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雲珠桜は夏に彩る
無慈悲な再会05








「じゃ、オイラは行くぜ」


「!?おい、お前…!」


獄寺は私を支えながら野猿に向かって吠える。が、野猿は気にした様子もなく、話も聞かず、顔も背けたままで飛んで行った。





「ユカ……………お前、あいつ知ってんのか?」


「…………覚えてない」





だけど、あの人は前から知っているみたいに話しかけてきた。そう言えば獄寺は「そうだよな……」と納得いかない顔を見せた。

言っていることと表情が矛盾しているが、何故だろう。と言うか皆はあの人達と知り合いなのか。





「…………ユカに対して、殺意は感じなかったが」


「もしそうなら…………助けてはくれないでしょ」


「お、おお」





むしろ好意的だった気がする、と感じるのは、私だけなのだろうか?その事を仏頂面をした獄寺君に言うと、さらに複雑そうな顔をした。





「…………アイツ一応、敵だったやつだぞ」


「そうなの?」


「未来に来たばっかりの時な。俺や十代目…………笹川やハルも狙われた」


「!!」


「あれは…………でも、今はユカちゃんの事助けてくれたし」


「そんな」




獄寺君の思わぬ発言に、思わず私は顔をしかめた。

………ならば、何故彼はあんなに好意的に私に接してきたのだろうか。私は空に飛んで行った野猿に疑問と不信の目を向ける。だけど彼は目の前を敵にしてそんな視線に気づく訳も無く、当然既に目の前の敵に集中していて、こちらを向くようなことはない。………あれは果たして、演技だったのか。





『無事か、ユカ!?』


『ああ、無事だったんだ…………って、さっきまで捕まってたみてぇだけど!』






あの時に見せたあの野猿の表情。あれも嘘だったりするのか?………いや、正直そうとは考えられない。ユカはゆっくりと首を横に振った。

助けてもらった。あんな表情を見てしまった。それだけで味方と判断し安心するのはあまりにも浅はか過ぎて愚かなことは分かっているが、それでも私は、あれは本当に自分の身を案じてくれていたと思う。というか、そう信じたい自分が居る。

…………だけど、前に京子ちゃん達を襲ったという事実は流石の私も、見過ごせるような出来事でもなかった。





「…………騙されるなよ、ユカ」


「え?」


「いくらあいつがお前を助けたからと言ったって、敵じゃないという保証はねぇ。…………前だって、運が良かったから助かったんだからな」


「…………うん。でも、」





今、ユニを助ける事が出来るのはきっと、あの人たちしかいない。だから小さく思った事をそのまま口に出した。

獄寺とは敵同士だったと言うが、少なくともユニとは懇意の仲らしい。それはユニの金髪の人を覗き込む顔を見れば一目瞭然だ。

それを含めても、彼らには少なくとも今は無事に勝ってほしいと思うが、まだ彼等は敵陣のど真ん中にいる。私達を含め、ピンチには変わりない。




「あいつらに賭けるしかない…………か」




さっきまでずっと口を閉ざしていたリボーンも、似たような事を口にした。

ユニが助かって無事私達の前に立つことを私達はただただ、地面から手を合わせて祈りながら、空を見上げることしかできなかった。
それしかできないと言う事が、こんなにももどかしかった。




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あきゅろす。
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