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雲珠桜は夏に彩る
自分と言う名の探し物08







崩れ落ちていく地下の通路の壁。燃え盛る炎。それらをバックに、彼が立っていた。その姿は見た者全てが戦慄を覚える。
不自然な点を上げるならば、燃え盛る炎の形状が一般と異なっていることと……後はきっと、彼の手から炎が出ていることだろう。
それを平然と受け止めている彼は一体、本当に何者なのか。




「…………」




ユニはユニで、この状況に何を思っているのか。彼女の喉から、生唾を飲み込む音がした。





「どーやってこのアジトの場所を………!」


「しかもこれほどまで簡単に侵入を……っ」


「転送システムがぶっこわれて外へ吹っ飛ばされ。無線もレーダーも粉々になったときはどうなることかと思ったが…………なんとかなるもんだな、バーロー」


「マグマ野郎!」





彼の手から崩れ落ちる、元の形が分からない機械。きっとそれは今彼が言っていた、壊れた無線、またはレーダーなのだろう。さっきの話は本当のようだ。
…………ならば彼はそんなものがない状態で、どうやってここを探りだした?





「確かあいつは…………」


「ザクロ…………確か、ザクロって」


「ユカちゃん?」


「おっ、嬉しいねぇ。俺の名を覚えててくれたのか?って、あんなことあったら、忘れるわけねぇか」


「!!」





何で私、あの人の名を知ってるんだろう?
私はあの人の…………ザクロって人の名を知らないはず。いや、覚えていないはずだ。ザクロと面向かって会う時は大抵良いことがないので、覚えている余裕なんてないのだ。だが、何故か今、頭に名前がふと浮かんだ。 もしかししなくとも、これがそうなのか。ユニが言っていた晴れ間の部分なのか。





「さあ行きましょうぜ、お二方。なぁに。悪いようには扱わねえよ」


「嫌です!」


「……まず、あの人の側にも寄りたくない」


「ありゃ」





キッパリと拒絶反応を見せるユニと私の二人。二人はザクロによって放たれる、次の言葉を恐れてか、近くにいたリボーンを抱き上げてツナ達の背後に回った。
完全に干渉しないつもりだ。それを見たザクロも困ったように、深紅より少し濃い色の前髪を掻き上げた。





「あの人って白蘭様のことか?随分と嫌われちゃって…………って、俺か」


「野郎、ふざけやがって!!」


「変な奴だな」





ふざけて言うように聞こえるザクロの言葉。しかし多分、彼は本気で言っている。その事に気づかずにいつもの如く切れてくれる獄寺と山本は、切れながらも理性は保ち、油断はしなかった。そして多分、戦闘に入るつもりだったのだろう。二人の指に填められているリングに炎が灯った時に彼らを止めた手は、意外な所から伸びていた。





「てめえらじゃ役に立たねぇ。ユニとユカを連れて、さっさとここから去れぇ!!」


「!!」


「スクアーロ!!」





スクアーロは真剣な目で、それでいて完全な捕食者の目で敵を見据えていた。







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