雲珠桜は夏に彩る
覚悟04
「ねえ……ユカもやってみなよ」
「え、私?」
「うん」
はい。
自分の指からボンゴレリングを抜き取って私に渡してくる雲雀さん。
いやいやいや!
「私にそんな大層な覚悟ありません!」
「いいから。ユカだって僕に無理矢理やらせたでしょ?これぐらいやって見せなよ」
「ええ〜……」
そう言われれば……言い返す言葉が思い付かない私。本当に雲雀さんは必要になるからやらせただけなのだか、今そんな説明なんて出来ない。
……まあ、やってみるだけなら。
「じゃあ」
「はい」
雲雀の手の中にあるボンゴレリングに手を伸ばす。ちょっと憧れだったりした、本物のボンゴレリングを触ることが出来るのでちょっと嬉しかったり。
だが。
私の手とリングの距離が0になるかならないかのところで異変は起きた。
ビリッ!!!
私の指とリングの間に、鋭い閃光が走った。
「いっ……!」
私は慌てて反射で手を引っ込める。指の上で何か生暖かいものが流れ落ちた。
「ユカ!?」
「何……なんで……?」
私は自分の指に流れ出る血を呆然と眺めた。
……なんでボンゴレリングから?
「ロマーリオ、手当て!」
「ああ」
呆然としている私を余所に、ロマーリオさんが私の所に駆け寄って来る。ロマーリオさんは手早く懐からテッシュとガーゼ。それとガーゼを止めるテープを取り出した。
「消毒は要らねえな。まず血を止めねえと」
「ありがとうございます……随分準備良いですね」
「原因はあれだ」
片手でディーノの方を指差す。
……ああ、なるほど。
ロマーリオさんはその間にてきぱきと親指と人差し指で指の両側をギュッと押さえ、止血している。ある程度血が止まったらガーゼを当てて、ぐるぐる巻きにした。
「…………にしても随分ざっくり切れてたな。毛細血管性だろうから大丈夫とは思うが」
「毛細血管性?」
「ああ。大したことはないから安心していいってこった。暫く不便だろうがな」
「……ありがとうございます」
「恭弥の方は大丈夫か?」
「……別に」
「そうか、良かった」
ディーノさんはほっと胸を撫で下ろす。
……これから修行するって時に、怪我なんてしていられないもんね。
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