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雲珠桜は夏に彩る
埋れていた、事実16







「いいぃやあぁぁーー!?」


「ハイ、到着っと」


「うえっ!?」





ーーーー空から、人が降ってきた。

ユカが、ここにいるはずのないランボを追って森の中に入っていった。誰もがすぐにその事に違和感を感じた。だからツナが真っ先にユカを追って森の中に入っていったのだ。そこまでは良かったのだが………何故かユカの姿が森の中では見当たらない。それは奥へ進んでも同じ事。森に入っていった時間は大して違わないはずなのに、ましてツナが追いかけていったのだ。超直感と機動力という人を探すには適した能力を持っていながらも、見つける事が出来なかった。一度ツナは皆の集まる所へ戻り、そのことを報告して皆顔を真っ青にさせた。
………人が降ってきたのは、その直後の出来事だった。





「う゛………落ちた時の衝撃がもろ腹に…」


「うしししっ、ザマアミロ」


「ひどいっ!さてはわざとやった!?」





ユカは自分たちの目の前に何ともない様子で帰ってきた。…………何故か十年後のベルフェゴールに抱えられて。





「あ、皆。………その、ごめんなさい。戻ってきました」


「な、な、な……ってか、ヴァリア―の!?」


「相変わらずちっせぇな、オマエ」


「なんで………戦っているはずのお前がここにいるんだ?」


「そ、そうだ、今ヴァリア―が味方になるって………」





お、そこまで話が進んでいたか。
慌てふためくツナ達を前に、ユカは客観的にそんな事を考えていた。あと、早く降ろしてくれないかな、とも。
やはり、落ちる心配がないほどがっちり掴まれていても、担がれていると言うのは何とも言えない。人間は地面が一番落ち着くんだよ。





「なんでって?そりゃ俺、王子だもん」


「………は?」


「俺のモンが人に取られそうになってる時に呑気に戦っていられるかっての。王子的勘な?」


「………まさかユカ、お前、」


「…また、会っちゃった。幻覚だったけど」





どうにか笑いで誤魔化せないか。そう思ったユカだったが、皆の悲鳴を飲むような表情を前に、そんなこと出来なかった。
次の瞬間に皆から「馬鹿!!」と罵声と共にリボーンの何割か力をセーブした叩きが飛んできたのは言わずもがな。いくら何割か力をセーブしたと言ってもリボーンの叩きは半端じゃないほど痛い。表面積が狭い分、威力が一点に集中してくる。なんたってヒットマンの叩きだ。本場仕込みが甘いわけがない。それに肩の上にいる私は身動きできないのが現状だ。だから「グエッ」っと言ってもしょうがないと思う。
ずっと私の頭に乗っていたミンクも憎い事に、その時だけは私の頭から退いていた。飼い主に似るというのはまさにこのことだと思う。性格がそっくりだ。





「というか、あのー。いい加減に降ろしてくれませんかね、ベルさん」


「嫌だね」


「なんで」


「しししっ、面白そーなのがやってきた」





ちょっと後ろに視線をやれば辛うじて見えるベルの顔。口がいつも以上につりあがっている。このまま言えば、口裂け女レベルに達するのではないか、と言うくらい。でも前髪で見えないはずの視線はまっすぐ前を見つめていた。





「………ユカ?」


「え?」


「しししっ、エース君ちっせぇ」


「何やってるの」


「!!!」





そこにいたのは。





「雲雀さん!!」


「……………え、」


「雲雀さん……って、ベル!!お願いだから降ろしてよ!ここまで送ってもらったことには感謝するから!」


「んだ、その投げやり感」


「降ろしてくれればもっと心を込めて感謝する!!」





そこにいたのは間違いなく、雲雀さんだった。私はそれを認めるなり駆けだしたい気持に駆られるが、なんせ今私は肩の上。駆けだすどころかベルの強い力で降りる事も叶わず、足をバタバタさせる羽目に。





「…………」


「あっ、」


「ちぇ」





そんな事をしていれば更に感じる浮遊感。肩の上で浮遊感なんて落ちるだけだと思ったが、腰の辺りに更に違和感を感じる。
………私の腰を掴んでいたのは、雲雀さんだった。肩から下ろされると、ゆっくりと地面に降ろしてくれた。





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あきゅろす。
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