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雲珠桜は夏に彩る
埋れていた、事実08







「………そして、白蘭はユカさんを狙うはずです。次に来る人を狙うとは思えません。きっと、ユカさん一人に絞ってくるはずです」


「え………」


「気付いていますか?このトリップをしてきた人は、同じ時間軸に存在しない………ユカさんがいる限り、次が来る事が無いのです」


「!!」





そうだ。
簡単に計算すれば、ルーチェの代に一人。アリアの代に一人。そして、ユニの時は私。………きっと次が来るのはユニの次の代だ。
しかも私は、その次が無い事を知っている。





「次が来るのはきっと先………白蘭だって、それくらいはきっと分かっています」


「で、でも白蘭は私でなくても良いって………」


「知ってる?この世界にユカチャンみたいな子が現れたの、これで三度目らしいよ」


「!?私、以外にも」


「そう、だからさ。気長に待てばユカちゃんじゃなくても良いってことだよね〜」


「………!!」



「それは虚勢です。ユカさんに逃げられないための。白蘭の力の衰えを分かっているのですから」


「そ、そっか」





虚勢なのか。どうやらユニは本当に全ての事が見通せているらしい。私にも分からなかった事まで平気に答えてくれる。
………が、今の話で言うと。それが白蘭の虚勢だと言えば聞こえはいいが、事実標的は私一本に絞られたと言う事だ。それは私でもちゃんと分かった。私の手に、自分の世界の行方を委ねられている………それはきっと、私が想像することより遥かに重くて辛い。




「………ま、取りあえず。この力が逃げるために付いたんなら、私はとことん逃げ切らなくちゃってことだね」




だけどそんな弱音。ユニの前では吐いてやるもんか。私はユニを見つめると自分の二の腕を見せ付けるようにコブらしきものを見せ、そうして口角を上げた。





「大丈夫、私鬼ごっこ得意だから!追う方も追われる方も!」


「そ、それはニュアンスが少し違うと思いますが………」





ユニも少しひきつりながらだけれども、でもおかしそうに笑ってくれた。
これで良い。
自分の背に大きなプレッシャーとともに大きな責任を背負っているのは、何も私だけではない。ツナも然り、目の前のユニ然り。二人とも自分の手に世界の運命が掛かっていたりする。………そう、私だけではないのだ。それを一人、辛いと言って皆に縋るわけにはいかない。
いざという時の女が怖いのだ。それを白蘭に見せつけてやる。ただの守られるだけの女にはなってやるものか。自分の足で、逃げ切るんだ。そのために多分、この能力があるんだから。




「(大丈夫、捕まらなければいいんだ。それに今は、皆もいる)」




私は一人じゃない。




「(それに………雲雀さんも)」




今は近くにいないけど、けれど彼だってすぐにもうすぐ戦場となるこの場にやってくる。戦闘好きの彼が来ない訳がない。だから、恐れる事は何もない。怖くだってない。
………怖くはないけれど、でもちょっとだけ雲雀さんに会いたかったりして。
頭の片隅でもそんな事を考えている自分がいる。早く会いたい。戦いが始まる前に。そうすればどんなに心が晴れる事だろうか。それに記憶を取り戻した事を彼に伝えたい。きっと表情には出さないけど、吃驚はしてくれるはず。




「(………そう言えば私、雲雀さんの事『雲雀クン』とか言ってたらしいし)」




今、記憶の戻った状態でその名を口にすると、何故かこしょばい。………と言うか、落ち着かないと言うか。やはりしっくりこない。記憶が無くなるとそんなことまで起こってしまうのだ。
とにかく雲雀さんに会ってすぐに名前を呼ぼう。『雲雀クン』ではなく『雲雀さん』で。






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あきゅろす。
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