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雲珠桜は夏に彩る
こんなはずじゃなかった06







「自分が世界にあわない?………バカじゃないの。何言ってんの。白蘭はれっきとしたこの世界の人じゃん。白蘭は私と一緒なんかじゃない。ふざけないでよ!」





自分がこの世界に生まれたから。本当に別の世界から来たわけじゃないから。だから白蘭はそんな事を言える。なまじ人並みでない力を持ってしまったから。だから、そんなふうに錯覚してしまったんだと、私はそう思った。

私からすればそんな白蘭の位置ですら羨ましい。妬ましい。だって私にはどうやったって、この世界の住人になれることはあり得ないのだから。それがたとえ地球がひっくり返っても、逆回りになったとしても、だ。現に先程の白蘭の言葉がそれを証明している。私がこの世界の住人に慣れないから、大空の炎の調和によって拒まれるようなことが起きてくるのだ。

そう言う意味では白蘭には私の気持ちを理解する事も共感する事も出来ないはずなんだ。だって、ひっくり返っても私はどうしたって他所者なんだもの。

感情的になれたらどんなに良かっただろう。何も考えずに頭の中を真っ白にして、ただ相手の事を怒鳴れたらどんなに。だけどユカの感情は、憤怒は先ほどの白蘭の言葉によってなりを顰めてしまっていた。
聞いた途端、自分に降りかかる現実を認めてしまったようで、急に自分の身体の髄から覚めていくのを感じた。血の気が下がっていったと言っても良い。まさにそんな感じだった。





「………あっ」


「!?」





ユニのマントの中が蠢く。白蘭は私の方を何か言いたげに見てはいたが、一旦ユニの方へと向けてしまった。





「………ユニチャン?何を隠しているんだい?見せてみなよ」


「っ、まだ、だめ……」


「まだ……」





ゴトゴトっと音を立ててユニのマントの中からいくつもの物が落ちていく。それは言わずもがな、この時代の死んだアルコバレーノ達のおしゃぶりたちだった。
やはりコロネロの青のおしゃぶりが一番戦闘痕が残っていて生々しい。表面からアルコバレーノそれぞれの特徴とも呼べる部分がはみ出しうごめいているのは、予想以上に不可解で見慣れない光景だった。無機物のはずの物体からそんな物が飛び出ていれば当然だと思う。ましてやそれが動いているなんて。………何と言うか、オブラートに包まず言ってしまえば、普通に気持ちが悪い。





「アルコバレーノの肉体の再構成が始まろうとしてんな………」


「再構成!?」


「アルコバレーノが……復活する…」





ユカの言葉に皆がハッと目を見開く。普通、こんな物からアルコバレーノが生き返るなんて事誰も考えはしない。だけどこのおしゃぶりの姿はその言葉の裏付けと取れるし、何より今の状況でアルコバレーノが復活をしてくれるのは何ともありがたい。
味方になってくれる………と言い切っても良いのかは分からないが、少なくとも自分たちを殺め、そして自分たちのボスであるユニを手に入れようとしている人物に彼らがつくはずがないのだから。

皆は信じられない、と思うとともに、そうであってほしいという表情を分かりやすく顔に浮かべた。





「でもその様子じゃ、アルコバレーノが復活するのには下手すりゃあと一時間はかかりそうだね」


「!!」


「図星だね」


「がっ」





ツナが短い悲鳴を上げたかと思うと、意識が遠のくようにツナの身体が地面に落ちる。額から出る炎が消えているのが余計に嫌な予感を誘う。皆が次々にツナの名を叫んだ。





「………っ!!」




大丈夫。大丈夫。………大丈夫。
喉の寸前まで出てきている悲鳴の言葉を必死に抑え込みながら、必死に心を落ち着かせる。だけどそれだけでも額には脂汗がにじみ、顔から血の気が引いていく。




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あきゅろす。
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