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雲珠桜は夏に彩る
こんなはずじゃなかった08







「ツナ。お前は白蘭を倒さなきゃなんねーんだ」


「ぷっ、このご時世に「ねばならぬ」のど根性精神論かい?!」





………何も、言えない。





「ツナ。死ぬ気で戦ってんのは何もお前だけじゃねえ。ユカだって今戦っているし、ユニもお前らを平和な過去に帰らせるために死ぬ気なんだぞ」


「!!」


「なっ!?」





何も、出来ない。

リボーンがツナに向かって説教をしている。そんな中、ユカは何となくその風景を漠然とした目で見ていた。リボーンの言葉で安心したせいなのかは分からない。だけど、今私の目を通して見ている光景がまるで何かの画面越しに見ている、傍観者の様な気になるのは………きっと気のせいではない。

あれだけ未来を変えられるかどうかで悩んで喚いていたくせに、今この場では私がどう動いた所で変わることなんてきっとない。このままツナが白蘭を倒してしまうんだろうし、ユニもγも共に消えてしまうのだろう。
結局の所で大筋の所では何も、変わらないのかもしれない。私みたいなこんなちっぽけな存在一人だけでは変わるはずがないのかもしれない。
現に今、リボーンの叱咤でツナが目を覚ました。かわいそうなほど震えているし、白蘭によって心臓を一突きされそうになった時は内心ひやりとし、小さな悲鳴が口から洩れてしまったが、ランチアからのリングで守られたのも変わらない。

私はその光景を見ながら徐々に自分から力が抜けていくのを感じた。





「この未来に来てなくてよかった物なんて一つもないんだ」


「辛い事も、苦しい事も、楽しかった事も………そして皆がいたから」


「俺はここにいるんだ………」


「皆と未来にいた時間は、俺の宝だ」





………嗚呼、いよいよだ。





「無闇に人を気づつけたために倒される事を後悔しろ!!」





その言葉とともに、ツナの額とリングに再び炎が灯される。その炎はやはりいつ見ても幻想的で、こんな場面でもユカの心を解かしていった。





「………もう大丈夫だよ、ユニちゃん」


「ええ」





何がなんて、聡いこの子には言わなくても通じる。それにこの状況を見れば、言わずもがなだった。

ユニは安心したように私ににっこりとほほ笑み、そして自分の仲間をきゅっと軽く抱く。私はあえて何も言わないように努めたが、きっとユニは自分の中で決心をしたのだろう。私は何も言えずにただその場に立っていた。






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あきゅろす。
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