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雲珠桜は夏に彩る
こんなはずじゃなかった01







「どうしようか、ユニちゃん」


「………私にも分かりません」


「このままもし白蘭の所に行くなら殴りこみ、してみる?」


「冗談ですよね?」


「ばれた?…雲雀さんに怒られちゃうなぁ、コレ」





額に汗を浮かべながらも笑ってそう言いのけると、ユニは少し肩に入れていた力を抜いていた。やはり、ユニも白蘭の所に行く事は予想付いたらしい。白蘭に対して苦手意識を持っている事も明々白々だ。

………これは、ちょっと冗談じゃない部分が混じっている事を言わない方が、賢明そうだ。

だからというわけじゃないが、今が一番のタイミングなのかもしれない。私はずっと確かめなければと側でヤキモキしていたことを思い切ってぶつけることにした。





「ユニちゃん」


「はい?」


「死ぬ気………なんだよね」


「………やっぱり、ユカさんは知っていましたか」





そう言うユニは、一言も否定の言葉を探す事も発する事もしない。ユニは私がよく知っている、笑顔でない笑顔を私に向けた。





「もう………他に、打つ手はないの?」


「はい」





そんな事、とっくに分かっているはずなのに。私の口はどうしようのない言葉ばかりを紡ぐ。





「ツナなら、助けてって言えば助けてくれるよ?」


「いいえ、これは私に課せられた使命なんです。私の命で皆を救えるのなら、これが…私に付き合ってくれたみなさんへの恩返しでもあります。皆を平和な過去に、帰してあげられる」


「そんな恩返し、誰も望んでない」


「私という存在は、そのためにいるんです」


「γさんや野猿………ジッリョネロファミリーの皆はどうすんの」


「………皆は、私がいなくてもやってくれます。γも部下には厳しい人ですが、本当は心優しく面倒見のいい人ですから。彼がファミリーをまとめ上げてくれるはずです。きっと」





私がγさんの名を出した時。その時、少しだけユニの目の奥が揺れた気がした。ユカはその瞬間を見逃しはしなかったが、それを深く掘り返す事もしなかった。
………出来なかった。





「………ごめん」


「何がですか?」


「こんな時、無理にでも本当なら止めなきゃいけないのに。………ごめん、本当に」





多分、今この子を止めるべきなのはきっと私だ。そして最後に留める事が出来るのも、私だ。……このユニが死ぬ事を止めさせる事を出来るのも私なんだ!
だけど、私はどうしても止めるような言葉を出す事が出来なかった。

私はもうどうにもならない事を知っているから。どうやってもアルコバレーノの復活は必要で、そのためにはユニの命の炎を灯す必要があるのを知っているから。リボーンもどんな形であれもうずっと前から知っているはず。………彼も止める言葉をユニに向けた様子はない。止められなかったのだろう。
リボーンもこんな気持ちだったに違いない。





「いえ、謝らないでください。ユカさんは全てを知っているのでしょう?もうこの方法以外に残っている術がない事を」


「………」


「ありがとうございます、止めないでくれて。今の私には………止めてもらう方がきっと、辛いですから」





ユニは私の事を励ますように、ニコリと眉を下げて笑った。その笑顔はやはり素敵で、包容力で私を包んでくれるような笑顔だったが………私はただ、その瞳の奥にある死への恐怖をユニが拭いきれていない事を知っていた。






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あきゅろす。
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