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雲珠桜は夏に彩る
無慈悲な再会01






一人の掛け声で敵襲に備えるべく、それぞれの配置に着く。どうやらさっきの話し合いは、満更無駄ではなかったらしい。私とユニには、すぐに正面から目につかぬよう物陰に隠れろと檄を飛ばした。
だけれども、ユニの様子はそれどころではなかった。





「ユニちゃん…………」


「近くに…………います。もっと近くに、」


「え!?」





ユニの呼吸は荒くなる。私が傍に寄れば、その辛さが直に伝わってくるようだ。
ユニの額には脂汗が浮いている。クロームもユニほどまでではないが…………それでも顔から血の気が引いていた。本当に大丈夫だろうか?私はランボを何かの拍子で落っこちさせないようしっかり抱えてから、何か私にできる事は無いかとユニの顔をしゃがんで覗き込んだ。





「ユカ!…………牛の子………っ!!」


「え?」


「ぐぴゃ?」


「!?」





眩暈、もしくは貧血か。ユカは一瞬そう思った。いきなり目の前が眩むなんて、それ以外に滅多にあるもんでもない。目の前の現象はその反動で見えたものだと思っていた。…………が、そうでないと気が付いたのも、案外すぐの事だった。
目の前の霧があっという間に形をなして、身体が包み込まれる感覚に陥る。





「ユカっ!ユニっ!!」


「!」





後で聞いた話。この時のユニは言葉にならないほど怖かったらしい。思い返してみれば、確かに悲鳴も出していなかったし、顔も青ざめていたままだったな、と思う。対する私は、すぐには悲鳴を出すことが出来なかった。人間、咄嗟の恐怖を味わうと声が出なくなると言うのは本当らしい。しかし、ユカとそこにいる皆はこの時、人間は咄嗟の時に声が出ない分、その後の反動が半端じゃない事も知った。

ガッ!!





「!?」


「………ぎ、」


「?」


「ぎゃあああああっ!!!」





正体不明の奴に渾身の腹パンチを食らわせた後、一拍を置いて出てきた悲鳴。どうやらこれは、外の敵まで聞こえていたらしい。





「!?」


「なっ…………嘘っ」


「何やってんだ、アイツ…………!?」





腹パンチを目の前の得体の知らない奴に食らわせた。だが、私とユニを抱えてるそいつはちょっと面食らっただけの衝撃らしい。私達に逃げる暇を与えることなく連れ去ろうとする。足が宙に浮いた。

何に連れ去られているかも分からないままで気味が悪かったユカは、無我夢中で顔を見ようと見上げる。…………見なければよかった。
私達を連れてきたのは、赤い鬼のような仮面をかぶった怪物だった。この顔には見覚えがある。チョイスの時に確か、ツナと戦ったはずだ。正直気味が悪い。

ユカはなんでこんな事に巻き込まれるんだ、と、激しく自分の不幸体質を呪った。





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