雲珠桜は夏に彩る 束の間のハプニング02 …………私だから?それはどういう? 「記憶がなくても関係ない。僕が覚えてる」 「あ、俺も覚えてるのな!」 「…………君には言ってないよ、山本武」 明らかに水を刺された形で横から口出しされ、嫌悪感を露にする雲雀くん。その横で山本がアハハ、と笑っているのをツナが必死に宥めていた。 「まあまあ、二人とも…………でも、俺もそう思うよ。ユカちゃん」 「?」 「記憶がなくなってもユカちゃんはユカちゃんだし…………それにユカちゃんも条件は同じじゃない?」 「同じ?」 「うん。だってユカちゃんだって記憶がないんだから、俺達は他人と一緒みたいなものだろ?でもユカちゃんは、外で戦ってる俺達の事をすごく心配してくれた。今だって」 「それは、だって…………」 「そんなユカちゃんだから、俺達は守ろうって思うんだ。戦うんだ」 勿論、京子ちゃんやハルも。………ユニはまだ出会ったばっかで、まだよく分かんないけど。でも守ろうと思うよ。 ツナはそう言って照れ臭そうに微笑んだ。その笑顔と言葉はツナの本心がのっているかのようで、ユカは胸の辺りがほんのりと温かくなるのを感じた。と、同時に、喉に苦いものが通ったような感じがする。 何で私は、こんなに良い人達の事を忘れてしまったんだろう。今だって、皆の事を知った上で、分かった上で笑いあっていたかった…………。 ジジッ…………ジジジ…………。 「「「「!?」」」」 突如。獄寺が新兵器の実弾まで使って破壊させて、民家のない山へと落としていったはずの転送システムが、嫌な音を立て出す。そして嫌な音を出したかと思えば…………。 「き、消えた!!」 「どういう事だ?!」 「白蘭の元に戻ったな…………破壊しきれてなかったのか」 ディーノが内心しまった、と言うような表情を浮かべ、転送システムが消えていった空を見る。皆もそれに合わせて空を見上げた。 更に。 「マズイな。すぐに奴等をつれてやって来るかも知れねーぞ」 「ええっ、そんな!!」 「…………これからどうするかはお前が決めろ、ツナ」 「そんなこと言われたって…………」 「(あの人達が…………来る)」 白蘭がすぐにやって来る。その言葉は皆の表情を暗くするのには十分の威力を持っていた非戦闘員組には不安が募り、戦闘員には緊張が背筋を通じて体全体に伝わっていく。…………体が、固まる。 [*前へ][次へ#] |