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雲珠桜は夏に彩る
白い悪魔の誘引03







最初に一目この人を見たとき。その時は雲雀くん側と白い人側。どっちに行くべきかとか、どっちが敵とか、全くわからなかった。だが今なら分かる。この白い人……白蘭は、親切心で私に言っている訳じゃない。目が笑っていない。何故か、赤毛の人よりも不安を煽られた。
…………白蘭の鋭い視線が私を刺す。





「…………流石にこれについていくほどバカじゃないか。ユカチャンは」


「!?」





その視線に背中に悪寒が駆け抜ける。私が体を少し震わすと、あっという間に白蘭の表情が柔らかくなった。感じのいい笑顔がすぐに表情に浮かぶ。…………完全に猫を被った。





「あーあ…………ホラ。ザクロが乱暴するから、ユカチャンに嫌われちゃったじゃないか」


「う…………そらぁしょうがねえぜ、白蘭様。俺だってチェルベッロの邪魔さえ入らなきゃ…………」


「ハハン、ザクロ。言い訳はみっともないですよ」


「キャハハ!ザクロのすっとこどーい!」


「うっせえぞ、ペチャパイ!」


「っ、白蘭サン!チョイスの再戦を!」





正一が痺れを切らし、真六弔花の会話に割って入った。





「だからー、そんなの約束してないって。無い話を受けることはできないよ」


「!?そんな…………白蘭サンはチョイスだけには」


「残念だったね。ミルフィオーレのボスとして正式にお断り♪だからこの勝負はこれで終わりだよ」


「…………くっ」


「そんな…………」





正一は、言い返すことも上手い言葉も見つけることができずに下唇を噛む。ボスとして正式に断られればこちらが声を上げることはもうできない。皆の表情が絶望色に染まっていった。…………万事休すか。

ユカは思わず辺りを見回した。これで終わるなんてと、ツナや正一を見ていて思った。状況がいまだによく掴めていないユカでも、この戦いが大事なことも、正一のこの戦いにかけている想いが強いことも、ツナ達がどんなに大変な思いをして必死に戦っていたということも肌で感じている。
…………なのに。自分がいまだによく飲み込めてないことが以上に腹立つ。
いつの間にか、この人達に感情移入してしまっている。
何か私にできることはないのか。
私が力になれることは。





「…………」





ああ、もどかしい。どうして私には記憶がない。どうして、どうしてこんなときに皆のことを忘れてしまった。
ユカは知らぬ間に自分の拳を強く握っていた。自分の爪が掌に食い込み、痕がくっきりと残った。







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