雲珠桜は夏に彩る 気まぐれ01 「…………もっといいリアクション期待してたんだけどなぁ」 一人、青年は残された部屋で頭をぼりぼりと掻く。 ちょっとイタズラのつもりで、雲雀さんが部屋を出て行った後、忍び込んで彼女が起きるのを待っていたのだが…………つい、眠気に誘われてうたた寝してしまった。おかげでこのドッキリもおじゃんだ。 ツナは再び布団に音を立てて体を預けた。 「十年経ってもこの反応って…………なんか笑っちゃうな」 はは…………と唇の間から苦笑が漏れる。 あの時の俺は全く気がつかなかった。 そしてこっちに来て…………俺じゃやっぱり駄目なんだなぁと、あの二人を見ていて思った。二人が話す姿を見てそう確信した。 「ま、本当に相手を必要としてるのは雲雀さんの方なのかも知れないけど」 いいんだ。この気持ちはどうせもう十年前に吹っ切れている。 そう………… ユカが居なくなったあの時から。 (にしてもユカが最後に言った台詞…………ユカは俺の母さんかよ) [*前へ][次へ#] |