雲珠桜は夏に彩る
埋れていた、事実09
「ぎゃっははーい!ユカーーー!!」
「うげっ」
そんな事を考えていると、後ろに突如重さがのしかかる。その重さに耐えきれずにユカは、その場に倒れ込んだ。………犯人は聞かなくても分かる。
「ランボー!………と、え?」
「ランボさんとあーそーべー!」
「ガオ!」
「こ、こらランボ!ナッツ!戻ってこい!」
何と後ろに乗っていたのは、ランボとナッツだった。
「ご、ごめん二人とも!邪魔者はすぐに退散していくから!」
「いえ。もう話は終わった所です」
「ほんと?よ、よかったぁ」
「………ねえ、ツナ」
この可愛い動物はなんですか?
勿論名前も、ユカはこれがなんなのかも知っている。だけどユカはこの首をかしげている動物を前に、そう尋ねずにはいられなかった。
私が恐る恐る手を伸ばすと、嬉しそうにすり寄ってきてくれる、それ。
「あ、そいつナッツって言って、匣兵器………」
「可愛い………!!!」
知能が普通の動物に比べて高いせいか、私のハートを鷲掴みにする術も備わっているようだ。喉の下の辺りを撫でてやると、ガルル………と小さく喉を鳴らす。
我慢できずに手を伸ばすと、そこにすっぽり入るナッツ。しかも自分から私の腕の中に入って来てくれた。
最初はなんでライオンにナッツと名付けたんだろうとか不思議に思うところは多々あったが、この可愛さの前ではどうでもいい気がした。いいじゃないか、ナッツ。いい名前じゃないか、ナッツ。
やばい。可愛すぎる。ナッツを撫でる手が止まらない。
「っ………!!」
「や、やけに懐いてら」
「ふふ」
「おい、ボンゴレの!何やってんだ、さっさと捕まえてこい!!」
「は、はい!!」
「あ、γさん」
「私達も向こうに行きましょうか」
「うん、そうだね」
森の抜けた所にある、明りの灯った所からγの怒鳴り声が聞こえる。焦るツナに合わせて私達も一緒に戻ると、「だから邪魔するなと言ったっだろうが」と、私の腕に居るナッツを見ながら言った。辺りを見回せば、皆の匣兵器の動物たちが勢ぞろいしている。きっと夜明けの戦闘に備え作戦を練っていたのだろう。私はγの匣兵器のコルルとビジェットに目がいく。
………一度でもいいから、彼らにも触れてみたい。
「と、とにかく!この戦力で二人を守る作戦をしっかり練ろう!「ぎゃあっ!」………て、綱吉クン!!」
「は、はい!!」
「………とんだ学芸会だな」
「はは」
目を離した間に、ツナは瓜から襲われちょっとしたパニックに陥っていた。γはそれを見て呆れたように溜息をつく。
「………なあ、ユカ。なんだあいつ。あいつがボスで大丈夫なのか?ボンゴレって」
「まぁ、普段はあんな感じだよ。いざって言う時にはやってくれる子だから」
「………まるで保護者みてーだな」
「良いねー、ツナが子供」
裏を突けばいざって時以外はやらない子。もっと正確に言えばやれない子。そういう意味にもなってしまうが、それ以外何とも言えないのでユカは苦笑を洩らした。
そうは言うが、ツナは、本当にやる時は本当にやる子なのだ。だからこそ、今からの戦いで白星を挙げる事が出来る。
………そう信じている。
運命の夜明けはそのまま、案外あっさりとすぐに迎えた。
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