雲珠桜は夏に彩る Cielo 02 すると雲雀さんは更に顔をしかめた。それを見てしまった、と思う私。 こんな質問されてんだからもうバレてるよね…………。 「…………すいません、嘘です。テニスの練習に行ってました」 一気に言って落ち込む私。下を向いてるから雲雀さんの表情まではわかんないけど………殺気らしきものがひしひしと肌に伝わる。 あな恐ろしや。 「で、でも!あと明日だけなんです!明日終わればもう練習行かなくてもいいし!」 「…………」 「それまでちゃんと家事と両立させます!だから、その…………」 「…………、分かったよ」 「だから、その……え?」 「もういい。どうしてもその試合に出たいんでしょ?」 「…………いいんですか?」 「うん」 しょうがないから許してあげる。 そう言って雲雀さんはふいっと横に顔を向けた。見る限り呆れてはいるみたいだが、別段怒っている様な様子はない。 ……と言う事は。 「やったー!!」 「ああ。それから明日までの家事は全部副委員長に任せればいいよ」 「……え、副委員長って草壁さんに?」 「ああ。家の事は俺に任せておけ」 再び奥で腕まくりをして微笑む草壁さん。まさかそのために、今ここにいるのか。 「そんな!そんなことしてもらわないでも…………」 「いやいいんだ。これぐらいさせてくれ。……それにテニスの事、委員長に内緒だったんだろう?すまん、俺がお前の事聞いたもんで」 「そう言うことだったんですね」 解決したからいいと思っていた『何で雲雀さんがこの事を知ったのか』 確かに草壁さんが私の姿を見て、彼に尋ねるぐらいの事はしそうだった。 まあ分かれば呆気ない。 「だからこれはその詫びとして受け取っておいてくれ」 「そんな!良いのに」 たまたまバレたのが今日だっただけ。何だかんだ、どうせいつかバレるんだろうな、と思っていた私なので、結構もったほうだと思っていた。 しかしそんな私の思惑とは別に、草壁さんの目が、これだけは譲れない!と言っているような………気もしないこともないので、取り敢えず、その言葉に甘えることにした。 「ありがとうございます、草壁さん!」 「おう」 「副委員長。お腹空いた」 「はっ、ただいま!」 このあと私達は、美味しく草壁さんの料理を頂いた。形がすごく歪になっていたのに………味はお世辞ではなくプロ並みだったと記憶している。 その上、草壁さんのお陰でやることがなくなった私は明日に備え、早い時間帯にゆっくりと眠ることができた。 (…………ユカが毎晩疲れて死んだように眠る姿が見ていられなかった、ただそれだけだ) [*前へ][次へ#] |