雲珠桜は夏に彩る
恐怖と温もりと05
「バーロー」
「!?…………っが」
ザクロの膝がディーノの腹に一発入る。そのままディーノは、後ろのビルまで吹っ飛ばされた。腹に一発入る直前、何かザクロがディーノに話し掛けていた気がするが、ここからでは聞こえない。
…………人が吹っ飛ばされるって。
「!?」
「次はお前だ」
ディーノが建物から出てこないのを確認したザクロは靴に炎を灯し、空を駆けてこちらに来た。私はそれだけで驚愕したのに、前にいる雲雀くんが驚く様子が見られない。
「ワオ。咬み殺してあげるよ」
「出来るか?」
「!」
ザクロの打撃が私の目の前で雲雀くんに当たる。さっきは遠目で見たからよく分からなかったが、間近で見ると威力は半端じゃない。衝撃が空気を伝って私のところまで届いた気がした。
「っ」
「バーロー」
「ユカ、下がってて」
「…………」
雲雀くんが顔をしかめていう。今も頑張って持ちこたえている状態なのに、私のことを気遣う。…………でも。
「う…………動かな…………」
「!」
私には刺激が強すぎる。目の前の戦いは、私の足を固めるのには十分なものだった。
動かない。…………何で?
それでも私は足手まといになりたくない。巻き添えを喰らいたくない。だから、必死に足を引きずるように動かした。
怖い。怖い。一体今、私の目の前で何が起こっているの。ここは本当に日本?
「…………もう、いや」
誰でもいいから助けてほしい。こんなことなら、どうでもいいような毎日でもなんでもいい。だって、命の危険を感じることなんて滅多にないんだ。
だから…………、だから私をここから。
「…………助けて、あげようか」
「!?」
「僕が助けてあげるよ、ユカチャン」
「何…………」
どこからか声が聞こえた。次の瞬間。
「っ、ユカ!」
「…………っあ」
「捕まえたぜ、バーロー」
ユカの体が、空に浮いた。
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