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雲珠桜は夏に彩る
一宿一飯の恩義04







…………話した、γに。漫画の事で言える範囲は全部。

沢田綱吉が漫画の主人公であると言うこと。
その漫画は沢田綱吉がマフィアのボスとなるため、日々家庭教師ヒットマンに鍛えられ、成長していく話と言うこと。
この白蘭の事は漫画としては未来編として描かれていたと言うこと。
皆を知ったのはこの未来編でと言うこと。
話せば話すほど時間は長くなり、内容が濃くなっていった。…………こんな話をされたγ達は一体何を思っているのか。この期に及んでこの話を信じてもらえないと言うことはないと願うが、何しろ内容が内容である。γ達の心中は私ごときでは図りきれない。
しかし一通り経緯が終わると、私が思っていたような反応を見せることはなく、γは今の話を吹き飛ばすように声をあげて笑った。





「ハハハ!…………そうか、そうなのか」


「γさん?」


「通りで話ができすぎていると思ったぜ。なるほど、あのガキが主人公ねぇ…………」


「?」


「そりゃガキだけでメローネ基地をあんな風に、まして無事に帰れるわけだ」





納得だ。γはそう言ってお腹を抱えた。
きっと、メローネ基地での事を思い出しているんだろうとは思うが、メローネ基地での事でγ達がツナ達といい思い出があるはずもない。私は複雑な面持ちでγを見ていた。





「それで?まさかそれで終わりじゃねえよな。肝心な事が聞けてねえ」


「?」


「姫はどうなっていく。無事なのか」


「それは…………」





γの目の奥が光る。私は胸の内を見透かされたようにギクリと肩を揺らし、その事にたじろいだ。




「…………すいません、分かんないです」




口は勝手に嘘を吐いていた。
やはりあんな未来、本人に言えるわけがない。そんな度胸を私は持ち合わせていない。





「で、でも。γさんはまたユニちゃんにちゃんと会えます!それは間違いないです!」


「…………本当か、それは」


「はい」


「姫は…………姫は無事と言うことでいいんだな?そう思ってていいんだな?」


「…………はい」


「そうか…………」




γは私の返事を聞くと、大きく息を吐いた。




「Poi I stand fino a, alcuni(じゃあそれまでの我慢、ってわけか)」


「…………」





フッと、少し笑みを漏らした。誰がとは言わない。私がγだけでなく周りの皆を見渡すと、皆同じように微笑んでいたからだ。たったそれだけで、ユニちゃんがこの人たちにどれだけ大切に思われていたのかがうかがえた。私の頭の中には自然とユニちゃんとみんながどこかで微笑んだ景色が頭に浮かぶ。




「ユニちゃん、か」




どうしてもそう呟いてしまう。そうすると頭に浮かんでくるのはあの屈託ない笑顔と全ての顛末。
あんな最後で終わらなければいいのに。
漫画ならハッピーエンドで終わってしまえば良いのに。
どうしてもそう願わずにはいられない。
…………ここの人たちのあんな顔を見てしまったら。





「?どうかしたのか」


「いえ…………ただ、一度ユニちゃんに会いたいなと思いまして」


「…………そうか。そんときは姫とよろしくやってくれ。姫には年頃の女との付き合いが少ないからな」


「おじさんばっかりですもんね」


「うるせえ。せめてオジさまにしておけ」


「あはは!じゃあユニちゃんとたくさん話さないと、ユニちゃんにおじさん臭さが移っちゃう!」


「だから…………「オジさま?結局は同じですって」…………」





そう言ってやると、γは眉をひくつかせて黙り込んだ。年齢はやはり気になっているのだろうか?おじさんと呼ばれる世代の人が皆こんなおじさんだったら世の中、嘆く人は少ないだろうに。






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