雲珠桜は夏に彩る
無慈悲な再会10
「手伝いましょう、トリカブト。一対一なら勝てるものをああもサポートされては」
敵の一人の女の子が、自分達が押されているという状況に逆上していた。桔梗もまた、押されているトリカブトを見てこのままではと思ったらしい。ツナとトリカブトの方へ身体を向けた。
…………直後、一回の銃声の後に、桔梗の身体すれすれに銃弾が飛び交った。
「!?」
「これがボンゴレファミリーの戦い方だぞ。ボンゴレファミリーの強さは、個々ではなくファミリー同士の連携にある」
「アルコバレーノ!」
「おじさま!」
聞きなれない銃声が響き渡る。その音につられて空を見れば、いつの間にかリボーンが空をイルカに乗って駆けていった。
…………イルカ?
私は一度目を擦る。空を見て何度も擦ったが……状況は変わらない。地上を悠々と泳ぐ鮫も中々な物だったが、空を駆ける銃をぶっ放している赤ん坊を背に乗せたイルカもまた、シュールすぎる。一体本当になんなんだ。ユカは感じる眩暈を必死に抑えた。頭痛が、更に酷くなった気がした。…………ちょっと異常なほどだった。
「その通りだ!仲間のピンチの時こそ!俺のリングは極限に燃える!」
「あいつ、無茶しやがって…」
「お兄ちゃん!」
「っ、あ………いつの間に」
気付けば空には一つ、人影が増えていた。その横にはカンガルーも付いている。…………やはり、と言うか、そのカンガルーも空を浮かんでいた。
「………わお」
そのカンガルーは、手にはボクシングのグローブ。背にはロケットランチャー…………の様なもの。
………もう何もつっこむまい。
「ぶ〜〜〜〜、もう、あったまきた!」
「!」
女の子………ブルーベルが、上に羽織っていたコートを脱ぐ。そこに露になるのは日に浴びてはいないであろうと予測できる白い肌に、痛々しく埋められた匣。恥なんてものを感じていないのか、大胆に肌を見せている。
…………この人まで参戦したらどうなるのだろう。そう思ったが、その心配は杞憂に終わった。
「待ちなさい!」
「!!」
髪の長い桔梗が、冷静に周りを窺うようにしてブルーベルを止めた。その声に私達と同様ブルーベルも桔梗に視線を向けた。彼女は自分の勢いを止められて、物凄く不服そうだ。
「何よ、桔梗!」
「落ち着きなさい、ブルーベル。奴らを全滅させるのは容易いですが、ユニ様を確実に無傷でお連れするには、もうひと戦力ほしい所です」
「な!?だったらどーすんのよ!!」
「一旦退きます。態勢さえ整えば簡単に事を運べる」
「!!」
その言葉は、今の私達には希望となった。
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