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雲珠桜は夏に彩る
大空の本音06








コンコンッ。



私は一つのドアの前に立つ。足の裏から床の冷たさがじんわりと伝わってきて、何も履かず素足できたことに少し臍を噛んだ。
ドアを叩くと木の乾いた音が廊下に響いて
奥から私の知っている声よりちょっと低くなった声が聞こえてきた。




「はーい。ユカ?」


「うん、私。……入っていい?」


「どうぞ」





許可をちゃんと得て、ドアノブを捻る。
見慣れているはずの部屋は、私の目の前で微笑んでいる人物がいることによって、少し違和感を感じた。



いくらツナとはいえ、大人の男の人がいる部屋に入るのは躊躇するなぁ………。





招き入れてもらった部屋にちょこんっと小さく座る。あまりにもツナが自由に寛いでくれているので、一瞬他人の部屋に来たんじゃないかとまで錯覚した。
目の前に居るツナは草壁さんから借りたTシャツを着ていて、サイズは………ちょっと大きめみたいだ。

部屋にあった本を読んでいたらしいツナはうん?とこちらに目線を向けた。





「どうかした?」


「いや……今更なんだけど、今居るのは大人のツナなんだなぁって」





何か変な感じ。


そう言ってハハッと笑う。
そうするとツナは手に持っていた本を静かに閉じる。ふとこっちを向いた。





「はは、本当に今更だね。……でも俺も変な感じだよ。今こうしてユカに会えてるんだから」


「そう?……私ね、正直ツナは結構変わっちゃってるんじゃないかって思ってた。でも変わって無いところもあるし…………変な感じではあるけどなんか懐かしいとも思えるし」




ん?あれ?どっちなんだろう?


私は首をかしげる。自分で言ってることが無茶苦茶になってるような。





「ははっ、ユカらしいや」




そう言ってツナは綺麗に笑った。




「ユカ、何か用があったんじゃ無いの?」


「あ、そうだった」





ツナに言われて思い出す。大人のツナと向き合うと、話したいことが頭の片隅で泉のように湧き出てきてしまったので、目的を忘れてしまっていた。折角雲雀さんの目を盗んで来たって言うのに。
でもいざ、聞くとなると。


私は口を閉じる。
自分の判断ではどこまで聞いて良いのかよく分からない。そんな私を見て疑問を感じたのかツナは私の顔を覗き混んできた。





「ユカ?………言いたいことあるなら何でも言っていいんだよ?」





気遣うようなツナの目。
…………ああ、ほら。こんなところは全然変わってない。



私は意を決す。









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あきゅろす。
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