雲珠桜は夏に彩る 気まぐれ08 サクッ………… ケーキを切る音と、フォークがお皿に当たる音が小さく鳴る。私とツナは二人席の所に向かい合って座っていた。私は気付かれない程度にツナをちらっと見る。 コーヒーを飲むツナの姿は、私の知っている14歳のツナとは全然違う動きをしていた。 コーヒーはブラックで飲んでいるし、その飲む動作が上品と言うか………気品に溢れているように見える。ついでに、今、目の前に居るのは男の人だと何となく意識してしまう。 10年経つだけでこんなにも違う。 それともこの違いは月日ではなく、ボンゴレのボスになったことで変わったのだろうか? 気付いたら私はツナをガン見していた。 「………何?どうかした?」 「!ううん。なんか………ツナも大人になったら変わるんだなぁって」 ツナがこちらの様子を窺っていた。それも当然だろう。私がずっとガン見してしまってたのだから。 「ははっ、何それ?」 「いやー…………正直14のツナって可愛かったじゃん。弟みたいな感じで。いや、むしろ弟にしたいぐらいだけど」 「ふーん」 本人目の前にして言うの、なんだけど。と笑う。ツナの眉がピクッと動いたのは勿論気付いていない。多分、ツナも気付いていないのだろう。 「でも………今のツナは男の人って感じ?」 「男だよ。何で疑問系?」 「うーん…………何て言うか…………」 いつものツナに男らしい部分が出てきて…………それでも可愛いし。 さっきみたいなあの女の子にするような扱いに慣れてるし…………さりげなくツナ、かっこいいことしちゃってるような? 「む………こんがらがってきた」 「なんだよ、それ」 「まあつまり、ツナも大人になるんだなってことだよね!うん」 「変な締め括り方だな」 「しょうがないじゃん。私だってこんがらがってんだから」 そう言ってム、と唇を尖らせれば、ツナも苦笑のような笑みで笑われた。 でもユカは気付いていない。と言うか忘れている。このツナは…………「読心術」を使えると言うことを。勿論、ユカが悩んでいる間、ずっと読まれていたことを。 ツナはユカにバレないよう、こっそりと微笑んだ。 その後しばらくユカ達は、何てことないような会話をだらだらと続けていた。 [*前へ][次へ#] |