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雲珠桜は夏に彩る
危機の中の出会い








「でも…………わ。何グループかに別れた方が…………」


「…………」





無事、基地を抜け出した。スクアーロの身を張った助けがあったお陰で、中に居たラル・ミルチや重症怪我人である入江正一の身も何とか運び出すことができた。
初対面でユカの事情を知ることとなったラル・ミルチは、事情を飲み込むと同時に、眉を潜めて私からそっぽを向いてしまわれた。その時に「根性が足りん」と言われ、少しへこんだ自分を見たツナから、いつものことだとフォローを入れてもらったのも記憶に新しい。
そして私はその言葉を聞き入れながら、基地を抜け出す直前の事をずっと、思い出していた。





「ユカ!もう『逆さみのむし』になるんじゃねぇぞぉ!」


「もうそんなことにはなりません!」


「!!」






確かに私はそう言った。その事が不思議でならなかった。何で私はあんな事を言ったんだろう。あれこれと頭ん中を探って考えても理由は分からないし思い付かない。でも、スクアーロからそう言われたとき、私の頭の中にははっきりとその情景が浮かんだ。だから私も、もうそうはなるまいと、ああ返した。…………はずだ。




「…………」




あれは、思い出したと言えるのだろうか?これもユニの言っていた、靄の晴れている部分が見えたと言うやつなのか?この調子ならば、全部思い出せる?
だが、素直にその事を喜ぼうとはどうしても思えなかった。再びその思い出したことを思い出そうとしても、頭に浮かばないのだ。さっきの記憶を手懸かりにいろんな事を思い出そうとも全く浮かばない。その前後の出来事すら、思い浮かぶことができない。それを続けて無理に思い出そうとすれば、体が震え、変に体から体温が引いていく。だから、それ以上はなにもできない。思い出すことも出来ないから、皆にも何も言うことが出来ない。変に思い出したとか言って、ぬか喜び何てことはさせたくない。

…………雲雀くん。雲雀くんになら、言えただろうか?そんなことをユカは考えた。
雲雀くんならば、ぬか喜びとか言う前に「そう」とかなんとかで片付けてしまいそうだ。そして遠慮がちに頭を撫でてくれる。…………うん、想像がつく。

そう考えるといっそう、側に雲雀くんがいたらなんて考えるようになってしまった。
そんなことを考えるのは、雲雀くんに迷惑だろうか?




「(迷惑に決まってるよ、ね)」




ドガァッ!!!!

刹那。地面が大きく揺れた。一瞬こんな時に地震かと疑ったが、どうやら違うらしい。揺れた次の瞬間には、次から次へと建物の中から煙が上がっていった。私達がさっき出てきた出口からも、煙が上がる。いや、出口が爆発と共に壊れた。

…………これは。





「ひぃいい!?」


「あんの鮫野郎!何が静かにゆっくり戦いてぇだ!」


「今煙が出ているところ、全て基地の出入り口に繋がっています!」


「!!」

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あきゅろす。
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