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雲珠桜は夏に彩る
Cielo 01






「いやいやいや!こんなの履いたことないし!」


「えっ、だってやってたんでしょ?」


「確かにやってたけど…………」


「ならあるでしょ、着たこと」


「ない!」





そう断言すると、皆は一気にえー!?と声をあげた。





「なんで?ズボンじゃだめなの?」


「そんなの男子しか着ないよ」


「大体これ目当てで入る子がいるくらいなんだし」


「!!」





…………恐るべし、漫画の世界!!




こっちでは見えそうなくらい短いスコートが所望されているらしい。私の世界………いや、私には絶対にあり得ないことだが。
暫くそのスコートを呆然と眺めていると、急に後ろから声がかかった。






「よし、じゃあ明日に備えて解散!」


「ありがとうございましたっ!」


「ちょっと待ってよー!!」




当然のごとく私の声は却下され、そのままごく普通に解散したのだった。







…………帰宅後。






「ただいま…………」


「遅い。何やってたの」


「!雲雀さん」




玄関を疲れた手で開く。その先には無表情でちょっと眉を潜めている雲雀さんがいた。




「おお、 笠原。随分疲れているみたいだな」


「草壁さん?なんでここに」




しかもその格好。
そう言いかけそうになってすぐに口を紡ぐ。
草壁さんは片手に包丁、片手に野菜。そして私の愛用していたエプロンを着て奥から覗いていた。





「…………それより ユカ。君、僕に言うことがあるんじゃないのかい?」


「言うこと?」





私は回らない頭を必死に回す。元々頭の容量が多い訳じゃないので、疲れている分パッと思い付かなかった。




「えーっと、言うこと…………あ」


「思い出した?」


「そう言えば学校で風紀委員の人が雲雀さんにいつでもいいから渡しといてくれって頼まれてました」




私は鞄から髪が何枚か入った封筒を取りだし、はいっと渡す。雲雀さんは受け取ったもののまだしかめっ面だった。




…………これじゃない?




「そうじゃない」


「えー……他に?」


「じゃあ聞くけど。何で最近帰りがそんなに遅いんだい?何で疲れてるの」




一向に思い出しそうにない私に、雲雀さんが助け船を出した。




「え、そりゃテニ…………今日は体育があったからですよ。その後友達とシュークリーム食べてました」




やべ、思い出した。




考えたら私は今、雲雀さんに内緒でテニスの練習に顔を出している。
雲雀さんに内緒で、だ。つまりこれはバレたら…………いや、書くのはよそう。






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あきゅろす。
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