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雲珠桜は夏に彩る
一宿一飯の恩義01








「おい、小娘」


「ユカです」


「お前に二三、聞きたいことがある」


「…………何ですか?あ、食事口に合いませんでした?」


「いや、そうじゃねえ」


「?」





フランの出来事があった数時間後。夕食の時間となった私は、この人数に対応できる量の食事を一気に作り、疲れ果てていた。しかもこの男ども、戦闘職種のせいか胃袋の需要が物凄い。慣れない掃除と言うことをしたせいで腹が減ったと言ってはおかわりの嵐。嫌みのつもりで山ほど作ったパスタは、あっという間に消えていった。
γはパスタの争奪戦に参加せず、その横で自分に必要なだけ(それでも量は多い)取り分けると静かに食べていたが…………。





「お前、あのフランとか言う術師とは会ったことあったのか?」


「?ないですけど」


「ふーん…………じゃ、お前夢でボンゴレ初代に会ったって言ったよな」


「はい」





何だろう、この質問は。ユカは訝りながらγの方を見た。何故か問い詰められているような感覚に陥る。その証拠にγの顔は、真剣そのものだった。





「それがどうかしたんですか?」


「…………いや、ずっと不思議に思っていることがあってな」


「?」


「お前、何で初代の事、分かったんだ?」


「へ?」


「いや。よく顔見ただけでそいつがボンゴレ初代と分かったなと、ふと思ったんだ」





ぐいっとグラスに入ったワインを煽る。





「え?それはだって…………」


「あ、そういやオイラもユカに聞きたいことがあったんだっけ」


「お前もか」


「野猿も?」


「そう、それだ!」


「「?」」





野猿はビシッと私に対して指を指す。野猿は得意気に私を指しているけど、私にはさっぱりだ。特に大したこともいってないし、野猿の言うことに検討もつかない。それはγも同じようで、いつもとはちがう表情でグラスを片手に野猿を見ていた。
…………一体野猿は何を言い出すのだろう?





「どうかした?」


「オイラ考えたら一度もユカに名乗ってないんだ。…………最初ユカはオイラの名前呼んだよな?名前知ってたのか?」


「え」


「そりゃ…………また不思議だな」





γが口角を上げた。その笑みは私にとって、きっとよろしいものではないと、心の奥で予感した。






「あー、お前が何考えてんのかよくわかんねえけど…………でも俺も一応ミルフィオーレなんだよな。良く見ればお前その格好、趣味のわりい服といい、髪の色と言い、例の女だろ?だったら大人しく……」


「あんたも白蘭は嫌いなんでしょ!?だったら匿って!」


「はあ?お前言ってることが滅茶苦茶……」


「お願い!」


「どっちにしろお前捕まる…………」


「野猿っ!!」







思い出した。確かに私は、野猿の名を教えられてもないのにその場の勢いに任せて叫んだ。状況が状況だったのだ。それに、その時は私もその失態に気づいていなかったし気付かれてもいなかった。
…………でも。





「お前、まだ何か隠しているな」


「え…………?」


「惚けるな。何でお前は野猿の名を知っていた。何で初代を知っていた。…………何かあるんだろ?」


「だ、だから異世界から…………」


「説明になってねえ」

ガタンっ。
γは飲み干されて空になったグラスを、音を立てて側のテーブルに置いた。






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あきゅろす。
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