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雲珠桜は夏に彩る
衝撃事実、教えます14







「へえ…………やっぱり騎士(ナイト)なんだね、雲雀クン。僕がユカチャン狙ってるの、分かっちゃった?」


「ユカは渡さない。その前に、君を咬み殺す」


「あはは、怖いな」





雲雀がユカを放り投げ、基地の入り口が閉じられた後。状況は思った以上に芳しくなかった。雲雀だけじゃない。基地の外にいる皆は、なかなかうまくいかない状況に唇を噛んだ。
全く。一体何をすれば、火柱の中でも平気でいられるのか。
ここにいる全員がそう思っていた。白蘭は今でも笑っている。…………しかも火柱の勢いはさっきの何倍にも増したにも関わらず、だ。





「ダメダメ、骸クン。こんなんじゃ僕を倒せないよ」


「!…………雲雀恭弥」


「…………?」





骸は額に一滴の冷や汗が流れるのに対し、白蘭はまだまだ余裕とでも言うように笑みを浮かべる。骸は今の自分の限界を察した様に、口を小さく開いた。





「以前…………あなたで言う十年前、僕は君に言いましたよね。家出したユカが君の所に戻ってきた、あの日です」


「…………それが何」


「よもやそれを忘れた訳じゃないでしょう。僕ですら、それを覚えているのだから。………それを心に刻んでおくことです」


「…………」


『“          ”』





あの日の記憶が雲雀の中に流れる。
確か彼はそんなことを言っていた。自分はそれに苛立ちを感じたが、それはまるで的を射ていたようで、何も言えなかったのを覚えている…………。





「沢田綱吉」


「!」


「いいですか?…………絶対に大空のアルコバレーノユニを、白蘭に渡してはいけない」


「!」


「あなたがどうなろうと知ったことではありません。…………ユニだけは体を張ってでも守りなさい」


「ユカの方は…………僕が何も言わずとも、この騎士(ナイト)が守るでしょうからね」


「当たり前だよ」


「クフフ…………」





ツナが訳の分からないと言うように唖然とする。

…………一体これは何なんだ?

骸は皮肉を雲雀にいい放つ。すると思った通りに雲雀はムッと口の端を結んで、骸に言い返している。まさかこんな場面でこんなやりとりが見られるとは。いや。その前に、この状況でそんな事をしていてもいいのか?
だが骸はそんなこと、全く気にする様子はなかった。
…………やはりユカのことに関する雲雀は愚かで面白い。
骸は思わず口角を少しあげた。





「骸クン…………そろそろ黙って」


「グッ…………!」


「骸!」





次の瞬間。白蘭の腕が骸の胴体を貫く。油断したつもりはないが、そこは流石白蘭と言ったところだろう。骸の顔にはさっきとは違い、ひきつった笑みを浮かべた。
貫かれた所から、自分の体が霧になっていく。今の自分の状態だと、致命的な外傷を負うことは無くても、長い間の足止めは困難だ。そう骸は判断した。




「…………さあ、早く転送システムに炎を」




でなければ、自分がしゃばってまで身を張った意味が無くなる。流石にツナもそこら辺は理解できるらしい。皆に炎を灯すよう、呼び掛けた。
各々からは純度が増した炎が灯され、転送システムはその炎を奪い取っていく。すると転送システムは来たときと同様、白い光に囲まれて消えていった。あっという間だった。骸はそれを、目を細めて見守る。見れば白蘭も同じように、転送システムが消えていった空を見ていた。





「…………うまく逃がしたつもりだろうけど意味ないな、骸クン。こんなことしたって綱吉クン達の寿命は、ほんのちょっと伸びただけだよ」


「クフフ。別に僕は、ボンゴレファミリーを助けたかったわけじゃありませんよ。大空のアルコバレーノとユカが今、あなたの手に渡らなければ、それで充分です」


「分かっているような口ぶりだね」


「クフフ…………」





そう、今さえどうにかなれば。
骸は白蘭の攻撃に多少顔を歪めながらも、たった今いなくなったユカのことを考えていた。







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