雲珠桜は夏に彩る
白い悪魔の誘引06
ドクンッ…………ドクンッ…………。
心臓がやけに鳴り響く。ユカの額からは、嫌な冷たい汗が浮き出てきた。
「(何…………これ)」
この感じ、何か自分は知っている。そんな感じがしてならない。
ディーノは急いで自分のハンカチを引きちぎると、それをユカの手の患部に押し当てて、血止めを行った。痛みがずきずきと指を伝わって痛む。
「あ…………すいません」
「気にすんな。…………ったく、だから触るなって言ったろ」
「一体どう言うこと…………?ユカちゃんがボンゴレリングを触っただけで怪我するなんて」
「…………」
ツナは今の一瞬の出来事に首をかしげる。雲雀くんはその言葉を沈黙で返した。
…………きっとこのことを知っているのは、この場でただ一人。
「なーんだ、ユカチャン前に触ったことあったんだ。…………それで?わかったでしょ?」
「何が…………」
「ユカチャンがこの世界の住人じゃ無いってこと」
「!?」
ユカはその言葉に、なんと答えればいいのか分からなかった。
「な…………何言って。じゃあ私は何?人間じゃないとか言わないでよ」
「ユカチャンは人間だよ、れっきとしたね。そうじゃなかったら、それはそれで面白いけど…………そうだな、言うなれば異世界人、とか?」
「からかわないで!」
「からかってなんか無いよ」
白蘭はこんなときに限って真剣な目を私に向ける。冗談で言っているわけではないと言うことが、その目と雰囲気から読み取れてしまった。ユカは唇を噛み締める。
白蘭が笑うなら流せたのに。なんでこんなときだけ。唯一の救いを求めるように隣の雲雀くんを見る、ディーノさんを見る、ツナを見る。…………皆はその事を是と認めるように、うつ向いていた。
訳が分からない、全く。
「全部本当だよ。だからこそユカチャンは、そのリングに触っただけで怪我を負うんだ」
「…………」
「ユカチャンは本来、こちら側にはいなかった存在。対してボンゴレリングはこちらの世界にしか存在しない。その二つが交われば、当然拒否反応も起こるだろうし、時空も歪んでいく」
「そん、な」
「思い当たる節だって、一つや二つぐらいあるだろう?それが事実だよ」
だから君はこの世界にいちゃいけない。白蘭は微笑みながら、私にそう言った。
もしそれが…………私が異世界人とやらが本当ならば、一体私は何なんだ。どうしてここにいるんだ。頭の中には疑問で一杯になり、その疑問が頭を混乱に陥らせた。そしてその混乱が、余計なことまで考えさせた。
ならば…………もしかして。
「もしかして…………皆が友達って言うのも、嘘だった…………?」
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