで店のドアをくぐった。 [*前へ][次へ#] |