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雲珠桜は夏に彩る
結局運命というものは03







結界が破れた音が、耳に劈く。………と、同時に結界の外に投げ出される自分の身体。私は一瞬、宙に浮いている感覚に死んだものと勘違いをしかけた。それほどまでに、ユカの身体からは根こそぎ力が奪われていた。

自分が生きていると感じることができたのは、宙に投げ出された私の身体をこれまた見事に空中で抱きかかえるように受け止めた雲雀さんのぬくもりを感じたからだ。私の腰に雲雀さんの腕が回ったかと思うと、落とさないという意思なのかギュッと私のことをつかんでくれていた。それに何と優秀なことに、無事脱出していたビジェットとコルルが一度地面に着く前に雲雀さんの足の踏み場になってくれたおかげで、私には何の衝撃も与えずに無事脱出することができた。





「恭弥、ユカ!二人とも無事か?!」


「うるさいな。見ての通りだよ」


「………う、」


「!ユカ」


「だ、大丈夫………」





私の身体をいたわる様に、雲雀さんはすぐに木の傍へ私を運んで横にならせてくれた。そこに比較的動けるディーノさんが駆け寄ってきてくれる。いつもみたいな笑顔ではなく、真剣な、でも心配をかけてしまった様な複雑な表情でこちらに駆けてくるのが見えた。
私は薄くいつもの様に言葉を発すると、横の雲雀さんからは飽きれた様な溜息。
………確かに今回ばかりは大丈夫、ではないのかもしれない。だけどとりあえず生きてはいるので、それでいいと軽く苦笑すればまた、雲雀さんからは呆れた声を聞けた。

実際、結界の中と外とでは、身体にかかる負担が全く違った。今は全く動かないが、身体が軽い。ここと比べると、結界の中は本当に拒絶されているような感覚だったと今ではそう認識出来る。
………あと一歩でも遅かったら、私は。





「!雲雀さん、腕………」


「?………ああ、問題無いさ」


「そんなわけ、ない」





雲雀さんの結界を破った腕からは血が垂れていた。何でもないふりをしているが、その腕かぶらぶらとぶら下がっていることから筋肉の筋を痛めたか切ったかぐらいしたのかもしれない。もしかしたら骨に異常があるのかもしれない。
それもそうだ、白蘭の予期せぬ攻撃やあの結界を一人で、しかも私を抱えながら片手で破って見せたのだ。しかも二人と二匹が通れるほどの大きさの。

私がその腕を見て罪悪感に駆られ、そして酷い顔をしていたのだろう。雲雀さんが本当に大丈夫と言いたげに、もう片方の手で渡しの頭を軽く撫ぜた。
今の私にはその優しさが嫌というほど心に染みていく。心も実も疲れ切った私の身に、凄く染みていく。他に考える事が沢山ある筈だったけれど、所詮私はみんなより年上だったとしてもまだ小娘だ。社会もまだろくにでていない、ほかの人の助けを得ないと生きていけないような、そんな小娘。

先程まであんなにユニのことをどうすればいいか考えていたのに、今はただその雲雀さんの優しさに甘える様に、彼のボロボロになった学ランの裾を掴んだ。そして、私の弱さの表れのように目から涙が溢れてきた。





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あきゅろす。
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