雲珠桜は夏に彩る
衝撃事実、教えます09
「!ボス」
「!?…………白蘭!!」
「何て執念だぁ…………」
早く早く、と焦っていると、向こうから足から炎を噴射し、空を飛んでこちらに向かってくる白蘭が目に入った。その目は確かに私とユニの方を向いており、薄く笑みを浮かべている。完全にターゲットロックオン。ユニはその目に怯え、肩をびくんと鳴らした。
…………勿論、私とも目が合う。蛇に睨まれた蛙ってまさにこの事だと、体験したくもないようなことを実感してしまった。
「お前達は先に行け。今度は俺が時間を稼ぐ」
「!でもディーノさんだけ取り残されちゃうんじゃ!!」
「誰かがやんねーとな…………真六弔花もすぐに来るぜ!」
「ディーノさん…………」
「分かんだろ?ツナ。今最優先するべきなのはあの二人の安全だ。…………行け!」
「その必要はありませんよ」
「!?」
何処からだろう…………。低い声が、私の頭の中に響いた。この中の誰でもない男性の声。
「え…………」
私はその声を聞いて、声の持ち主を探そうと首をぐるりと回した。が、誰も聞いていなかったのか、特に誰も変わった様子を見せない。私の聞き間違いか。一瞬そう思ったときにクロームと目が合う。どうやらクロームは感じたらしい。
勿論白蘭は、その間にそんな声は届いていなかったのように、変わらず接近してきた。
「誰が相手だろうと、僕を止めることはできないよ!」
「クフフ…………それはどうでしょうねぇ」
「…………!」
まただ。また聞こえる。
「この僕に限って」
「!!」
「骸様…………」
「骸…………様?」
突如、クロームのもつ槍みたいな武器から霧が発生する。それは自然にできるようなものではない。霧はまるで意思をもっているかのように形を成し、やがて人間の姿を形成してゆく。完全に霧が消えていったときにはもう、一人の男性がそこにいた。
私は、クロームが呼んだ名前と思われる言葉をたどたどしく復唱した。敬った敬称と聞きなれない名前を不思議に思い言葉に出してみたのだが、私がその名を出した途端、雲雀くんの雰囲気が変わった。よい意味ではない。それを感じとることができた私は、小さい声で「雲雀くん?」と呼び掛けた。
………思った以上に彼は渋い顔をしていた。
「む、骸ーっ!?」
「骸様の…………有幻覚…………」
「あれが!?」
「?」
ユウゲンカク、とはなんなのだろう。想像もつかない。…………だが、それを理解する時間は無かった。
白蘭がすぐそこまで来ていた。
ガキィィ!!
骸とか言う人と白蘭の、二人の拳を交える音がやけに大きく聞こえた。
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