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雲珠桜は夏に彩る
束の間のハプニング12







気づいていた。自分がユカに対して、いつも通りに出来ていないということは。ユカに対して、どこかぎこちなくなっているということは。

最初はそんなことはなかった。ただ、その時はそんなことを考える余裕がなくて、気づいていなかっただけかもしれない。でも並盛に帰ってきて基地に隠れて…………心に少しだけ余裕の隙間が出来たせいだろうか?
記憶のないユカが、何故かツナの中で引っ掛かった。





「分かってる…………分かってるよ、ユカちゃんを守りきれなかったのは、俺の力不足だってこと…………」





今ならずっと、大切なときに限って守ることが出来ていなかったと悔やんでいた雲雀の気持ちも、よく分かる気がする。

守りたいと意気込んで守れなかった時の…………虚無感や、自分への憤り。負の感情が胸の中でぐちゃぐちゃになっていくのは、堪えられるものじゃなかった。雲雀さんはいつもこんな感情と戦っていたのかと思うと、やりきれなくなる。

勿論、ユカが記憶をなくしたのは俺達の責任。それでも…………俺達のことも、雲雀さんのことも。皆と出会ったときのことも。今まで少しずつ積み上げてきたいろんな思い出も。それが全部が全部、無くなっていることが…………どうしようもなく悲しい。




「…………っ」




覚えていてほしかった、どんなことがあったとしても。例え記憶を奪われたとしても、奪われくれないくらい強い記憶であって欲しかった。
そう思うのは…………そう願ってしまう俺は、傲慢だろうか?





「認めるのが嫌なんだ。記憶がないこと…………記憶がないのにユカちゃんが普通に笑って。まるで俺達は必要なかった存在みたいで…………」


「そんな事ないと思うがな」


「でも、なんかそう考えちゃうんだ」





駄目だな、俺。

そう言ってツナは少し俯いた。無重力の髪が上手くツナの表情を隠す。今回ばかりはリボーンもツナの気持ちが理解できたのか、口を開いてツナに渇をいれるようなことはなかった…………





「とうっ」


「アダッ!?」





…………ということはなかった。
いつもより鋭い蹴りが、ツナの後頭部に炸裂する。いつものように上手い具合に着地したリボーンはツナを見上げているはずなのに、ツナは何故か見下されている気分になった。





「成る程な」


「?」


「つまりお前は、寂しいんだな」


「…………っうえ!?」





急に何を言い出すのだろうか。リボーンの思わぬ言葉に、ツナは吹き出してしまった。





「ユカがお前のこと忘れてるのが寂しいってことだろ?お前の言ってることは、その事をひねくり回して誤魔化しているだけだ」


「なっ…………変な言いがかりすんなよ、リボーン!」


「何が言いがかりだ」





その言葉と共に自分の目を視線だけで貫くリボーン。不覚にも、その目に気圧されそうになる。





「言っておくが今お前、めっちゃカッコワリーぞ。自分の寂しさをユカのせいにしているんだからな」


「なっ…………」


「お前は自分達のことを忘れたユカを、今までのユカとして見ていない。どんなに変わらないって口では言っても、やはりどこかが違うって思い込んでんだ」


「そんなこと、」


「ないって言い切れるか?」





ズバリと釘を刺されるように言うリボーン。ツナは言い返すこともできずに口をつぐんだ。…………多分、今の自分は言い切れない気がする。

頭の中で、リボーンの言う言葉を何度も反芻して考えた。すると、リボーンの言葉はやけに今の自分のモヤモヤに当てはまるのだ。






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あきゅろす。
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